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「めでためでたの仲直り?」

 さて、テストの結果発表日。

 満面に笑みを浮かべたちひろが、図書室に駆けこんで来るなりテーブルの上に全教科の答案用紙を広げた。


「さあー、どうよ兄貴! 見て見て! すごいっしょ!」


 腕組みして胸を反らし、完璧極まるドヤ顔を披露するちひろ。


「おおー……おおー……こ、これは……?」


 全教科赤点回避。どころか平均点にして60点に迫る勢い。

 中には70点を超えている教科もあったりする。


「すごいな! やったなちひろ!」


「にひひひひ、ありがとーっ」


 ちひろは男の子みたいに笑うと……。


「あんたもありがとうね。その……一応礼は言っとくわ」


 遅れて図書室に入って来た渚ちゃんに向き直ると、意外や素直に礼を言った。


「別に、たいしたことはありません。けっきょく最後に大事なのは本人の頑張りですし、ちひろさんはよくやりました」


 いつも通りの素っ気ない口調だったが、渚ちゃんは渚ちゃんでしっかりちひろのことを認めているようだ。


 実際、ちひろはよくやっていた。

 普段のだらしなさや集中力のなさがウソのように机に向かい、渚ちゃんに教わるという屈辱にもよく耐えた。

 お小遣い復活というレベルの低い目的を差っ引いても、十分褒められる価値のある行動だった。

 

「か、かと言って兄貴との関係を認めたわけじゃないからね!? それとこれとは別だから!」


「……ダメですか」


「う……いやその、まったくダメとまでは言わないけど……っ」


「……わたしたちは別れなければなりませんか」


「いや……だから、そこまでは言わないけど……っ」 

 

 今までバキバキにやり合っていたのがウソみたいな、わずかに物悲しげなトーンで言う渚ちゃんに、ちひろはタジタジになっている。


「だからそのあまりベタベタしすぎない程度なら許してやらなくもないかなーというか、もともとあんたたちって1メートル以内に入れないんだからそんな心配自体はないんだけどでもそのっ、なんかそのそういう感じでっ」


 両手をわちゃわちゃ動かし、わずかに頬を赤らめながら早口で言うちひろ。


「ああーもう知らないっ! どうでもいいから勝手にすればっ!?」


 結論を投げっぱなしにすると、ちひろはドタバタと図書室を後にした。


「んー、今のは、ちひろ的にはオッケーってことなのかな?」


「ええ、おそらくは」


 淡々とした口調の渚ちゃんだが、内心ではけっこう嬉しかったらしく、その場でラインを送って来た。

 内容はスタンプ。カピ腹っさんがピースサインをしている姿だった。








 ~~~現在~~~




「まさに完全勝利でしたね」


 誇らしげにピースサインをする渚ちゃん。


「あの件をきっかけに完璧な上下関係が出来上がりましたし。我ながら素晴らしい結果だったと思います」


「上下とかないし、ただあんたの存在を認めたってだけよ。兄貴にたかる蝿の一匹としてだけどね」

 

 戦いの記憶を辿たどるうちに、気持ちが落ち着いて来たのだろう。

 ふたりの会話からとげとげしたものが無くなり、どこか和んだような雰囲気が漂って来た。


 もちろん普通に聞くとただの罵り合いなんだけど、今のふたりにそんな深刻な感じはない。

 むしろ気の置けないやり取りを楽しんでいるような風情がある。


 ああ、やっぱり仲良くなったんだなあと俺は思った。

 こうしてひさしぶりに会っても昔と変わらないやり取りが出来る。同窓会っていいな、とも。


「しかしさ、そもそもの問題としてどうしてちひろはあんなに嚙み付いて来たの?」


「「え?」」


 俺の素朴な疑問に、ふたりが目を丸くする。


「え、だってそうじゃん。俺が誰とつき合おうがちひろには関係ないわけで、わざわざ別れさせる必要なくない?」


「本当にまだ気づいてらっしゃらないんですね。先輩……」


 渚ちゃんは沈痛な面持ちになり。


「……ま、それが兄貴なんだとは思うけどね」


 ちひろはやれやれとばかりにため息をついた。


 え、なんで?

 どうゆーことなの?

 ふたりには何が見えてて、俺には何が見えてないの? 

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