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「からかい上手の杏ちゃん」

 渚ちゃんが電話をかけてきたのは夜遅く、0時を過ぎてからのことだった。

 いつもだったら22時には寝てる渚ちゃんにしては珍しい時間に、しかも「実は折り入ってご相談したいことが……」と、のっけから深刻なトーンだったので、これはいよいよご両親にバレたのか、俺は親父さんに思い切りぶん投げられる覚悟をしなければダメなのか。明日から受け身の訓練しなきゃかな。などと頭の中でぐるぐる考えていると……。


「いえ、両親ではなく、バレたのは妹にです」


「妹っていうと、例のあんずちゃん?」


「はい」


 渚ちゃんの3つ下の妹の杏ちゃんは、現在小学6年生。

 渚ちゃんとは違って明るく社交的なタイプとは聞いていたが、そうか、何かの拍子にバレちゃったのか。


「まあいいんじゃない? うちだってちひろにはバレてるわけだし。親に告げ口するとかされない限りは、そんなに深刻な事態にはならないような……」


「先輩は甘いです」


 俺の楽観視を、しかし渚ちゃんはバッサリとぶった切った。


「あのコをその辺の普通の小学生と一緒に考えてはいけません。わたしたちのおつき合いをのんびり構えて見ているなんてこと、あり得ません」


 あり得ません、ときたか。


「ええと、具体的にはどういった状況が想定されるのかな?」


「いじり倒されます」


「……ん?」


「あのコの気が済むまで、とことんいじり倒されます」


「……(。´・ω・)ん?」


 思わずAAみたいな顔になる俺だ。


「あのコはとにかくわたしをいじり倒すのが好きなんです。人の隙や落ち度を見つけてはツッコみ、からかい、何度も何度も牛が反芻はんすうするが如く、楽しみ尽くします」


 渚ちゃんはゾッとしたような声音で言うが、それってつまり、杏ちゃんが渚ちゃんを好きなだけでは……。

 シスコンが高じて「からかい上手の杏ちゃん」みたいになっているだけでは……。 


「何が楽しいのかはさっぱりわかりませんが、あのコはそういうコなのです」


 渚ちゃんはハアと重いため息をついた。


 聞けば、杏ちゃんは今度のプールにもついて来るらしい。

 いつもだったら秒で断っている渚ちゃんだが、今回に関しては弱みを握られているので断りきれなかったのだとか。


「あのコの矛先は、きっと先輩にも向かうでしょう。わたしとの関係を、骨にしゃぶりつく餓狼の如く味わおうとするに違いありません。どうか、くれぐれもお気をつけください」


「う、うん……わかった」


「もしあのコが粗相そそうを働いたなら、わたしがその場で制裁を加えますので、その時はどうか……」


 制裁て。

 叱るとか怒るとかですらないのが超怖いんですが。


「んー……なんか真剣な声で言ってるけど、たぶんそんなことにはならないと思うよ? ただの予想だけど、大丈夫だと思う。今までの話を聞いた限りでは、なんやかやでお姉ちゃん大好きな妹さんみたいに聞こえるし」


 渚ちゃんのリアクション見るの好き、という意味なら俺だってそうだしな。

 渚ちゃん同好の士として、けっこう上手くやれる気がする。

 

「ともかく、杏ちゃんに会えるのを楽しみにしてるよ」

 

 渚ちゃんを安心させようと言葉を重ねながら、俺はまだ見ぬ杏ちゃんのことを考えていた。

 さてさて、いったいどんな女の子なのか……。 

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