第86話『裁定の時』
※2023/11/08改稿しました。
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第86話の執筆が完了しました。
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ここに現れたのは、先ほどアミと戦った自称怪物のフランとケン。今はどういうわけか、二人とも血まみれで倒れている。
『……こいつら……何で、ここに来れたんだ……?』
ここに来るには、エレベーターの1~14と書かれたボタンの内、あらかじめ決められた数字を素早く押さなければならない。
その数字を知っているのはここに住んでいる者のみだ。それを部外者が知っているとすれば、誰かが地下へ行く瞬間をハッキリ記憶していたか、誰かに教わったかのどちらかだろう。
『偶然か……? いや、そんなわけないよね……もしかして、誰かが彼らにここの基地の事を喋った……?』
それこそありえない。アミはみんなを信頼している。敵にパスワードを話してしまうほど口は軽くない。
『アミさん……その人達は恐らくアクタさんが、その2人を助ける為に、ここに避難させたんじゃないかな?』
アクタをよく知るアリスがいち早く状況を察して、答えを出す。
『アクタ団長が……?』
『うん』
『どうして分かるんだい?』
『この近くで、アクタさんの気を感じるからだよ』
『気を感じるって何だ?』
『“壊れた歯車”のみ、使える特性だよ。まあ、使えるようになるにはそれなりに訓練しなきゃだけど』
アリスは説明ついでに自身が壊れた歯車持ちであることをカミングアウトした。本人は特に口を滑らせたとは思わず、堂々としている。
『“壊れた歯車”……壊れた歯車の事か……ってアリスもそうだったの!?』
アミさんは思わず目を見開いてしまう程に驚きはしたものの、知り合いにそれを持っている者がいるので、軽蔑も恐怖もせず、ただアリスの頭を撫でた。
『大変だったね……』
アリスは頬を赤くして、撫でる手を受け入れた。
『あ、あ、ああ、うぅ……』
本来自分が“壊れた歯車”であるとカミングアウトすることはない。“壊れた歯車”は希少種ではあるが、それ以上に忌み嫌われる不名誉な称号である。
そんな称号を持った者の存在を、正義教団や盗賊等に知られてしまえば、世界の果てまで追いかけ回されるだろう。
故に“壊れた歯車”を持つ者は存在を隠して、ひっそりと生きる。これが1番ベストな生き方だ。だがアリスは、それでも自分の正体をアミに明した。それはアリス自身が、誰にも負けない強力な魔法を持っているというのもあるが、やはりそれ以上に、アミを信頼しているのだろう。
『やっぱり、アミさんは優しいな……』
頭を撫でられながらアリスは、嬉しそうにそう呟いていると、さっきから倒れたまま放置されていたフランが目を覚ました。だが、まだ重症なので意識が朦朧としている。またすぐにでも倒れそうだ。
『起きたか、さっきの少年』
『う……あ、あんたは……』
流血しながらも必死に立ち上がりろうとしたフランだったが、立っていられず、よろけてそのまま倒れてしまった。そんなフランを見兼ねたアミさんは、彼は敵だと思いながらもフランの身体を支えた。
『おっと、動かない方がいいよ』
『はぁ……はぁ……あんた、アミって言ったか……はぁ……はぁ……あ、あいつから、伝言がある……』
あいつとは誰の事だろうか? 教えてないはずのアミの名前を口にしたということは、アミを知る誰かが彼らに名前を教えた他ならない。
『おい、無理して喋るな。伝言なら後で――』
アミさんはフランをベッドへ連れていこうとした瞬間、フランは振り絞ったわずかな力で、アミさんの肩を掴んだ。どうしても今、伝言伝えたいようだ。
『はぁ……後じゃ……ダメだ……』
『なんで? こんなに苦しそうじゃないか』
『俺は怪物だと言ったはずだ。怪物の回復力なめるな』
言われてみればフランの血はみるみる内に止まっていき、顔色もよくなっている。怪物並みの回復力というのは事実であることが証明された。
『――分かった。でも無理するなよ。それで、その伝言とは?』
『その前に、何が起きたかを先に話す……実は――』
――――30分前。
上空で火の国を見下ろす炎を纏いし者は、炎の塊を火の国に落とした。すると、とんでもない轟音が響き、炎は、まるで意思を持っているかのように動き出し、火の国全体を包囲し、炎を纏う奇妙な壁となった。
魔王城から全速力で炎の壁の前までやってきたアクタは、驚きつつもすぐに炎の壁を殴り壊し、火の国へ、足を踏み入れた。
『くっ……さすがに熱すぎる……なんだこの熱さは……?』
燃え盛る炎の凄まじい熱気が、容赦なくアクタを襲う。普通の人間がこの熱気に触れれば、ただじゃ済まない。3分もあれば、身体が熱気に耐えきれず、命を落とすだろう。
『アミはどこだ……? 基地に居るなら、いいが……まあ、あいつがいるしな……大丈夫だとは思うが……』
アミの生存を祈りながら、国中を走ると、炎を纏った人間が、アクタを睥睨しながら、降りてきた。
『やはり来たか……神の居城の裏切り者……アクタ!』
『貴様こそ、なぜ下界に降りてきた!』
アクタは激しい憎悪を込めて、炎の巨人を睨みつける。そんなアクタの憎悪など気にも留めない炎人間は、険しい顔をしてこう言った。
『この世界に、裁定の時が来たのだ』
『なん……だと……!?』
――――裁定の時。
それは、即ち……世界の終わりを意味する。
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