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第64話『なら、夢じゃないわ』

お待たせしました。

第64話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


※2022/09/05改稿しました。

『お、そうだ、この基地のメンバーを紹介するぞ!』


 バンドのメンバーを紹介するぞ! みたいなノリでそう言い出した。


 単に基地のメンバーを紹介したいだけかもしれないが、わざわざ紹介するってことは、俺の知らない人もいるのかな?


『ええ、この基地には私達含めて8人住んでるの。お兄ちゃんが思った通り、まだ会ったことがない人もいるわ』


『まあ、みんなしょっちゅう外出してるから、なかなか全員揃う事ってあまり無いんだけどな』


『定期的な報告や重大な報告がある時は、極力全員集合するようにはしてるんだけどね。それでも、やっぱり集まりは悪いのよね』


『まあ、ダメ元だけど全員呼んでみようぜ!』


 ゴールドちゃんは、何らかの魔法で手のひらから球状の光を出現させると、すぅぅぅぅぅと息を吸い、それに向けて爆音級の声を発した。


『みんな!!! 新しいメンバーを紹介するから、速やかに食堂へ集合だああああああああ!!!!!!』


 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!


 うるせええええええええええええええええ!!!!!


『お姉ちゃん、声が大きいよ~』


 あまりの爆音にシルバーちゃんとブロンズちゃんは思わず耳を塞いだ。俺は現在、腕がこのザマなので耳を塞ぐことすらできずに鼓膜という壁をぶち破られた。


 とうとう耳まで死んだかと思ったら、割とすぐに回復したので良しとしよう。もう二度とやってほしくないけど。


 ところでさっきのゴールドちゃんが出した光はあれかな? 通信魔法かな? みんなって言ってたからグループ会話的な奴かな? ぼっちの俺には全く無縁だったアレかな?


『そうね、ぼっちだったお兄ちゃんにはまるで縁がないグループ通話よ』


 ブロンズちゃんは、答えなくていい質問にわざわざ棘がある言い方でそう答えた。傷つくからやめてくれ。


 ――その後、俺はシルバーちゃんとブロンズちゃんに身体を引きずられながら食堂へ案内された。


『ダストっち、ここが食堂だ。魔王城と比べると狭いけど我慢してくれ!』


 うん、分かった。


『お兄ちゃん、分かっただって』


 食堂の中は長方形の木製のテーブルが4つと、木製の椅子が1つのテーブルにつき4つある。天井と厨房側には1つずつ電球があり、厨房には洗い場と食器棚と冷蔵庫とオーブンとコンロがある。


 狭いけど、割とひと通り揃ってるので料理する分には不便は少なそうだ。それにこの終末世界にありそうな秘密基地感が俺の感性を刺激する。これはこれでいいかも。


『そろそろ、みんな来るだろうからちょっと待ってな。ダメ元だけど』


 全員来なかったらずっと待つことになるのか?


 顔を合わせたこともないネッ友も初めて会うような(俺にはそんな経験無いが)緊張感に襲われながら少し待ってみると、見覚えのあるとっても残念そうなアホ面の猪が入ってきた。


『ゴールドさーん、新しいメンバーって……あなたはもしかして、ダ、ダダダダダダダストさん!?』


 “ダ”が7個多いぞ、みどりちゃん。


『嘘でしょ!? ええええええええ!?』


 アホ面の猪女は、まるで幽霊でも見たかのようなリアクションを取ると、足を滑らせて身体がひっくり返ってしまっていた。痛そう。


『痛てててて……』


 うん、この残念な感じ……みどりちゃんだな。間違いない。


『そうよ、お兄ちゃん。言うまでもないけど彼女はみどりちゃんよ』


 やっぱりそうなんだね……久しぶりだね、みどりちゃん……相変わらず残念な感じは変わってないね。


『お兄ちゃんが、相変わらず残念だって』


 だからわざわざ口に出して言うなっての。


『ちょっと! 久々の再会なのに、残念って酷すぎませんかぁ! ってダストさん、その格好どうしたんですか!?』


 みどりちゃん落ち着いて……ちょっと色々あってね……みんな来てから説明するよ……ブロンズちゃん、お手数かけるけど……代弁よろしくね。


『ええ、大丈夫よ』


 ありがとう。


『その代わり、ちょっと落ち着いたら私とデートしてね』


 分かった、約束する。


『楽しみにしてるわ♪』


 俺も楽しみだな。


 ――それから少し時間が経つと、見覚えのあるポニーテールの美女が食堂に入ってきた。


『え……まさか……ダスト君!?』


 その声……その顔……そして……その巨乳……あぁ、懐かしい……アミさんだ。


『お兄ちゃん?』


 巨乳という言葉に反応したのか、ブロンズちゃんが俺をギロリと睨んできた。ごめんなさい、アミさん相変わらずのすごい胸部だったもので、つい……。


『この変態……! もう知らないんだから!』


 ブロンズちゃんは頬を膨らませて、プイっとそっぽ向いてしまった。怒り方可愛すぎかよ。


『もう……お兄ちゃんのバカ』


 ブロンズちゃんは可愛すぎかよと言われて、嬉しいのか恥ずかしいのか目を逸らしつつこちらをチラチラ見ている。


 俺がそんなブロンズちゃんの可愛い仕草を要観察しているのを尻目にアミさんは無言で俺を抱きしめた。


 アミさん……胸が当たってますよ……。


『ダスト君……300年もどこ行ってたんだよ……心配したんだよ!』


 アミさんはそう言ってポロポロと涙を流していた。俺とはまだ短い付き合いのはずなのに、まるで俺を本当の家族のように接してくれた。この抱きしめる力の強さがそれを物語っている。少し痛いです。そして柔らかいです。ありがとうございます。なんて思ってるとブロンズちゃんが鬼の形相で俺を睨みつけてきた。ごめんなさい。


 アミさんも、心配かけてすみません。


『お兄ちゃんが心配かけてすみませんだってー』


 ブロンズちゃんは、やさぐれながらそう代弁した。


『もう、どこにも行くなよ……』


 はい、もうどこにも行きません……これからも皆一緒です。


 感動的なシーンの最中で、更にここのメンバーであろう2人がこの状況に戸惑いながら、恐る恐る食堂に入ってきた。


『お、()()っちに、()()()っちも来たな! あとは……』


()()()なら、まだ帰って来れないそうよ』


『そっかー……あ、ミユっち、魔力まだ残ってるか?』


『え、えぇ、残ってますよ』


『おお、それならここにいる新メンバーのダストっちを治して欲しいんだ』


 重篤な状態の俺を見て驚いたミユっちさんは首を縦に振り、俺の身体を診察し始めた。


 どうやら、シルバーちゃんが言っていた凄腕の治療魔法使いは、この小柄の美少女のミユっちさんの事だったらしい……ていうか、ミユっちさんに、ダイゴっちさん……どこかで会ったような……気のせいか?


『治せるか?』


『そうね、特に変な呪いにかかってるわけでは無さそうなので、今すぐ治す事ができますよ』


 ミユっちさんがそう言うと、ゴールドちゃん達は我が身の事のように泣いて歓喜した。そんな彼女達に俺も目尻が熱くなった。ありがとう!


 これで俺の身体も治るみたいだし、本当に良かった……良かったああああああああああああ!!!


『じゃあ今から治癒魔法をかけるので動かないで下さいね。では、失礼しますよ。()()……ん?』


 ん? 今、ミユッちさん……俺の事、隊長って言わなかった?


『ん? 隊長って何だ?』


『分かりません……何故か、この人の事、隊長と呼んでしまいました。それに……どこかで会ったことがあるような……』


 ミユっちさんも俺と同じ事を思ったようだ。


『ミユウも、()()()()()、実は俺もその人と会ったことがあるような気がするんだ』


 ダイゴっちさんも、ミユっちさんと同じく、俺と会ったことがあるような気がするそうだ。俺も同じだ……あぁ……なんかゴールドちゃん達とは、また()()()()()()を感じる……。


『ねえ、お兄ちゃんもミユウちゃんとダイゴ君と同じく、どこかで会ったことがある気がするそうよ』


『そうですか! それはもっと話を聞かせてもらいたいですね……あ、まずは治療が先決ですね、失礼しました。今、治療します』


 ミユっちさんは俺の頭に手を置くと、暖かい白い光が出現し、やがて俺の身体全体を優しく包み込んだ。


 あぁ……なんだか身体全体が軽くなってきた……お、手足も動けるようになってきた……喉も治ってきてる気がする……喋ってみよう。


『あ、声が……出た……声が出た!』


 俺は約300年ぶりに声が出た感動のあまり、思わず号泣してしまった。


『……!』


 ブロンズちゃんは何も言わずに、俺を再び優しく抱きしめてくれた。


『ごれ、ゆめじゃないよね!?』


 俺がそう言うと、ブロンズちゃんは俺の頬をつまみ、夢じゃない事を証明してくれた。


『痛い?』


『うん、痛い』


『なら、夢じゃないわ』


 ブロンズちゃんは、これまでにない最高の笑顔でそう答えてくれた。


第64話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、18~20日に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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