第82話『それぞれの想い』
お待たせしました。
第82話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2023/11/04改稿しました。
『久々の魔王城だ!』
やっと我が家に帰還した三姉妹。影の薄い猪は初来館、圧倒的効率厨の男は幾年振りの来訪だ。
魔王はサイズ的に扉を潜れないので、墓地のある広い庭で待機している。どこか残念そうな顔をしている。
三姉妹の可愛らしい『ただいまー!』という声が、ほぼ無人の魔王城を響かせる。
久々の帰還にテンションが上がっているのか彼女達は帰ってきて早々、嬉しそうにみどりちゃんを食堂や娯楽施設等を案内した。
『ここが魔王城ですか……思ったより、魔王城っぽくないですね。どっちかというと、火の国にあるホテルのような感じですね~』
みどりちゃんは魔王城を見て、そんな素直な感想を口にした。ずいぶん前に召喚した彼も同じような感想を抱いていた。
『ここもあまり変わらないな』
アクタは魔王城には住んでいた思い出があり、彼にとっては実家に帰省したような感覚だ。
『アースはどこにいる?』
この広い中で自力で探すのは効率が悪いので、ゴールドちゃんに居場所を聞いた。
『ん、あぁアースちゃんなら――』
『ここにいるっすよ』
突然ゴールドちゃんの真下から、妖怪のようにすり抜けて現れた。
『うわぁっ! 床からいきなり現れんなよ! ビックリするだろ!』
『いやぁ~ごめんごめん。ゴールドちゃんのパンツが見たくてつい』
スカートの中は当然見通されていた。
『っ……!!! この変態女神!!!』
ゴールドちゃんは恥じらいながら、二度と見られないように両手でスカートを押さえた。
『今日は白なんだね!』
ニヤニヤ顔のアースは容赦なくゴールドちゃんの下着の色を暴露した。
『言うな!』
乙女の聖域を見られたゴールドちゃんを横目にアクタはアースに質問をした。
『地の女神アースだな。早速だが質問がある。時の女神はどこにいる?』
『それは私が聞きたいくらいっすよ。特に時の女神は、そもそもこの世にいるのかどうかすら分からないっすから』
アースですら、時の女神とは会ったことがないようだ。しかもその存在自体が曖昧で、もはや都市伝説のような存在のようだ。
『だが、心当たりくらいはあるだろう?』
そもそも女神自体が伝説のようなものだ。その女神の一柱であるアースが目の前にいるのだから、時の女神も存在しても何も不思議ではない。
『うーん……そうだなぁ……まあ、心当たりというか噂なんすけどね。“世界の果て”に居るんじゃないかと言われているっすよ』
『世界の果てだと?』
アースによると“世界の果て“とは、世界の端にあるとされる“幻の大地”と呼ばれている場所の事である。もちろん地図上に存在しない為、どこにあるかは不明。そもそも本当にそんな場所があるのかすら不明だ。
あまりにも手がかりが無い為、誰かの妄想じゃないか、とまで言われている。
『なるほどな……他に何か手がかりは無いのか?』
『残念ながら、さっぱりっす』
『そうか』
幻の上に伝説。情報を仕入れたはずが何故かゴールが遠ざかっているような錯覚にアクタは苛まれていた。
だからといって諦めるわけにもいかない。アクタは切り替えて捜査を続ける。
これ以上の手がかりはここには無いと判断したアクタは、次は“幻の大地”の手がかりを探しにすぐに魔王城を出ようとしたが、ゴールドちゃんにちょっと待てと腕を掴まれた。
『師匠、ここで少し休んでこうぜ。さすがに疲れた……みんなもそうだろ?』
シルバーちゃん達も同意するように力強く何回も頷いた。
『……確かに、疲労が溜まったまま旅に出るのはかえって効率が悪いな。分かった。今日はここで休んでいこう』
『やったー!!!』
ゴールドちゃん達は突然休校になった時と同じくらいの歓喜を表した。それ以上にゴールドちゃん達にとってはやはり、自分達の家で過ごす方が安心感があるのだろう。仲間が何人かいないのは残念ではあるが。
『ねえねえ、アースちゃん』
ブロンズちゃんはアースちゃんに話し掛けた。
『どうしたの?』
『私達とアクタお兄ちゃんの時と喋り方違くない? 赤髪ちゃんの時もそうだったけど……何かあったの?』
ブロンズちゃんが核心をついたような質問をすると、アースちゃんは誤魔化すようににこっと笑い、アイドルのようなポーズをして、
『乙女の秘密だよ☆』
そう答えた後、シルバーちゃんと大事な話があるからと逃げるようにその場をあとにした。
これ以上聞かれると何か都合が悪い事でもあるんだろうかと、更なる疑問がブロンズちゃんを悩ませる。
ちなみにブロンズちゃんは質問した時も、その前もアースちゃんの心を読んではいるが、
『ゴールドちゃんの照れた表情、めっちゃ可愛い~』
『ブロンズちゃん、めっちゃ良い匂いする~』
『全く、この三姉妹可愛すぎるわー、女の子でも惚れるわー』等、ひたすら3姉妹を褒めちぎっていただけだった。
重要な情報は読み取れず、どうやらうまく心の底に封じているようだ。
ブロンズちゃんは、まあ今はいいや……とため息をつき、事情聴取を断念した。
やることが無くなったブロンズちゃんは自分の部屋でゆっくり過ごす事にした……と思いきや、彼の部屋へ向かった。
『お兄ちゃんの部屋……』
ブロンズちゃんは、おそるおそるダストの部屋に足を踏み入れると、ベッドにダイブし布団の匂いを嗅いだ。
『お兄ちゃんの匂い……』
ブロンズちゃんは、ダストの匂いを鼻腔の奥に取り込んだことで、彼との思い出が蘇り、感極まって涙を流した。
『早くお兄ちゃんに会って、いじめたり、いじめたり、いじめたりしたいのに……』
彼へのいたずらを妄想するブロンズ。彼女の彼を想う気持ちは本物だ。いつか彼に会えますようにと彼女は祈るのであった。
――その後、アースちゃんを交えたみんなで食卓を囲み、三姉妹が愛情を込めて調理した夕食をみんなで頂いた。
わいわいと盛り上がってる中、アースちゃんは早速初対面のみどりちゃんと仲良くなったり、悪酔いしてアクタに襲いかかるが、逆にカウンターを喰らって失神したりと、またしてもカオスな食卓となったが、みんな心の底から楽しそうにしている。
『ごちそうさま。ゴールド、俺は少し外に出る』
『おう、分かった』
アクタは食器を洗い場に持っていくと、宣言通りすぐに外に出ていった。
『良い景色だ』
心地よい風が肌を撫で、木々に潜んでる小さくて狂暴性の無い虫型モンスターの鳴き声が、コーラスを奏でている。
そして夜空を見上げると、キラキラと輝く星々がまたしてもアクタの心を奪う。
外に待機しているドラゴン魔王も、夜空を眺めていたと同時に涙を流していた。それは感動なのか、悲観なのかは定かではない。そんな魔王にアクタは共通の思い出を語る。
『マーブル、覚えているか? ここで、ダスト、アレン、スカーレット、アミと一緒に夜空を眺めていた時の事を』
魔王は夜空から目を離さないまま、コクンと頷いた。
『そうか』
そのまま、二人はしばらく夜空を眺めていた。
『そろそろ俺は戻る。いい加減戻らないと弟子達に心配かけてしまうからな』
アクタは少し嬉しそうな表情でそう言った。魔王もそれに釣られるように少しだけ笑った。
――そんなささやかな幸せの中、突然爆発したような轟音がここまで響き渡った。
ただならぬ轟音に虫達はコーラス大会を中止し、逃げるように木々に隠れてしまった。
心地よかった風も、押し出されるような不穏な風へと変わった。
『何だ!?』
轟音が響いた方向に目を向けると、そこはほぼ人がいないはずの火の国がある。
そこから遠くに異常を伝えるように煙もあがってきた。明らかに何かが起こっている証拠だ。
『まさか……アミ!!!』
第82話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、2日~4日に投稿予定ですが、最近、また体調不良が続いてしまっているので、もしかしたら投稿予定期間より遅くなるかもしれません。もし、遅れてしまったら、申し訳ございません。
宜しくお願い致します。




