第85話『乙女なアリス』
※2023/11/07改稿しました。
お待たせしました。
第85話の執筆が完了しました。
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美少女愛好家のアミが、超絶美少女アリスを抱き締めたり、小動物を愛でるようにほっぺすりすりしたりとやりたい放題だ。
『可愛いな〜!!!』
アリスの方は、どうやら満更でもないようで、むしろこっちから抱きつかれる事を望んでいるようだ。
百合が咲きそうな時間の中、爆発したような轟音が響いた。地響きも思いのほか大きかったので、興奮状態のアミもそちらに関心が向かった。
『うわっ! 何だ!?』
だが、それでも尚アミはアリスから手を離す事はなく、むしろ守るように抱きしめていた。そんなアミを、アリスは自分を守ってくれる王子様のように映り、目をハートに輝かせている。
『大丈夫かい? アリスちゃん』
アミさんの問いかけに対し、アリスの頬はより赤くなり、裏返った声で『は、はい!』と不自然な返事をした。
『そうか、良かった』
このセリフもアリスの耳には『無事で良かったよ、マイプリンセス』という風に聞こえ、まるで少女漫画の世界のように、世界がキラキラしているように見えている。
『それにしても、さっきの音は……?』
『アミさん、かっこいい……どこへでもついていきます』
アリスは恥じらいながら、ボソッと呟いた。
『ん? 何か言ったかい?』
『な、何でもないです』
アリスはアミの顔をまともに直視できず、そっぽを向いてしまった。そんなアリスの態度を見て王子様は、抱きつかれたのがそんなに嫌だったのかなぁ……と勘違いし、少し距離を置いてしまった。
『あ、ごめんよ……いきなり抱きつくなんて、同じ女とはいえ、嫌だったよね』
アミは頭を掻きながら、申し訳なさそうにアリスから手を離し、物理的に一歩距離を置いた。
しかしアリスは勇気を出して、逆に一歩距離を縮めて、こう言った。
『そ、そんなことありません! 私……アミさんの事が……だ、だ、だだだ大好きです!』
思わず愛の告白をしたアリスの顔は、これ以上無いくらいに真っ赤になった。ドクンドクンと心臓までもが平静を失っている。
そんなアリスを見て、アミは優しく微笑んで、
『私も大好きだよ』
アミは再びアリスを抱き締める。先ほどとは違い、暖かく包むように。しかしアミの心はとんでもなくきめぇ感情を昂らせている。
そのままの状態から少し時間が経ち、お互いに落ち着くと真面目な話をした。
アリスによると、さっき時間停止したのはやはりアリスの時間停止魔法が発動したからだった。
時間停止魔法は世界の理を停止させる程に強力すぎる故に、魔力の消費が尋常ではない。まず普通の魔力量を持った人間には魔力不足で発動できず、アリスのように莫大な魔力を持つ者でもせいぜい10分くらいしか効果が発揮されない。
時間停止している間に敵を叩けば良いのでは? とアミは質問したのだが、この時間停止魔法には制限があり、停止している相手に攻撃しても弾かれるようになっている。
この魔法はあくまで時が停止している間に罠をしかけたり、別の場所へ逃げる手段として使う事を意図して作られているようだ。
そして、アリスが止めていた時間は既に動き出しており、さっきの轟音も時間停止が解除され、あの炎の塊が落とされたからだ。
今頃外は世界の終わりのようなとんでもない惨状になっていることだろう。地上からの影響を受けにくいこの地下はともかく、地上はとても人が住める環境ではない。
あの巨大な炎人間、その部下と思われるフランとケンも回復し次第、アミを捜索するだろう。無論追われている本人もそう考えていた。
だが、外の音をよく聞いてみると、武器が交わる音や魔法の発動音が頻繁に聞こえてくる。
どうやら外で誰かが戦っているようだが、一体誰が戦っているのか?
もしかしてアクタ団長が来てくれたのだろうか? 気になるところではあるが、様子を見に外に出ようとすると、アリスが危険だから外には出ないでと言わんばかりにつぶらな瞳で裾を掴む。超可愛い。
非常事態なのにも関わらず、アミはアリスのあまりの可愛さに口角が上がりっぱなしの状態となった。そしてまたしてもイチャイチャを始めた。
――それから十分が経った。まだ戦闘の音が聞こえる。
静かになるどころか更に音が加速する。どうやらまだ戦いの熱は冷めないようだ。
そんな中アミとアリスは恋人のように手を繋いだり、冷蔵庫にあったデザートを食べさせ合ったり、とずいぶん楽しそうに基地内デートを満喫している。
更に十分後、武器の音と魔法の音が少しずつ弱まってきた。そろそろ決着が着くか?
一方でアミとアリスはのんきに一緒にお風呂に入り、背中を流したり、言葉にはできないがあんなことやこんなことを平然と行っている。
更に時が経つこと十分後、戦闘の音が耳に入らなくなった。どうやら戦いは終わったようだ。
アミとアリスは部屋のベッドから出て、外の様子を見に恐る恐るエレベーターへ向かうが、そのエレベーターは今一階から地下へ下っていく最中だった。
誰かがここへ来る! エレベーターの中にいるのは、果たして敵か味方か……。
このエレベーターから地下へ行く方法を知る者は限られている。その大抵が味方だ。つまりこのエレベーターに乗る者は味方である可能性が非常に高いのだ。
しかし、敵側に偶然このエレベーターの使い方を知っている可能性や、味方から何らかの方法で無理やり聞き出した可能性もなくはない。なので警戒はしつつ、エレベーターの到着を静かに待つことにした。
『アリスとイチャイチャしててすっかり忘れてたけど、今、警戒しなきゃいけない時なんだよなぁ……こんな姿をアクタ団長にバレたら……ひぇぇ……恐ろしい……』
アミはアクタの雷が脳裏に浮かび、恐怖で震え上がる。以前ギルドに居た時に一回アクタから、言葉にするのも恐ろしいと思ってしまう程の、雷を喰らって以降、トラウマになってしまったようだ。
『アミさん……大丈夫?』
アリスは震え上がるアミさんを案じ、強く手を握った。震えているのは別の恐怖が原因だが。
『あ、ああ……大丈夫だよ。ありがとね』
そう話している内にチーン、という到着音と共に鉄の箱は開いた。
途端に緊張感が増し、呼吸が荒くなる二人。
(一体誰が乗ってるんだ?)
扉が開く音がして、次に足音が聞こえてきたと思ったら、バタバタと複数人が一斉に倒れ込んだような音が聞こえた。
『え?』
乗ってたのは一人じゃないのか? 複数人だとしたら一体誰と誰だ? そもそも何故倒れ込んだのか? さっき聞こえた戦闘音が関係あるのか?
いくつもの疑問を解消する為に、アミはおそるおそる食堂の扉を開き、エレベーターの方へ足を運んだ。
するとそこに倒れてたのは――
『な……何でこいつらが!?』
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