第72話『私は、あなたのように強くなりたい……』
※2022/09/19改稿しました。
お待たせしました。
第72話の執筆が完了しました。
本当なら、昨日あたりに、投稿しようと思ったんですが、思った以上に時間が無かったので、今日になってしまいました。
いつもいつも、遅めの投稿になってしまい、申し訳ございません。
こんな私ですが、今後とも、宜しくお願い致します。
『お姉ちゃん!』
この決闘をギャラリーとして見守っていたシルバーちゃんはまだ決闘の時間が残っているのにも関わらず、ゴールドちゃんの元に駆けつけようとした。
そんな彼女にアクタが、
『まだ決闘は終わっていない!』
アクタはシルバーちゃんにそう強く言い放った。
アクタにとっては子供の戯れとはいえ、決闘は決闘だ。時間が0を指し示すまで勝敗を決定してはいけない。アクタなりの決闘相手への礼儀だ。
シルバーちゃんはその言葉の意味をすぐに理解し、涙を流しつつもその場で踏み止まり、最後まで決闘の行く末を見届けた。
『あと20秒か……』
もはや一刻の猶予もない。
しかしゴールドちゃんは起き上がる様子もなく、硬い地面に身を委ねるだけ。
『あと10秒……9……8……7……』
冷酷にも時は流れていく。
『6……5……4……』
『お姉ちゃん……』
『3……2……1……0……時間だ』
『お姉ちゃん!』
『ゴールド姉!』
シルバーちゃんとブロンズちゃんは倒れているゴールドちゃんを支え、基地へ戻っていった。
『団長……』
かつての団長とは違う側面に、アミさんはどこか悲しげな視線をアクタに向ける。
『アミ、俺は今から1週間程出かける』
『どこに行くんですか?』
『ちょっとその辺にだ。俺が居たらあいつらの気も休まらんだろ』
『まあ……確かに……』
『シルバーに伝えといてくれ。1週間後に出発する。それまでに準備を万全に整えろ、とな』
『わ、分かりました』
『あと、それから……』
『はい?』
『ゴールドにも伝えておいてくれ……俺には遠く及ばないがお前は強い。もしもっと強くなりたければ、お前の修行を手伝ってやる、とな』
アクタはゴールドちゃんの勇姿に心打たれたのか、効率を無視して彼女を弟子にしてもいいと言った。
そんな発言にアミさんはかつての団長の面影を感じた。仲間を思いやり、一人一人に敬意を表し、面倒見のいい団長。それがアミさんの知るアクタという人間だ。
『やっぱり、団長は団長ですね!』
アミさんは嬉しそうにそう言った。
『フン、俺はもう行くぞ』
アクタはそう言い残すと、膝を曲げ、大地を蹴り、空の彼方まで飛んでいった。
アミさんは、アクタを見届けるように空を一望する。
『私はあなたのように強くなりたい……』
そう呟くと、えへへと上機嫌に踵を返した。
『さて、私も基地に戻ろう』
アミさんもゴールドちゃん達も生涯この出来事を忘れることはないだろう。彼女達はまだまだ強くなる。守りたいもののために、そしてアクタに認められるために。
――それから1週間後――
『もう、1週間経ったか』
その頃アクタは魔王城がある迷いの森にいる。やはり資格なき者は魔王城に入るどころか見ることすらできないようだ。
アクタはこの1週間何をやっていたかと言うと、基地から魔王城までの安全且つ最短ルートの確認をしていた。
無論モンスターが出ても、アクタなら余裕で倒せるだろう。だがこの世界のアクタは効率至上主義だ。いかにモンスターと遭遇せずに効率良く魔王城へ進めるかと、そればかりを7日間ずっと考えていたのだ。
あとはシルバーちゃんが安全に通れるようにとも考えていた。
そもそもそんなことせずにシルバーちゃんを抱えて空を飛んだ方が効率が良いのではとアクタは考えたが、シルバーちゃんが空の旅を怖からずにいられるとは思えなかったので却下した。
『さて、そろそろ時間だな。基地へ戻ろう』
アクタは一刻も早く基地へ戻るために、再び空高く跳躍した。
ちなみにこの跳躍自体は魔法ではなく自身の筋力のみで飛んでいる。
だが、さすがにアクタといえど筋力だけでは鳥のように飛び続ける事なんてできない。
そこで空中浮遊魔法を使う。ダストと同じ空中浮遊魔法だがアクタの場合魔法レベルと魔力レベルが桁違いなため、休まずとも1週間はずっと魔法を発動し続ける事ができる。
魔法の自由度はアクタの方がはるか上。ダストはせいぜい7段くらいの跳び箱くらいしか高く飛べず、浮遊できる時間も圧倒的に少ない。
『少しスピードを上げるか……』
時間が惜しいと思ったアクタは空中浮遊魔法から超速魔法に切り替えた。すると浮遊していたアクタの身体はゆっくりと低下する代わりに速さを手に入れた。
――その姿はまるで宇宙から飛来する隕石の如く。
『――見えてきたな』
超速で飛んでいたおかげで思いの外早く火の国が見えてきた。
超速の勢いで周囲を破壊しないように、アクタは超速魔法から空中浮遊魔法に切り替え、基地があるマンションの前に無事着地した。
もちろん普通に空から飛び降りても、アクタなら無事に着地できるが、これも勢いで周囲を破壊する恐れがあったので、どちらにせよ空中魔法で勢いを殺して着地する必要があった。
『あ、団長ー! おかえりなさい!』
その時偶然外に出ていたアミさんが満面の笑みでアクタに手を振った。
『ああ、ゴールド達はここにいるか?』
『いますよー』
『アミ、お前はどこへ?』
『いや~ちょっと散歩にでも……と思いまして……』
アミさんは目を逸らし、引きつった笑顔を浮かべた。
これは何かを隠しているなとアクタは察した。
アクタは知っている。アミさんは散歩するタイプの人間ではない。散歩するくらいなら全力疾走したいとか剣を振り回したいとか言うタイプだ。
それはかつてのあの頃から全く変わらない。そんなアミさんを見て、アクタは懐かしい気分になり少し口角が上がった。
『お前が散歩なんかするか。一体何を隠しているんだ?』
『わ、私だって散歩くらいしますよ!』
と言っているが本当はアクタの飛行音が聞こえたので、偶然を装って外に出ていただけだった。
『ふっ、まあいい。俺はシルバーを迎えに――――』
迎えに行くと言い切る前に、マンションの入り口からシルバーちゃんが武器と荷物を持ってやってきた。
『アクタさん』
『迎えに行く必要はなかったな。ちょうどいい。出発する――』
『しゅ、出発する前に……お、お願いがあります』
緊張気味に口を開くシルバーちゃんは落ち着かない様子でそう言った。
『なんだ?』
後ろを見ると、シルバーちゃんに続きマンションの入り口から、同じく武器と荷物を持ったゴールドちゃんとブロンズちゃん (ついでにみどりちゃん)が現れた。
『なぜお前達も支度している?』
ゴールドちゃんは一旦深呼吸をし、アクタの前に立った。
『その、お願いってのはさ……アタシ達も一緒に連れていってほしいんだ!』
『ほう』
第72話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、9日~11日に投稿予定です。
宜しくお願い致します。




