第68話『変わり果てた姿』
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第68話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2022/09/10改稿しました。
『……』
シルバーちゃんは呆けていた。
さっきまで目の前にいた例のあの娘が自分の名前を呼び無事を願われて消滅した事よりも、ひとまず1つの危険が消えたことに安堵し、そのまま眠るように地面に倒れた。
――その後気付いたら見知らぬ部屋のベッドの上で眠っていたようで、そんな情けない自分を心配してくれたゴールドちゃん、ブロンズちゃん、アミさん、みどりちゃんがずっとシルバーちゃんのそばに居てくれたようだ。
どうやらシルバーちゃんとダスト以外の、ゴールドちゃん、ブロンズちゃん、アミさん、みどりちゃんは盗賊団のアジトに入った時、バラバラにはならず4人で固まっていたようだ。
そこにいなかった2人の安否を心配しながら彼女達は別のフロアで有象無象を倒していると、偶然シルバーちゃんが居る結界の近くを通り、ブロンズちゃんは結界越しにシルバーちゃんの心を読み、居場所を察知したのだ。
この時点でブロンズちゃんは、ダストが殺されてしまった事を知り、悔し涙を流したという。
その後ゴールドちゃんとアミさんは、超脳筋アタックで結界を破壊し眠っているシルバーちゃんを回収してからアジトを脱出した。
――そして現在――
『と、これが300年前、ダストさんがいなくなってから盗賊団のアジトで起きた出来事です』
『なるほどね……ねえ緑髪の女騎士ってもしかして……』
『おそらく、バレスの事だろうね』
『やっぱりそうか……ということは、バレスさんは……』
『確認はしてないけど、おそらくもう……』
『そう……ですよね……』
先に飛び出してしまったバレスさんの事は気がかりだった。アジト内で再会して和解できればと思っていたが、それももはや叶わぬ願いとなってしまった。
『もしかして、シルバーちゃんが目を覚ました時のその見知らぬ部屋ってここの基地の事ですか?』
『ああそうだよ。どうやらバレスの奴、私達がアジトに潜入する前にとにかくめちゃくちゃに暴れてアジトを半壊させたために、偶然ここの基地への道が繋がっている形になったんだ』
『へぇ……』
『まあ、バレスのバカが、そのアジトが半壊してたせいで出口が封鎖されていてやむを得ずこの基地へ移動したんだけどね!』
アミさんは笑いながら、でも声色に怒りを含めながらそう言った。バレスさんの結界や、アジトの出口が封鎖されてしまったことを根に持ってるようだ。だが、それ以上にかつての仲間が先立たれてしまった事に対して、悲しい感情に苛まれている。
『その後……この基地に移動した後からはどうなったんです?』
『ここからは、私が説明するわ』
『よろしくね』
シルバーちゃんから説明係のバトンを受け取ったのは、ブロンズちゃんだった。
『基地に移動してからしばらく経って、外の様子を見るために、私とアミお姉ちゃんはエレベーターに乗って、地上に出てみると……そこにはね……まーちゃんが変わり果てた姿で人を襲ってたの……』
『変わり果てた姿……?』
『えぇ……ドラゴンよ』
『ドラゴン……うっ……』
“ドラゴン”という単語が耳に入った瞬間、ズキッと頭痛が走ったと同時に、かつての映像が頭の中に流れた。
その映像の内容は……俺とミユウとダイゴとアレンとブラックとプラチナと共にドラゴンと戦い、見事撃破した、というものだった。
そうか、思い出した。ミユウとダイゴは流星団の隊員。そして俺の大切な仲間だったんだ……。
夢と似たような体験だったとはいえ、なぜ忘れてたんだろう……ダークネスが記憶を消したのか?
俺はミユウとダイゴに視線を送るが困惑されてしまった。まるで喋った事もないクラスメイトのような反応をされて、ちょっと心がチクリとしたが、それでもこうして再会できたこと、なにより2人が生きていてくれた事に、そっと心の中で感謝をした。
『お兄ちゃん……?』
『あ、何でもない、続けて』
『そう……分かったわ』
ブロンズちゃんは心を読めても、俺の頭の中に流れてきた“映像”までは見れないようで、あくまで俺とミユウとダイゴがかつて仲間だったという事しか分からない。しかし、それ自体はなかなか衝撃的な事実ではないだろうか。ブロンズちゃんもその事について聞きたそうに視線を送ってきているが、その気持ちを堪えてくれたのか先に説明を始めてくれた。
ありがとうブロンズちゃん、後で詳しく話すからね。
俺の心の中の感謝の気持ちを読んでいるのか分からないが、ブロンズちゃんは淡々と説明を続けた。
他の皆も過去を振り返る気持ちで、真剣に聞き入ってる。
――300年前――
ドラゴンとなった魔王が火の国の人々を襲っていたところを、ブロンズちゃん、アミさんが目撃した。
このファンタジーな異世界であっても、ドラゴンは殆ど都市伝説級のモンスターであり、滅多にお目にかかれるものではない。なのでドラゴンが襲ってくるなんて当然2人には想像もつかなかったため、状況を理解するのに数分の時間を要した。
この時はまだあのドラゴンがまさか魔王だとは思わず、2人はドラゴンを討伐しようと動き出したその時だった。突然目の前に現れた、全身マントを被った謎の男がドラゴンに向かってこう言った。
『マーブル、お前何をやっている?』
謎の男がドラゴンにそう言い放つと、ドラゴンはまるで飼い主に忠実に従う忠犬のように大人しくなり、謎の男の元へ静かに寄ってきた。
『マーブル……!?』
ブロンズちゃんもアミさんはマーブルという名前に聞き覚えがある。それもそうだろう。マーブルとは魔王の名前だ。普段はそう呼んでいるわけではないが、その名前自体は魔王本人から事前に聞いていたのだ。
『その声……あ、あなたは、もしかして!』
アミさんは謎の男の声を聞き、頭に浮かんでいる名前を呼んだ。その謎の男の名は――
『アクタ……団長……?』
第68話を見て下さり、ありがとうございます。
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