第87話『捨て駒』
※2023/11/13改稿しました。
お待たせしました。
第87話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
《フラン視点》
――数十分前。
俺達はあの逆賊アクタの仲間である女を襲撃しようとしたら、逆に返り討ちにされてしまった。
その後、上空から誰かが現れ、その誰かが炎の塊を放ち、あの女を焼き尽くそうとしたところまで覚えているが……。
あの女はどこにいった? なんとか逃げたのか、炎に飲まれて消滅したのか分からないが、俺達が倒れている間に、あの女は居なくなっていた。
『うん? 何か聞こえる』
俺は外の音が気になったので、意識朦朧としながも、ビルの屋上のフェンスを掴み、街の様子を見た。すると、炎を纏っている人間と仰向けに倒れている逆賊アクタの姿が目に映った。
どうやらこの世界を脅かす逆賊アクタは、あの炎を纏った人間に、完膚なきまでに叩きのめされたようだ。
ところであの炎を纏っているのは、神の居城の使者様か? あの方と同じだな。ということは、俺達を助けに来てくれたのか。ありがたい。俺達は炎の使者様にお礼を言いに行った。
『何を勘違いしている?』
炎の使者様がそう言うと、一瞬で俺達が居る廃墟マンションの屋上までワープしてきた。
『フランとケンだな。貴様らはただの捨て駒だ』
『は?』
聞き間違いか……? 今、何て言った? 俺達が捨て駒だと……? そんな訳ないだろう! だってあの方と同じく神の居城の使者様なのだろう? あの方は俺達を救って下さった! もしあの方がここに居るなら、すぐに俺達を救って下さるはずだ!
『お前、使者様じゃないな! 誰だ! 正体を現せ!』
俺は偽物野郎に剣を向けて、正体を暴こうとした。
だが炎の使者は反撃する姿勢を見せず、ただ不愉快そうに腕を組み、こう言い放った。
『何を言ってる? 我は正真正銘守護神だ。所詮、貴様ら人間は我々に生かされてるだけの存在なのだ。身の程を知れ! 雑種!』
炎の使者はまるで虫けらを見ているような目で俺達を見ていた。その目には一切の温情が感じられない。
『嘘だ』
『否、事実だ。貴様らの言うあの方は……いや、あの女は、貴様らを捨てたのだ』
嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
『嘘ではない。この際だから言うが、あいつが最初に貴様らを助けたのも、貴様らの妹シュタインが目的だったからだ』
『なん……だと?』
確かにシュタインには、特別な力がある……。
始めから俺達はシュタインの力を利用する為に、俺とケンを取り入ったのか……いや……。
『そもそも俺はお前の言うことなど信用していない! 本当にあの方の仲間かどうかもな!』
『仲間……? 我々は神だぞ? 貴様ら脆弱な雑種の価値観と一緒にするな! 何度でも言おう! 貴様らは捨て駒だ! 確かにあいつはそう言ったのだ! 疑うなら、ここにあいつを来させてもいいんだぞ!』
炎の使者はさっきの俺の発言のどこかが癇に触ったのか、先ほどまでの冷静さを失い激しく憤った。
ここまで言い切ったということは、本当にそうなのか。また裏切られるのか。
もう何を信じればいいんだ……もういいや……もう諦めた。もう、いっそ……。
『兄貴……』
ケンもしっかり話を聞いており、俺と同じく絶望している。
『ケン……』
俺達は裏切られた。捨てられた。最も敬愛するあのお方を……親のように思っていたあのお方を……。
もう終わりだ。シュタインはともかく、あの方がいなければ俺達は生きていけない。
『シュタインを助けてから、一緒に死のう』
ケンはこくりと頷いた。身体の傷もだいぶ癒えてきたので俺達はすぐにシュタインがいる本拠地へと、向かう事にした。
『行こう』
今居る廃墟ビルから飛び降り、ボロボロのコンクリートの上を全力疾走した。
『どこへ行くつもりだ?』
こちらの動きを読んでいたかのように、炎の使者が俺達の前に立ちふさがる。
『どうせ俺達は捨てられたんだ。自由にさせてくれ』
『ならぬ。貴様らの魂胆は見え透いている。シュタインを連れ戻すつもりなのだろう?』
なんてことだ……完全にバレている。まるで心を読まれているようだ。
炎の使者の後ろから鉄の甲冑を着た4人組が現れた。
『来たか』
4人は炎の使者の前で跪き、敬意を表した。間違いなく、この男の部下だろう。
敵が増えるとなると、ますますシュタインを助けに行きづらくなる。
『はっ! 我らが敬愛せし、誇り高き神の居城の守護神、プロメテウス様!』
プロメテウス……それが、この男の名前か……。
『うむ。さて、お前達早速仕事だ。そこにいるフランとケンは裏切り者だ。殺せ』
一切の迷いなくそう命令した。
『はっ!』
4人の部下達は一斉に剣を抜き俺達を囲った。
戦う前から分かる。この4人は強い。剣を抜く動作、構える姿勢、毅然とした態度。様々な要素が彼らを強者と思わせる。
『くそっ……どうすれば……』
俺達だって強さでは引けを取らないが、2対4では流石に分が悪い。一か八か、2人で1人を速攻で倒し、そこから包囲を突破する。それすらプロメテウスにはお見通しかもしれないが、それしか生き延びる方法が思いつかない。
それでもやるしかない。俺はケンに合図を送り、作戦実行しようとした、その時だった。
『プロメテウス!!!』
男の怒鳴るような声が聞こえた。
声のする方へ振り替えると、あの逆賊アクタがプロメテウスに、剣を振り下ろした。
『貴様……!』
プロメテウスは間一髪で避けるも、頬に傷がついてしまった。
『プロメテウス様!』
部下達は、プロメテウスへの突然の奇襲に驚き、俺達から目を離した。
『ケン、今だ!』
俺とケンは目の前の部下の1人を襲撃し、包囲を突破した………………だが。
『ぐはっっっ!』
突然前方から何かに斬られ、赤い血が辺りを飛び散った。
思ったよりも深い傷を負った俺は、力尽きるように地面に倒れ込んだ。
『兄貴! ぐはっ!』
ケンも俺と同じように何かに斬られ、うつ伏せに倒れてしまった。
『……ケン……今……助け……』
俺はケンだけでも……と思い、ケンを助けようとしたが身体が言うことを聞かず、意識を失った。
第87話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、16日~18日に投稿予定ですが、最近、更に体調が悪くなり、執筆に集中できない事が多く、投稿が遅れてしまう可能性があります。申し訳ございません。
もちろん、楽しみにして下さっている皆様の為にも、早く最新話をお届けしたい所存です。
本当に心苦しいですが、何卒宜しくお願い致します。
長々とすいませんでした。
皆様も体調にはお気をつけ下さい。




