「好き」
その日から、ルーは俺にべったりになった。
登校から下校まで、とにかくやたらと話しかけて来る。
話す内容は中二病臭のするラノベやアニメ、ゲームやオカルトなど。
それに関しちゃ俺も嫌いじゃないというか、けっこう趣味がかぶっている部分もあるので楽しかった。
「我が友、聞くがよい。我が先日得た託宣によるならば、学校の裏手にあるケヤキの下には戦時中の陸軍中野学校の秘密研究所への入口があって……」
今日も今日とて満面の笑顔で語るルー。
たぶん託宣ってのはインターネットのことなんだろうな。
んで、情報ソースは怪しげな個人サイトかyoutubeと。
見た目は完璧美少女、中身は中二病キャラ。
ギャップがすごすぎるが、友達として接する分にはなかなか楽しい。
「ねえ、見て。あの人、3組の噂の……」
「ああ、中二病の人ね。すんごい見た目してるよね」
「話す内容も怖いんだよ。血とか骨とか、変なアニメの話とかもするし」
「「「やだあー」」」
どこぞのクラスの女子生徒3人組が、すれ違いざま、聞こえよがしな噂話をする。
「わ、我は……」
すると、さっきまでご機嫌だったルーの顔が、一気に曇った。
涙目になって、しょんぼり肩を落とすと。
「……すまない、グイン。我と友にいると、皆に変な目で見られるだろうから……」
俺まで変な目で見られないようにしようというのだろう、足早に遠ざかろうとする。
「待て待て、待ってろ、ルー」
ルーの肩を引いてその場に留まるように言うと、俺はサッと踵を返した。
「わ、何こいつ急に走って来て?」
「こいつってあれじゃない? あの3組の変人担当の……」
「ちょ、何する気よいきなり……」
「「「きゃあああああーっ!!!?」」」
3人組の女子生徒たちのスカートを次々にめくってルーのもとに帰還。
顔に掌を当てると、豪快に哄笑した。
「くっくっく、くはーっはっはっは! 聖王の支配下にある巫女どもを穢してやったわ!(ルー、おまえの仇はとってやったぞ!)」
「……グインっ」
ルーは胸に手を当てると、ぱああっと光り輝くような笑顔を浮かべた。
「グイン、ありがとう……っ。我は、我は嬉しいっ。我は今までずっと孤独だったから……」
聞けば、ルーは今までどの学校にいってもバカにされ、ハブられて来たらしい。
中には陰湿ないじめに発展するケースもあって、上履きを隠されたり机に落書きされたりは日常茶飯事だった時代もあったのだとか。
「グインは我のことをわかってくれる。我の危機を救ってくれて、敵をことごとく打倒してくれて……」
頬を染めてわずかに上目遣いになったルーは、どうしたのだろう、俺に半歩近づいた。
「我は……我はグインのことが好……」
キーンコーンカーンコーン。
休み時間終了の鐘の音に、ルーはハッとなった。
耳まで赤くなると、慌てたように手をぱたぱた振って。
「あ、あ、ええとその……なんでもない……です」
今にも消え入りそうな声で、標準語を喋った。
~~~現在~~~
「我が友♡ 我が友♡」
俺とちひろの間に割り込むようにして入って来たルーが、俺の肘を抱え込むようにしてくっついてくる。
5年間の空白を埋めるかのように、ぎゅうぎゅうと。
「出ぇぇぇたよルー」
ちひろはげんなりとした様子で呻き。
「……」
渚ちゃんは静かに氷の魔眼を光らせた。
「なあルー……少し離れてくれないか?」
ふたりの目が怖いので、ルーに離れぬよう頼むが……。
「なぜだ? 市井の雑音に紛れては、我が勲が聞こえぬではないか?(どうして? あまり離れていては居酒屋の雑音に紛れてしまい、わたしの話が聞こえないじゃないですか?)」
俺とひさしぶりに会えてご機嫌なルーは、まったく気にしないといった様子。
「「……」」
吉田と安井も刺すような目をこちらをにらんでおり、なんとも居心地が悪い。
うう……これはあの地獄の日々を思い出すなあ……。
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