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第66話『夜景がとてもキレイだった』

お待たせしました。

第66話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


投稿が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。

※2022/09/07改稿しました。


 目を覚ますと、全く見慣れない天井が視界(そこ)に映った。

 

 無論今使ってるベッドと枕も魔王城のとは違い、寝心地があまり良くない。首と腰と背骨に多大なストレスを感じてしまう。


 それはまあ百歩譲っていいとして……ここはどこだっけ? 


 寝起き直後の頭にムチを打って、なんとか経緯を思い出した。


 あぁ、そうだった……確か俺とブロンズちゃんは、さっきアミ先生の雷を喰らって、廊下に立たされて、ぶっ倒れたんだったな。


 あれから、何時間経っただろう?


 俺は自分を暖かく包んでくれた布団を出て、他の皆の様子を見に行った。


 皆が集まりそうな場所は、食堂くらいしか思い付かなかったので、とりあえずそこに向かうことにした。


 食堂のドアを開けると、グツグツとビーフシチューを煮込んでいる匂いが鼻腔をくすぐる。


 厨房を見てみると、そこにはビーフシチューをかき混ぜてるゴールドちゃんと、野菜を包丁で丁寧に斬っているシルバーちゃんの姿があった。


『お、ダストっち、起きたか!』


『うん、起きたよ……他の皆は?』


『用事があるってよ』


『そうなんだ』


『ダストっちはどうする?』


『え? どうするって?』


『この基地じゃあ、なんもやることないから、皆外に出て、散歩やら探検とかしたりするんだよ』


『外か……モンスターが出ないか心配だなぁ……』


『ここらへんはモンスターいないから大丈夫だ、ただあんまり遠くに行き過ぎるとさすがにモンスターが出るから、そこだけ注意な』


『うん分かったよ、じゃあ軽く散歩に行ってくるね』


 俺はそう言い残し、食堂を出てエレベーターに向かう。


 もうすぐ来るであろうエレベーターを待っていると、めちゃくちゃ可愛い声で、俺を呼ぶ声が聞こえた。


『あのーダストさん』


『ん?』


 声のする方を振り向いたが、誰の姿も見えず視界に映ったのは、ただ薄暗い廊下だけだった。


『え? どこから声が……え? なんで、なんで? まさか……幽霊!?』


 突然のホラー展開に精神を恐怖に支配され、その場から逃げようかと考えていたタイミングで、エレベーターが開く音がした。


『ひえっ! あ、あぁ、エレベーターか』


 たかがエレベーターの音だけでビビってしまった……聞き慣れた音でも、暗い中で音がすると驚いてしまう。


 だが無理もない。声が聞こえるのに姿が見えないというホラー。しかも、このお化け屋敷にありそうな薄暗い廊下で怪奇現象が起こっている。この状況を怖がらない人間はそういないだろう。


 とりあえずエレベーターへ乗ろう。そう思った矢先にまた声が聞こえた。


『ダストさーん!』


『ひえええ、何なんだよ!』


 エレベーターが到着しているのにも関わらず、俺は恐怖のあまり1歩も動けず、その場に立ち尽くしていた。


『ダストさーん? エレベーター乗らないんですか?』


『怖くて身体が動かないんだよ! ていうか、君は何者!?』


『ええ!? 私の事、()()()()()んですか?』


『忘れた……?』


 “忘れた”というワードに気を取られていると、謎の声の主はぴょんぴょんと身軽に俺の肩に乗っかってきた。


『なんだ、みど……えっと……ああ! ミドルネームちゃん!』


『み・ど・り! ですぅ!』


 存在だけではなく名前も忘れられたみどりちゃんは、可愛らしく頬を膨らませた。


『あぁ、ごめんごめん』


 可愛いなこの生物、もっと怒らせて弄ぼうかな。


『全く……ところでダストさん、今からお出かけですか?』


『うん、ちょっと散歩に行こうかと』


『私もついていっていいですか?』


『いいよ』


『ありがとうございますぅ』


 猪のみどりちゃんが仲間になった。


 肩にみどりちゃんを乗せてると、まるでモンスターと共に冒険に出る、某黄色いネズミが出てくるかの有名なゲームを思い出して、俺は少し浮かれていた。


『エレベーター乗りましょうか』


『あ、うんそうだね』


 長らく待たせすぎたエレベーターを申し訳なく思いながら、足を踏み入れた。


『えっと、確か地上に上がるには普通に1階押せばいいんだっけな』


 俺は1と記されたボタンを押して、地上へ向かう。


『みどりちゃん?』


 エレベーターに乗った後からやけに静かだと思ってら、横になってぐったりしていた。どうやらエレベーターに酔っているようだった。


 そういえばみどりちゃんは乗り物酔いしやすいんだったな。アミさんのク・ルーマに乗ってた時もそうだったな。


 ――300年前火の国へ向かって行った時の事を頭に思い浮かべた。あの時もみどりちゃんはク・ルーマの揺れ具合に酔って、瀕死寸前の状態だったな。


『懐かしいなぁ』


『うぷっ……ぎもぢ悪いでずぅ』


 みどりちゃんは真っ青な顔で、今にも胃の中の物を全てブチまけそうな勢いだ。


『あともうちょっとで着くよ』


『はぃ……なんどが耐えまずぅ……』


 それから、やがてエレベーターの扉は開かれ、すぐにみどりちゃんに外の空気を吸わせた。


『外が暗いな……もう夜なのか……雨も上がってるし』


 どうやら俺が寝てる間に大分(だいぶ)時間が経っていたようだ。


 他に人も住んでないから当然どの建物も電気がつかなくて、夜の廃墟の街はかなり暗かったが、ホタルのような小さな光が廃墟の街を明るく照らしていて、まるて街そのものはまだ生きているような神秘的な何かを感じさせてくれた。


『外の空気……美味しいですぅ』


 エレベーター酔いも覚めたみどりちゃん。外の風に当てられて気持ちよさそうだ。


『あ、そうだ、ダストさん! 良かったら私に()()()この廃墟となった火の国を見て回っていきませんか?』


『みどりちゃんに乗るの? どうやって?』


『見てて下さいね……巨大化魔法“序”!』


 みどりちゃんは空に向かって大きく跳躍し、全く聞き慣れない名称の魔法を発動する。


 最後の“序“って何だ?


 様子を見てみると、みどりちゃんの身体全体は白く光りだし、見る見るうちに300センチ程のかなり大きな猪へと変貌を遂げた。


『どうですかー!』


『お、おお……』


 突如視界が猪の体躯で占められた。


 ふさふさで柔かそう……なんて感想よりも、どんな物も噛み砕きそうな大きな牙に、あらゆる生物を威嚇する鋭い目つきに恐怖を感じた。


 いくら中身がみどりちゃんでも、これはあまりにも存在感が強すぎる。外観だけで言うなら獰猛という言葉が1番しっくりくる。


 敵じゃなくて良かったと心の底から安堵した。


『ダストさんー! 私の背中に乗って下さい!』


 厳つい見た目と反した、とろけるようなキュートボイスを聞いて頭が(バグ)りそうだったが、いつも通りのみどりちゃんとして接した。


『わ、分かった』


 だがこのままでは高すぎて跨がれないので、みどりちゃんは跨がれるように伏せる体勢を取ってくれた。


『ありがとう、よし乗れたよ』


『それじゃあ……走りますよ! しっかり掴まってて下さいね!』


『えっ、走るの?』


『はい!』


『最初はゆっくり――――』


『行きますよ!』


 みどりちゃんは俺の話など一切聞かずに、超スピードで夜の暗い街中を駆けて行った。


『うおおおおおおおお!』


 ダダダダダダと高速で地を蹴る。


 小さな光といくつもの建物が次々と視界を通り過ぎる。


 向かい風に顔を歪ませながら、俺はその景色から目を離さなかった。


 夜の景色はなんて美しいんだろう。


 そう思わずにはいられなかった。


第66話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、24日~27日に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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