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第63話『俺は、みんなが大好きです』

お待たせしました。

第63話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


※2022/08/20改稿しました。

 その後、動けない上に喋れないお荷物同然の俺をシルバーちゃんが担いてくれて、ある場所へ向かおうとしていた。


 身体の小さいシルバーちゃんが俺を担ぐなんて……と思ったけど、よく見るとシルバーちゃんの身体は前よりほんの少し大きくなっていた。


 さっき300年と言っていたが、寿命を迎えてないどころか、あまり歳を取ってないように見える。何かそういう便利な魔法なのかな。


『ダストさん、大丈夫です! 実は私達の基地には、凄腕の治療魔法を使える方がいらっしゃいますので、ダストさんの手足も喉も治りますよ!』


 シルバーちゃんは俺を安心させる為に笑顔でそう言った。俺は全く喋れないから、頷くことしかできない……ごめんね……。


 俺は喋れない事の悔しさともどかしさに思わず一筋の涙を流した。


『ダストさん……泣かないで……』


 俺が涙を流したからか、シルバーちゃんまで泣きそうな顔をしてしまった。そんな顔をしないでくれ……って俺がそういう顔をしているからか……でも……ごめん……俺……もう……笑うことを忘れてしまったんだ……。


 俺は声もなく大粒の涙を流した。涙を拭きたいのに手が動かないから拭けない……涙が頬を通って気持ちが悪い。


 それを見兼ねたシルバーちゃんが、ハンカチを取り出し、俺の涙を拭いてくれた。ありがとう……と言おうとしても、声が出なかった。


『ダストさん……()()()()()()()()()()


 泣いてもいい……()()()シルバーちゃんが俺にそう言ってきた。


『覚えてますか? 300年前、私が泣くのを我慢していた時……あなたが私に言ってくれた事ですよ』


 俺は涙を流しつつ、首を縦に振った。


 あぁ、そうだね。泣くのを悪だと言われてきた君が泣くのを我慢している。俺はそれが、その姿を見るのが、辛かったんだ。だから俺はその正義感(せんのう)を解いたんだ。


『今でも忘れません。あなたが、その言葉で私を救ってくれた事を、あの時感じた暖かさを……』


 シルバーちゃんはその後、大粒の涙を流したと同時に雨粒が涙をさらっていくように……頬を通り、地へと落ちていった。


 それからは、ただ無言で基地まで歩いていった。


『あ、ダストさん、着きました。ここが私達の基地です』


 顔を上げて見ると、ただの廃墟のマンションだった。ここも、とても誰かが居るようには見えないほどに寂れている。


『一見、ただの廃墟のマンションですが……まあ、説明するより、中に入って見てからの方が早いですね』


 シルバーちゃんがそう言いながら、オートロックを解除し、中に入ると、階段とエレベーターが1つずつあった、ここまではごく普通のマンションである。


 シルバーちゃんはエレベーターのボタンを押すと、すぐに扉は開き、エレベーターの中へ入った。その後、シルバーちゃんは、目にも止まらぬ速さでいくつかの数字のボタンを押した。


『これから、地下に行きます』


 シルバーちゃんが、そう言うとエレベーターが閉まり、あるはずの無い地下へエレベーターがガタガタと不安定に揺れながら動き出した。


『ダストさん、大丈夫ですか? 具合悪くないですか?』


 正直、揺れに酔って気持ち悪いけど、俺はこれ以上シルバーちゃんに心配させたくないという思いがあったので、縦に首を振った。


『具合悪くなったら、首を横に動かして下さいね。って、もう着きましたね』


 エレベーターは開かれた。地下の内装はというと、所々錆びているコンクリートの壁、9つのボロボロの扉、そして切れかけの電球……と、まさに世紀末の地下室の基地というイメージにふさわしい場所だった。


『お、シルバーか? おかえりー! 何か見つかったのか……って、まさか……!?』


 突然ドアの向こうから現れた金髪のポニーテールの美少女が、血相を変えてこちらに来て俺の顔をガン見していた。


『あぁ……間違いない……()()()()()だ……』


 あぁ、この元気そうな可愛い声……ゴールドちゃんだ。


 懐かしいな。シルバーちゃんもだけど相変わらず美少女だね、そして、やっぱりシルバーちゃん同様身体も少し大きくなってるし……あと胸も少し大きくなってる気がするよ。


 俺がそんな事を考えていると、近くのドアからバァン! という音と共に、メガネをかけた銅髪の美少女が現れた。


『はぁ……はぁ……()()()()()……』


 間違いない、今度はブロンズちゃんだ。多分、俺の心を読んで、来てくれたのかな、それにしてもブロンズちゃんも美少女だね。メガネも似合ってるよ。


『もう! 久々の再開なのに何考えてるのよ……。それよりも、ずっと……ずっと……ずっと……300年も探し続けたのよ……どこ行ってたのよ! この変態バカお兄ちゃん!』


 ブロンズちゃんがそう言った後、ゴールドちゃんと一緒に、その場で泣き崩れた。


 ゴールドちゃん、ブロンズちゃん、シルバーちゃんも、心配かけてごめんね……もう、どこにも行かないからね、ずっと一緒だよ……。


『うん……もう離さないからね……ゴールド姉も、シルバー姉も、ずっと一緒よ』


 あと、今の俺は見ての通り、動けないし喋ることもできないんだ。ブロンズちゃん、面倒だろうけど俺の心を読んで、皆に伝えてくれる?


『いいわよ……お兄ちゃんも大変だったのね』


 ブロンズちゃんは涙目で俺の頭を優しく撫でた後、俺を優しく抱きしめた。


 あぁ……ありがとう……ブロンズちゃん……。


『ダストっち』


 ゴールドちゃんも、ブロンズちゃんと一緒に俺を抱きしめた。暖かいなぁ……。


『シルバーも来いよ』


 ゴールドちゃんはシルバーも一緒にと手招きしたが、シルバーちゃんは恥ずかしがってもじもじしている。


 シルバーちゃんも俺を抱きしめて、お願い。


『お兄ちゃんからのお願いよ、シルバー姉こっち来て』


『わ、分かった』


 シルバーちゃんは照れながらも、ゴールドちゃんとブロンズちゃんと一緒に俺を抱きしめた。


 俺はこの暖かさに感極まって涙した……あぁ……300年間……ずっと……ずっと……君たちに……会いたかった、そして……触れたかった……。


『ダストっち』


『ダストさん』


『お兄ちゃん』


 今では俺を呼ぶ声がちゃんと聞こえる。


 ああ……毎日、美味しいご飯を作ってくれてありがとう、俺と一緒に楽しく過ごしてくれてありがとう、俺と出会ってくれて……ありがとう!


 ゴールドちゃん、シルバーちゃん、ブロンズちゃん、俺はみんなが大好きです。



第63話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、16日か17日に投稿予定です。

宜しくお願い致します。


これにて1章は終わりです。次の話から2章になります。

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