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「わりかし順調」

 時々言い合いになったりにらみ合いになったりするふたりだが、勉強自体ははかどっていた。


 なんといっても渚ちゃんの教え方が上手いのだ。

 ちひろがわからない部分を的確に見出し、重点的に教え込む。

 それまでわからなかったことがわかるようになることでちひろに自信を与え、それはすなわち学力全体の底上げや学習意欲の向上にもつながって……。


「……悔しいけど、あんたってホントに教えるの上手いわよね」


「ちひろさんも、思っていたよりは出来る方ですね。今までは変に考えすぎていたんだと思います。この調子なら、全教科赤点脱出はもちろん、平均点50点超えも夢ではありませんね」


「え、あたしってもしかして天才……?」


「いえ、そこまでは言ってませんが」


 絶妙に縮まっていくふたりの距離を、俺は兄として恋人して、実にほっこりした気分で眺めていた。

 そうだよそう、女の子同士ってのはこうでなくちゃ。

 バチバチケンカしたり罵倒したりとかじゃなく、背後に点描てんびょう飛ばしながらキャッキャウフフしてくれなくちゃ。


「てか兄貴、その目キモいからやめて」


「先輩はもう少し自分を客観的に見る癖をつけた方がいいと思います。正直今は犯罪者スレスレですよ?」


 実際の話、罵倒のタイミングといいキレといい、ふたりは息の合ったコンビになりつつあると思う。

 

 







 ~~~現在~~~




「兄貴を罵るのは楽しいんだよね。なんか喋ってるうちに興奮してくるというか、気持ちよくなって脳汁が出るというか……」


 突如、危ない性癖を披露するちひろ。

 いやホント、マジで何言ってんの?


「わかる気はしますね。というかこれに関しては先輩のほうがお詳しいんじゃないですか? 当事者なわけですし。ほら、わたしがキツいことを言った後、気持ちよさそうな顔する時があるじゃないですか。あれってたぶん、先輩の快楽中枢が刺激されている時ですよね?」


 渚ちゃんまで!?


 驚く俺をよそに、ふたりは俺がいかに高度の変態かを語り合う。

 おかしい……どうしてこうなった?

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