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「図書室にて」

「なるほど……これはひどいですね」


 放課後の図書室。

 テーブルの上にズラリ並べられた赤点の答案用紙を眺め、渚ちゃんはゴクリと唾を呑んだ。


「よくここまでひどい点数が取れるものですね。鉛筆を転がして適当に答えを選んでももう少しマシな点数が取れるのでは?」


「うっさいわね! いいからとっとと教えなさいよ!」


「……それが人に教えを乞う態度ですか?」


「ぐっ……っ!?」


 氷の魔眼をギラリ光らせる渚ちゃんと、屈辱に顔を赤くするちひろ。

 にらみ合いは数十秒に渡って続き、最終的にはちひろが折れた。


「うう……お願い。勉強教えてよ……ください……」


「…………ふっ」


「あああああああー! こいつ今、あたしのこと鼻で笑った! あああああああーっ!」


 立ち上がって大騒ぎするちひろと、愉悦ゆえつめいた笑みを口元に浮かべる渚ちゃん。


 おお、こういう構図は珍しいなあ。 

 ちひろが人に頭を下げるのもだけど、渚ちゃんが他人に対してこんな態度をとるのも見たことない。


「さ、そうと決まれば始めますよ。時間がもったいないので、席についてください」


「くっ、このっ……この女ぁ~……っ」


 ギリギリと歯を食い縛りながらも、おとなしく席につくちひろ。


「さ、先輩も。一緒に勉強をするのでしたら始めてください。……どうしたんですか。わたしの顔を眺めるのは勉強じゃないですよ?」


「おっとごめん。渚ちゃんが珍しい表情をするもんだから思わず見とれてたんだ」


「……珍しい?」


 不思議そうに首を傾げる渚ちゃん。


「今のやり取りがさ、なんか親しい友達と接するみたいな感じに見えたんだ。俺といる時にはそういうの見せてくんないから、面白いなあと思って」


「……お気に召さないということですか? こういう表情をしてはいけないと?」


「違うよ、もっと見たいなって思ったんだ。俺の可愛い渚ちゃんの、もっと可愛い表情をさって痛あああああああああいっ!?」


「すいません、手が滑りました」


「ごめん兄貴、手が滑った」


「どう滑ったらメジャーで手の甲を叩くような事態になるの!? んでちひろはなんで、俺の頭にチョップくれてんのっ!?」


「ですので、滑りましたごめんなさい」


「いいじゃん。めんどくさいからさっさと始めようよ」


「くっ……なんでこんな時だけ息ピッタリに……っ!?」  


「先輩、ここは図書室ですので静かにしましょう」


「俺!? 俺が悪いの!?」


「ああもういいから! ともかく始めるわよ! 兄貴も黙って! シャーラップ!」


 ぎゃあぎゃあ騒いでいたら、顔を真っ赤にした図書委員にこってり絞られた。  

 



 




 ~~~現在~~~




「先輩と一緒にいられる時間が増えたので、わたしはとてもウキウキでしたよ。休み時間の合間を縫って会うのも、下校デートも楽しかったですけど、まとまった時間一緒にいられる機会があるのはすごく良かったです」


 本当に楽しそうに当時のことを語る渚ちゃん。

 照れ隠しでメジャー攻撃(なんだこの言葉)をしてきたことは覚えていらっしゃらないんですかね?

 

「結果的に援護射撃になったみたいで、あたしとしては微妙な気持ちだけどね」


 一方、実に嫌そうに顔を歪めるちひろ。

 こいつは絶対チョップのことなんか覚えてないだろうな。


 まあでも、あの件がきっかけでふたりが歩み寄ったのは間違いない。

 痛みの記憶や不満を押し殺しつつ、俺はさらに思い出話を続けた。

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