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第84話『その願い叶えるよ』

※2023/11/06改稿しました。


お待たせしました。

第84話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。

 ――ありえない。


 この世は確かにファンタジーの世界。何が起きても不思議ではない。だが、それはあくまで前提に原理が敷かれていたからだ。要するにどのような不思議も全て科学だったからだ。


 では、()()()()()()場合は?


 ――たとえば、高いビルさえも見下す()()()()()()()が浮かんでいたとしよう。


 それは魔法を使うことなく、炎を纏い、空中を浮かんでいるとしたら――


 それは()か何かだろう。



 ――辺りが異常な熱気で包まれる。サウナよりも熱い、まるでここは拷問部屋だ。


 その原因は分かっている。ビルの上のアミ達を覗く赤く燃える巨人。彼がそこにいるだけで尋常じゃない汗が身体を伝う。


『君は何者だ!』


 アミは頻繁に流れる汗を必死に拭いながら、炎人間に剣を向けそう問いかけた。


 その振る舞いが気に食わなかったのか、炎人間は眉にしわを寄せた。


『俺が何者か? そんなこと知ってどうする? 貴様はもうすぐ俺に溶かされる運命(さだめ)だろう?』


 死にゆく者にかける言葉などないと回答を拒否し、纏っていた炎を更に盛り上げる。


『くっ……!』


(――熱い。熱い熱い熱い熱い熱い熱い! こんなに熱い思いをしたのは初めてだ……。冗談抜きで身体そのものが溶けそうだ……)


 命の危機を感じたアミは、少しでも熱さから逃れるために、すぐに隣のビルに移ろうとするも、炎人間は予想以上の速さで浮かんだまま追いかけてくる。


(これは逃げられそうにないな……)


 アミは逃げることを諦め、戦う事を選んだ。


『剣を向けても無駄だ。俺は貴様と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 貴様とは戦いにすらならず、ただ俺の纏った炎に溶かされるのみと言う。


 現にアミは剣を持つので精一杯だ。熱がここら一帯を侵食し、死の世界へと変えている。


『覚悟せよ。魔王の手先』


 炎人間は遥か上空まで身体を浮かせると、両手から炎の塊を生成し始めた。その塊は3秒毎に徐々に大きくなり、最終的には半径10メートルの巨大な炎の塊が出来た。


『くっ……このままじゃ……!』


 今のアミには、炎人間に刃を通すことも、炎の塊から逃げることすら困難だ。もはや炎に焼かれる運命(エンディング)しかない。


『終わりだ』


 死の炎塊(えんかい)は放たれた。この国ごと、まるでゴミを溶解するかのように全てが無くなるだろう。


(それにしても何だアレは……? 本当に()()()()()()()()()?)


 そもそもあの炎人間自体も、あまり見かけない巨体だしただの人間ではないように見える。炎を纏う事自体は普通の魔法で再現可能ではあるが、国を滅ぼせるほどのパワーをすぐに生み出せるなんて非現実的(チート)にも程がある。


『こんなのってアリかよ!!!』


 彼女の決死の叫びも虚しく、やがて視界には夜空が見えなくなる程の炎で覆い尽くされ、炎の海に飲まれようとする。


(――――もう終わりだ。あぁ……もっと生きたかったな……。

ゴールドちゃん、シルバーちゃん、ブロンズちゃんの可愛い顔をもっと見たかったな。あわよくば抱きしめて癒されたかったな……。

赤髪ちゃんともう1回だけ手合わせしてみたかったな……。

あおいちゃんと一緒に赤髪ちゃんの魅力を語り合いたかったな……。

みどりちゃんの人間の時の姿、一度で良いから見て見たかったな……。

魔王……まーちゃんともっと一緒にお酒飲みたかったな……。

ダスト君……君との()()……守れなかったな……せめて()()()の事を覚えていればな……。

そして……最後に……皆に会いたいよぉ……助けて下さい……アクタ団長……!)


 ――その願い叶えるよ――


『え?』


 どこかから可愛らしい少女のような声が聴こえた。すると、炎の勢いが止まり、炎の巨人はまるで銅像になったように固まっている。


『何が起こったの……?』


 さっきまで熱かったのが嘘のように消え失せているが、消して涼しいわけではなく、“何も感じない”という表現が正しい。


『変な感じ……』


 信じられないかもしれないが、どうやら世界の()()()()()()()ようだ。


 なぜこうなったのか分からないが、これは好機と捉え、今のうちに炎の塊に巻き込まれなさそうな基地まで避難した。


 基地があるこの廃墟ビルには、あらゆる魔法を通さない魔法耐性や、どんなに強い力でも壊せない物理耐性の結界が張ってある。


 簡単には壊せない……が、あの炎人間の放った炎の塊が魔法という域を越えていた。あの炎の塊がぶつかった時、果たしてここの結界が機能するのか……不安なところであるが、今はそれよりも気になることがある。


『さっきの声は何だったんだろう?』


 アミが不思議そうに首を傾げていると、またさっきと同じ少女の声が聴こえた。


 ――さっきの声って私の事かな?――


『うおっ! ビックリした! ってどこにいるの?』


 声の主がどこかにいるのかと、辺りを見渡してもアミ以外は誰もいなかった。


 まるでホラーのような展開だが、アミはさっきの少女の声を聞いてから不思議と心が暖まり、穏やかな気持ちになっていた。


 ――ここだよ、今、あなたが首にかけてある()()()()()が私だよ――


『え? ペンダント……?』


 アミはそんなバカな……と思いながら、ペンダントを持ち上げた。


『君が声の主かい?』


 ――うん、そうだよ――


『マジか……』


 アミさんは内心めっっっちゃ困惑しながらも、ペンダントに意志がある事を認めた。


 ――あ、ごめん。このままじゃ話しにくいよね。今、()()()姿()()()()()()――


 ペンダントはそう言うと全体が青く光り、人の形へと変貌していく。光が完全に消える頃には人間の姿が出来上がっていた。


『君は……?』


 白いワンピースを着用したロングヘアーの美少女が目の前に現れた。身長も年齢もゴールドちゃん達よりは、少し低いと思われる。


『アミさん、初めまして。私の名前はアリスだよ。アミさんの事はアクタさんからよく話を聞いてるよ。武器を扱うのがとても上手くてしかも魔法レベルも魔力レベルも高く、とても才能溢れる人だと褒めちぎってたよ』


 しかし、褒められた当人はアリスの話を聞いておらず、何かに衝撃を撃たれたように固まっていた。


『か……か……』


『あの、どうかされましたか?』


『か、可愛い~! めっちゃ可愛い!』


 どうやらアリスの可憐すぎる容姿が、アミの好みだったようで、堪らず抱きついた。


 アリスは抱きつく=愛の告白だと定義しており、綺麗なお姉さんから結婚を前提にお付き合いしたいと言われたように思えた。


『え……ええええええ!?』


 少女は頬を赤らめ、自分たちの将来の映像を(勝手に)思い浮かべたのだった。


第84話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、7日~9日に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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