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第81話『姉妹愛と魔王の想い』

※改稿しました。


お待たせしました。

第81話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。 


『私の商品いかがでしたでしょうか! もし、よろしければレビューを書いて下さると助かります!』


 ヘロンはニッコニコ顔で、ぜひこちらに入力お願いしますとタブレットのような物を渡してきた。


『うるせえ黙れ、失せろ』


 ゴールドちゃんはタブレットを受け取らず、まるで敵を見るような目でヘロンを睨みつける。嫌悪感など微塵も隠す気がないようだ。


『……またのご愛顧をお待ちしております~』


 ヘロンは最後まで営業スマイルを保ったまま、この場をあとにした。


『もう二度と顔も見たくねえわ……』


 心の底から出た感想をそのまま呟いた。


『ゴールドちゃん、私……シルバーちゃんにも、その銃を撃ってくれ』


『あ、ああ、そうだな』


 不機嫌が残ったままだが、ゴールドちゃんはすぐに引き金を引いた。


 ピンクの銃から発射された赤外線はブロンズちゃんとみどりちゃんの時と同様に、シルバーちゃんの心の絶望を打ち砕いた。


 するとシルバーちゃんの身体を乗っ取っていたアースちゃんの意識は魔王城にいる本体に戻っていった。


 わずか3秒経った後で、シルバーちゃんは意識を取り戻した。


『お姉ちゃん? あれ? 私、何やってたんだっけ……?』


 シルバーちゃんは少し前の記憶を漁るが、何も頭に浮かばなかった。


『目が覚めたか、シルバー』


『え? どうしたの? お姉ちゃん?』


 あまりにも可愛い妹のいつもの顔を見て、ゴールドちゃんは安心感を覚えると共に、妹狂いの部分を呼び覚ます。


 ゴールドちゃんはニコニコしながらシルバーちゃんの顔を近づけた。


『お、お姉ちゃん……そんなに、顔を近づけたら、は、恥ずかしいよぉ……』


 案の定シルバーちゃんは頬を染め、目を逸らした。


『か、かわええ……』


 シルバーちゃんにときめいたゴールドちゃんは堪らず抱きしめた。


『お、お姉ちゃん!?』


『愛してるぜ……シルバー』


『愛して……る……ふえええええええ』


 大好きなお姉ちゃんに抱きつかれたシルバーちゃん。相思相愛であるため、これはシルバーちゃんにとっても、思い描いた理想のシチュエーションだろう。


 しかし、実際に理想が叶ったら叶ったで、彼女は恥ずかしさのあまり耐えられず、オーバーヒートしたように意識を失ってしまう。


『シルバー! おい! 大丈夫か!?』


 シルバーちゃんの身体を揺さぶるが、意識が浮上することはなかった。


『シルバー? シルバアアアアアアアアア!』


 本気で妹の危篤を考えるゴールドちゃんは決死の叫びでシルバーちゃんに語りかける。その光景はまるで戦友を失った兵士の如く。


 それを木影からこっそり覗いていたブロンズちゃんは、呆れた表情で『何やってるのよ……』と、呟いた。


 ゴールドちゃんはブロンズちゃんの気配を感じたのか、ブロンズちゃんの方を向いた。


『あ、ブロンズ! 大変だ! シルバーが……また目を覚まさなくなっちまったよ! もしかして……』


 最悪の想定を思い浮かべたゴールドちゃん。


『大丈夫よ、失神しただけだから』


 ブロンズちゃんは状況をしっかりと把握していたので、なぜシルバーちゃんは意識を失ったのか理解できる。


『そうなのか! 良かった!』


『誰かさんのせいでね』


 ボソッと声をそう出した。


『何か言った?』


『何も言ってないわよ☆』


 満面の笑みだが、どこか笑っていないような不自然な表情だ。


『お、おう、そうか』


『それよりも、ゴールド姉がなぜこんなにボロボロなのか……説明してもらえる?』


 この時ブロンズちゃんは既にゴールドちゃんの心を読んでいたものの、『めっちゃ大変だった』『師匠マジつえぇ……』『シルバーもブロンズも可愛いなあ!』等、語彙力たったの5の思考だけが浮かんできた。


 それ情報だけでは、とても状況を把握しきれないので、ゴールドちゃんに詳しい経緯を聞くことにした。


『お、おう……実はな……』


 ゴールドちゃんは先程までの出来事をできる限り丁寧に説明した。


『そう……そんな事が……ありがとうゴールド姉。大好きよ』


 ブロンズちゃんはご褒美としてゴールドちゃんに微笑みをプレゼントした。先程の笑みとは違う純粋な笑顔だ。


『ブロンズ……アタシも大好きだああああああああ!』


 ブロンズちゃんからの最高のプレゼントにゴールドちゃんは感涙し、子供のように泣きついた。


『もう、ゴールド姉ったら……』


 姉妹愛を育み合っていると、ゴールドちゃんはある事に気づき、キョロキョロと辺りを見渡す。


『あれ? そういえばみどりちゃんいなくね?』


『あぁ……みどりちゃんなら……』


 行方を知る前に本人は汗だくで帰って来た。どうやら、ものすごく走ってきたようだ。


『おお、みどりちゃん。そんなに汗だくで一体どうしたんだ?』


『はぁ……はぁ……にっくき()()()を、追いかけてたんですよぉ……』


 マスコットらしからぬ怒りに満ちた表情でそう説明した。


『にっくきあの男?』


『はい! さっきの黒スーツの男です! 私をこんな姿にしやがった張本人です!』


 どうやら、みどりちゃんを猪にしたのは、さっきの営業マンのヘロンだったようだ。先程そのヘロンを見かけたみどりちゃんは『あの野郎、ぶちのめしてやるですぅ!』と怒りながら、ヘロンに突撃しようとしたが、逃げられてしまったようだ。


『ああ、そうだったのか……よし、じゃあ次、あいつを見かけたら、ボッコボコにしてやろうぜ』


『それは名案ですねぇ』


 ゴールドちゃんとみどりちゃんは、互いに不敵な笑みでヘロンへの復讐を誓い合い、ここにヘロン被害者の会を設立した。


 そうこう話している内に、アクタがドラゴン (魔王)を連れて、ゴールドちゃん達の元へやってきた。ドラゴン (魔王)がアクタの後ろをついてきているのを見て、ああ、我らが魔王はようやく正気に戻ったんだな……と1人残らず察した。


 ゴールドちゃんは魔王の前に来てこう言った。


『おかえり、まーちゃん』


 家族を迎えるような笑顔で魔王を抱きしめた。


 魔王は眼から一筋の涙を流した。記憶が消されていたとはいえ先程までゴールドちゃん達を襲った敵だったのに、何一つわだかまりを残すことなく魔王は迎え入れられた。


 しかし、だからこそ魔王は余計に罪悪感に苛まれる。いっそ責められた方がマシだっただろう。お小遣いという名の賠償金でも払った方がまだ償えた気になれただろう。


 だがゴールドちゃんもブロンズちゃんもそんなことは微塵も望んでいない。ただ帰ってきてほしかった、それだけだ。


 2人は魔王に抱きついた。『もう大丈夫だよ』『辛かったね』と、暖かい言葉を乗せて。


(()()()を倒さない限り、元の姿に戻る事もないし、人の言葉も話せない。それでも……儂は伝えたい。こんな自分に、暖かい言葉を乗せてくれる家族に……おかえりと言ってくれる家族に……)


『ありがとう』


 魔王なりに言葉を発した。ドラゴンの言葉なので人間の2人に届くはずもない。分かっている。それでも――


(伝わったかな……伝わってるといいな)


第81話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、31日~8月1日に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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