表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/722

第88話『そして怪物は夜空を見上げる』

※2023/11/15改稿しました。


お待たせしました。

第88話の執筆が完了しました。

投稿予定日ギリギリの投稿で申し訳ございません。

宜しくお願い致します。

 俺達三兄弟に血は繋がっていない。とある孤児園で偶然、同じ空間に住んでいただけだった。


 最初は俺もケンやシュタインの事をその程度にしか思っていなかった。だが、二人は特に俺と何か特別な事があったわけでもないのになぜか俺に懐いていた。


 俺が最年長だったから、というのもあったのかもしれない。それだけで彼らは俺の事を“お兄ちゃん”と呼んでいた。


 なぜか、そのお兄ちゃんという言葉が懐かしくて、愛おしくて、まるではるか昔に兄弟がいたような感覚だった。


 ケンとシュタインに出会ってから3ヶ月くらい経った頃、気づいたら俺はケンとシュタインとまるで本当の家族のように接していた。今までは家族はおろか、孤児園の友達すら居なかったので、なんだか暖かいような、不思議な気持ちになった。


 だが、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。ある日突然孤児園に盗賊が襲って来たのだ。


 その当時は孤児院の誰一人として自衛する術を持っていなかった。大人達も含めてな。


 ただの子供ただの子供でしかなかった俺達はとにかく逃げるしかなかった。


 俺はケンとシュタインと一緒に、俺らしか知らない裏口から逃げる事に成功した。


 他の子供達や、一緒に住んでいた大人達はどうなったかは知らない。仕方がなかったとはいえ見捨ててしまったのだ。しばらくは罪悪感に苛まれる日々が続いた。


 今だって苦しいくらいだ。でも、仕方がなかったんだ。ケンとシュタインを逃がすので精一杯だったんだ……。


 その後、孤児園から完全に脱出し、盗賊から逃げる事に無我夢中だった俺達は街中で偶然、()()()にぶつかってしまった。


 すると、あの方は身体をぶつけられた事など気にも留めず、むしろ俺達に『そんなに慌てて、どうしましたか?』と優しく問いかけた。ケンとシュタインは先ほど盗賊に襲われたのもあって、見知らぬ大人に怯えていたので、俺が代わりにあの方に事情を説明した。


 すると、あの方はこう言った。


 ――――可哀想なあなたたちを救いましょう。



 本当に救ってくれるのか? と半信半疑で聞いていると、あの方は更にこう言った。


 ――――あなたたちは素晴らしい力を持っています。だから、自信を持って、胸を張って、誇り高く生きて下さい。




 そんな事を言われたのは初めてだった。さっきまで怖い思いをしたのもあって、俺達は感極まり、一人残らず号泣してしまった。


 その後は、もちろん生き残るためにあの方についていった。しばらく歩いていると、盗賊団のアジトに着いた。最初は俺達も動揺はしたものの、自分達を襲った盗賊団とは違うようだ。


 そもそも、表向きは盗賊団として名乗っているだけで、実は神の居城(ヴァルハラ)という組織の傘下であり、悪事を働く下衆な集団のフリをしているようだ。


 俺達は、正式に盗賊団の一員として配属される事になった。その後あの方は入団記念として、俺達に強化魔法“怪物”をかけて下さった。すると俺達の力は、以前とは比べ物にならない程に力が湧いた。まるで別人のようだった。これなら孤児園を襲ったクソ盗賊を叩き潰す事ができる。俺達は嬉々としてそう思った。


 それから俺達はあの方の意向のままに、孤児園を襲った盗賊や、それ以外の盗賊を潰したり、正義教団とかいう訳の分からない奴らから聖剣を奪ったり、壊れた歯車(ワールドキャンサー)? を持つ者を探したりと、数々の任務を全うした。


 本当の盗賊のような犯罪行為は一切せず、むしろ善行を積んでいる。俺達も自分が誇らしかった。まるで正義のヒーローになった気分だった。


 このままずっとこんな日々が続けばいいのに……そう思っていた。


 だが、やはり幸せな日々は長く続かないのか、あのプロメテウスとかいう奴によると、あの方は俺達を捨て駒と言った。嘘だ。プロメテウスは嘘をついている。俺はあの方を信じたい……。信じたいのに、なぜか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ……いや違う。違うんだ!


 あいつは、嘘つきだ! きっと、俺達をはめる為に仕組んだ罠だ! そうだ、プロメテウスが嘘をついていないと思わせるような洗脳魔法をかけたんだ! そうに違いない! 


 ――否、事実だ――


 俺が違うと思う度に、プロメテウスの言葉が身体の隅々まで染み渡るように響く。


 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。


 プロメテウスの言うことなんて……。


 ――否、事実だ――


 信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない信じたくない。


 だって……あの方すら、俺達を裏切ったなら……もう、俺達は……誰を信用すればいいんだ……。


 あぁ……もうよく分からない……。俺達は、今後どうやって生きていけば……誰を信じれて生きればいいんだ……。


 もう…………何も考えたくない…………。


 もう嫌だ。


 ……………………………………………………。


 ……………………………………………………。



 ――――きろ。


 ん? 何か聞こえる?


 ――――起きろ。


 誰だ?


『おい、起きろ』


『はっ!』


 男の声で目が覚めた。目の前にはその声の主と、()()()()()()()の2人組が居て、プロメテウスの部下4人が倒れていた。どうやらこの人達がその部下4人を倒したようだ。


 そうだ、思い出した。確か俺とケンはシュタインがいる本拠地へ向かうところを襲撃され、無様に倒れてしまったんだった。


 こいつがここにいるということは、どうやらその間に、こいつの勝利? ということで決着がついたようだ。


 よく周りを見渡してみると、さっきまで燃え盛っていた炎が全て消えていた。


 そういえばプロメテウスの姿も見えない。


『あれ? プロメテウスは?』


『奴なら、追い払った』


『追い払った!? お前が?』


『ああ』


 あんなヤバい奴、どうやって追い払ったんだ? 普通の人間はおろか、怪物ですら、恐れ、ただ逃げるしかできなくなるはずなんだが……。


 そうか、この男があの方が言ってたアクタとかいう奴なんだ。神の居城(ヴァルハラ)守護神(ガーディアン)さえ恐れる程の危険な存在だと聞いている。


 とはいえ、そのアクタはプロメテウスと交戦したことで、さすがに疲弊しているようだ。


 身体の至るところが流血し、更に痛々しい火傷まである。このままでは命の危機のはずだ。しかし、この男なら、この程度では死なない気がする。


 激痛を感じているはずなのに表情もまるで何事も無かったかのように真顔だし、この佇まい、ただものではない。恐れられる訳も理解できる。


 そんな怪物を越えた怪物のアクタは夜空を見つめながら、こう言った。


『だが、奴はまたいずれ現れる。それまでに俺はもっと強くならなければならない……ところで、お前達はこれからどうする?』


『俺は……妹のシュタインを連れ戻す』


『そうか、なら俺と取引をしないか?』


『取引だと?』


第88話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、19日(水)~21日(金)に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ