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第75話『休憩』

お待たせしました。

第75話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


※2023/02/27改稿しました。

 不思議な荒野を颯爽と走る大きな猪みどりちゃんと、そのみどりちゃんに乗っているアクタ達一行は、我が家同然である魔王城を目指す。


『うおおおお! 速ええええええ!』


『まだまだスピード出ますよぉ!』


 上機嫌な猪は褒め言葉をエネルギーに、スピードをどんどん上げる。下手をすればク・ルーマよりも早いかもしれない。


『やはり妙だな』


 アクタは周りを見渡すと、眉を潜め、そんなことを呟いた。


『何が妙なの?』


『この荒野にはあらゆるモンスターが生息してるはずだが、1匹たりとも見かけない。この異常な暑さのせいなのか?』


 言われてみれば……と身体が暑さに気づいたゴールドちゃん達は手をうちわのように扇ぎ始めた。


 それから、しばらく走っていると、荒野は更に暑さを増し、全員汗の量が尋常ではなかった。どんな環境でも死なないアクタ以外は今にも倒れそうだ。


『も、もう、限界ですぅ……』


 先程まで張り切っていたみどりちゃんも、舌を出して体力の限界をアピールしている。


『ふむ、このままだと脱水症状になりかねない。休憩に入るぞ』


 みどりちゃんの足を止めると、アクタは自分のリュックからテントを取り出した。それに魔力を込めるとテントはまるで生きているかのように自動で動き出し、組み立てた後の状態となった。


『全員この中へ入れ。俺は外を見張っている』


 アクタ以外の4名はゾンビのようにフラフラしながら、オアシスを求めるようにテントの中へ入っていった。


『おおおおお! テントの中すげー! ひれー! うおっ! めっちゃ涼しい!』


 テントの中にエアコンがあるわけではないが、中を涼しくさせる魔法が施されている。


 テントの大きさに反して中は広々としており、あと20人が入っても、それぞれのパーソナルスペースが守れるくらいだ。


 中にあるのは、木製の机が2つと椅子が8つ程あり、机の上には質素な栄養ドリンクと食欲を湧かせる気ゼロの栄養食がいっぱい置いてあった。


 栄養ドリンクと栄養食をチョイスするところは、アクタらしいなと思った4人であった。


 ゴールドちゃんは他に何か無いかと端の方にある、冷蔵庫を開けて見たが、中身はペットボトルいっぱいの水が2つと栄養ドリンクと栄養食ばかりだった。これにはゴールドちゃんも呆れた表情をした。


 仕方ないので水が入ったペットボトルだけ取り出し、冷蔵庫のすぐ隣にある食器棚のコップを5つに、水を8分目くらいまで注ぎ、皆のところへそれぞれ1つずつ持っていった。


『ありがと、ゴールド姉』


 ブロンズちゃんが水をごくごく飲み始めると、続いてシルバーちゃんとみどりちゃんも飲み始めた。


『師匠にも持ってくか』


 ゴールドちゃんは外で見張っているアクタにも水を持っていった。


 アクタは『すまない』と礼を言い水を一気飲みした。ゴールドちゃんもアクタが飲み始めたタイミングで水を飲んだ。


『師匠は中に入らないのか?』


『言っただろう。俺は見張っていると』


『でも暑くないのか? 暑いなら遠慮すんなよ――ってあれ? なんだか頭がフラフラする……』


 ゴールドちゃんの身体はこの異様な暑さを思い出すと途端に大量の汗を流し、意識が奪われそうになる。


『……俺は大丈夫だ。お前は一刻も早く戻れ』


『……はぁぁぃ』


 ゴールドちゃんは千鳥足のようになりながらも、なんとかテントにたどり着き、皆に心配されながらも、再び冷蔵庫の水をコップに注ぎ、一気飲みした。


『あぁぁ〜……もう服びっしょりだ……早く着替えたい……ん?』


 ゴールドちゃんが自分の胸元を見てみると、下に着ていたものが透けて見えていまう状態になっていた。幸いこの場に異性はいないため、大惨事は避けられたが、恥ずかしがり屋のゴールドちゃんは慌てて胸を隠した。


『き、着替えてくる!』


 と言ってすぐ、みんなに見られないようにべちゃべちゃの服を脱ぎ捨て、リュックの中にある白いTシャツとピンクのミニスカートに着替えた。


『早っ』


 あまりの着替えの早さに、お前が時の女神か!? と、思う一堂であった。


『ゴールド姉、着替え早すぎない?』


『いや、だって……着替え見られるの恥ずかしいじゃん……』


 同性どころか姉妹に対してすら恥じらう、可愛すぎる反応に、ブロンズちゃん達はキュンとした。もし、このシーンを男達に見せたなら、男達はあまりの尊さに壁に頭を打ち付けてしまうだろう。


『お姉ちゃん、気持ちは分かるよ……私も、着替え見られるの恥ずかしい……』


 シルバーちゃんまで頬を染め、両手の人差し指をつんつんとした。


『シルバー姉も凄まじい破壊力ね……こんな可愛い美少女を見たら、全ての男達の心を奪えるわ……』


『あんまり可愛いとか言わないでよ……恥ずかしい……』


 シルバーちゃんは、容姿を褒められた恥ずかしさで、着替えの服で顔を覆ってしまった。


『いえいえ、めちゃくちゃ可愛いですよぉ、これなら、ダストさんの心も掴む事ができますよ!』


 みどりちゃんも彼女たちの可愛さに絶賛した。それ自体は良いのだが、問題はダストという名前を出してしまったことだ。


 そのせいで場の空気が重くなった。


 彼女達はダストを助けられなかった事を後悔している。もちろん確実に死んだと断定はできないものの、彼は死んだように突然消えてしまったのだ。


 今、どこにいて何をしているのか、そもそも帰ってくるのかすら分からないのだ。最悪二度と帰ってこない可能性も十分ありえる。


『あ……ごめんなさい』


 失言に気づいたみどりちゃんは下を向きながら謝罪した。


『いいえ、みどりちゃんのせいじゃないわ……』


『……』


 それから全員喋らなくなってしまった。ダストも消えてしまっただけではなく魔王もドラゴン化してしまい、赤髪ちゃんとあおいちゃんも行方不明だ。かつての仲間が半分もいなくなった事実が彼女らの精神を再び押し潰す。


 ――そんな空気のまま30分後。


 アクタはゴールドちゃん達の様子を見にテントに入ってきたが、全員絶望したような顔をしていて、とても魔王城へ向かおうという雰囲気ではなかった。


『どうした?』


『あ、師匠……いや、いいんだ、気にしないでくれ……』


『明らかに何かあっただろう? 話せ』


『でも……』


『いいから話してみろ』


『分かったよ、実は――』


 ゴールドちゃんはこの暗い空気になった経緯を話した。


『なるほど。4人で歓談していたら、ダストの名前が出てきてしまい、ダストが消失してしまった事を思い出してしまったのか』


『ああ……』


 アクタは少し考えると、シルバーちゃんに顔を向けて、


『シルバー。確認だがダストは()()()()()()消えたのだな』


『は、はい……』


『ふむ、ということは』


 アクタはダストの消失についてどこか思うところがあるようで、少し考え込んでしまった。


『師匠?』


『……いや、なんでもない。どちらにせよ俺達にできることは、少しでも前に進む事だ』


 アクタがそう言うと、ゴールドちゃん達はこのままじゃいけないとお互いに頷き合い、魔王城へ行くための身支度をした。


 もう過去を振り返らない。彼女達は少しでもあの頃の日常を取り戻すために前へ進もうとしている。


『師匠、準備できたぜ! さあ、魔王城へ行こう!』


 暗い空気は嘘のように消え去り、皆の目は輝きに満ちていた。


『身支度を済ませたところ悪いが……もう外は夜だ。暗い中で外に出るのは危険だ。出発は朝にしよう』


『『『『 あ 』』』』


 ここにいる全員が完全に忘れていた。この荒野は、時間の経過が早く、すぐに夜になってしまうことを。


 よっしゃあ! 運命に抗ってやんよ! という雰囲気だったのに、その熱はこの瞬間冷めてしまった。そのせいで暗い空気が息を吹いてやってきてしまった。が、すぐにそれも吹き飛ばされ、


『あー、とりあえず、火の国で買ってきた、トランプでもやろうぜ』


 このあと、めちゃくちゃトランプした。

第75話を見て下さり、ありがとうございました。

次回は、16日~18日に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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