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コント[喫茶店でのネタ合わせ]

作者: 文学壮女

ゲラゲラコンテスト3への参加作品です。

カランコロンカラン。

(ドアベルが鳴り、男が2人喫茶店に入ってくる。)


A「いやぁ、やっぱりどこもこの音なんやな。カランコロンカラン♪どうも!やってる?なんつってな。」


Bが無言で閉めたドアにAが挟まりそうになる。


A「いやいやいや、危ないって!いきなり挟む?!おかしいやん!」


BはAの言葉には答えず、席を見つめながら無言で立ったままでいる。


A「そうそう俺が窓際で君は通路側にどうぞ…ってここは新幹線か!ボックス席に男2人で横並びっておかしいやろ!!」


Bが軽いため息をついて座席に座り、Aも向かい合って座る。


B「(注文をとりに来た店員の方を向いて)ホットコーヒー1つ」


A「と、俺はチョコレートパフェ!こいつのおごりで♪」


B「お願いします。」


無言に耐え切れずAが話し出す。


A「なぁ、待ち合わせすっぽかしたん、まだ怒ってんの?」


A「(無言のBに向かって両手を合わせて)ほんっまに悪かったって。俺かてちゃんと来たかったんやで。せやけどな、仕方なかってん。」


Bは腕を組んだままAの方を見つめている。


A「なぁ、Bちゃん…。」


話を遮るようにシミで薄汚れた1冊のノートを取り出すB。


A「(少しホッとしたように)Bちゃん…。

よしっ、ほなネタ合わせや!あー、俺にネタ帳はいらんで。お前が書いた台本は全部頭に入ってるんや。」


B「(ノートを見ながら抑え目の声で)Bです。」


A「Aです。2人合わせて」


A&B「Cです!」


A「はい、よろしくお願いします。」


B「AさんAさん。」


A「はいはい。」


B「あのー、僕ね、やりたいことがあるんです。」


A「何ですか?」


B「まぁ、あの、これ、お客さんもね、あちこちから来ていただいてると思うのでもしかしたらご存知ない方もいらっしゃるかなーって感じで。」


A「はいはい。」


B「なんかすみません、こんな場所でローカルっぽいこと言い出しますけど。」


A「そんなに珍しいことなんですか?楽しみです。」


B「はい。あのー、皆さん…」


間を取るB。


B「『流れ星』ってご存知ですか?」


A「は?」


B「あ、やっぱりご存知ない感じで。」


A「いやいやいや、知ってるでしょ。何、今の無駄なもったいぶる感じ。ローカルも何も全国的に有名でしょ!知らん人探す方が大変よ。」


B「えっ?マジですか?僕みたいな都会人ならともかく、Aさんみたいな田舎もんもご存知で?」


A「いや、サラッとディスんなや!気ぃ悪いな。」


B「じゃ、話は早いですね。流れ星に3回願いを唱えたら叶うって言うでしょ?」


A「あー、聞きますね。」


B「でもあれってあっという間に流れちゃうじゃないですか。」


A「うんうん。」


B「だから、練習しておきたいんですよ。」


A「なるほどね。流れが早いですから練習しとくのはよさそうですね。」


B「と、いうわけでよろしくお願いします。」


A「わかりましたー。じゃ、早速いきますよ。(空を指差しながら)あっ!流れ星や!」


B「寿限無(じゅげむ)寿限無五劫の擦り切れ(ごこうのすりきれ)…」


A「待て待て待て!お前、3回言う気ないやろ。

ってか願い事でもないやんけ。」


B「そうですか?声優としての挑戦を…」


A「何言うとんねん。いくで。あっ!流れ星や!」


B「1人で売れたい、1人で売れたい、ひと…。」


A「なんでやねん!俺たち2人でCでしょ!2人で売れるの!」


B「えー、でも1人で売れたらギャラ分けなくていいじゃないですか。」


A「寂しいこと言わんでー!なっ、2人で売れよう。あっ!流れ星や!」


B「1人(ピン)になりたい、1人(ピン)になりたい、1人(ピン)に…(涙声になる)。」


A「Bちゃん?どないしたん?」


B「なんでだよ、なんで…。」


A「(泣くBを静かに見つめながら)…せやな。今日でちょうど1年か。」


A「なんで俺、死んでしもたんやろな(ホットコーヒーだけが置かれたテーブルを見つめる)。」


A「待ち合わせ、すっぽかす気はなかったんやで。でも目の前で子どもに飛び出されたら庇わんわけにいかんやろ。」


B「(涙声のまま)2人で売れたい、2人で売れたい、2人で売れたい…。」


A「(笑いながら)そんなゆっくりじゃ間に合わへんよ。」


A、静かにBを見ている。


B「(顔を上げて)すみません、チョコレートパフェ、追加でお願いします!」


A「おっ、お前も甘いもんの魅力に気づいたか!一緒に食べたかったなぁ。

俺は上から見てるから、お前は地上でスターになりや。

ネタも一生懸命練習したやろ?

俺の声がなくても()から何からバッチリやんか。

流れ星なんかに願わんでもお前なら大丈夫や。」


パフェが届くのを待って、BがAの前にチョコレートパフェを置く。


A「Bちゃん…。」


B「(ネタの終わり風に)…ありがとう、ございました。」


A「(鼻をすすって)こちらこそ、ありがとうな。」



暗転。

少し変わった感じを出したくて考えてみました。

Aの声がなくても成立してる…と思います(弱気)。

面白いことを考えるのって難しいですね。

お笑いに関わる皆さんを改めて尊敬します。


※作中にある『寿限無』の使用について(例えば著作権などの)問題があれば教えていただけるとありがたいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] えっ、と思って思わず読み返してしまう作品でした。 Aです、Bです、二人合わせてCです!の流れに真面目に一瞬「???」となってじわじわ笑えてきました。
[良い点] 衝撃展開に驚きました! 相方さん……どっちもそれぞれの世界で幸せをつかんでほしいな(*`・ω-)ノ ありがとうございました
[良い点] 途中でびっくりしました。完全に想定外でした。 後書きの「少し変わった感じを出したくて」という意図バッチリ伝わってきました。 最後まで拝読した後に読み返すと、ドアのところから、そういうことだ…
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