第619話『何度転生しようとも』
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《ゴールド視点》
突然現れた謎の女ミストに未来を救う為に重要な任務を任された。ミストのことは信じているが、一万年後とか神とか情報量が多すぎて頭が追いつかねえ……。
とりあえず今何をすればいいかミストに聞いたら『今は何もしなくていいよ』と言われた。どうやらアタシが動くタイミングというものがあるらしい。ある人物がいずれ私に指示するとのことで、それまでは待機だそうだ。
その後も色々と詳細を話してくれたが、ミストはそれが終わると役目を終えて満足したのか、ホッとした後『じゃあまたね』と言って消えていき、それと同時に霧も晴れた。
『は? アイツどこ行った?』
周囲を見渡しても、いつもの光景が広がるだけ。特に目新しいものはなく、まるで最初から何もなかったかのように消えていった。
『消えやがった』
追いかけてやろうかと思ったが、これは追いつけるものではないと直感で思った。
『はぁ、正直まだよく分かんねえけど、とりあえず一歩一歩動いていけばいいか』
そうして私は世界が滅ぶまでの日々を過ごした。
しかし――転生。その時がやってきた。
朝起きて、いつも通りに家を出ようとしたら――闇を歩いていた。どうやらゼウスという神がアタシ達を大陸ごと葬ったらしい。あまりにも一瞬だったので痛みすら感じず、余儀なく愛する妹達やディーン先生達と離れることとなった。
正直すげえ寂しかったが、未来で会えることは決まってるらしいから、特別悲しみはしなかった。ただちょっと長旅に行ってくるだけだ。
『銀河、銅、学園長、あおいさん、パーシーせんせー、そしてディーン先生。いつかまた会おう』
――生まれ変わった次の世界は、宇宙だった。何を言ってるのか分からねえと思うが、とにかく宇宙だ。
どうやらこの世界線は宇宙船で日々を過ごしながら星を転々と回るのが主流のようだ。アタシの家族もそれに倣って宇宙船で暮らしている。
この世界のアタシには姉妹がいない。父ちゃん母ちゃんも別の人だし、アタシの名前も白鳥黄金ではなくマリー・ホワイトになってた。もう別の国の人じゃねえか。
前世の記憶がある私は妹達を探しつつ、慣れない日々を過ごした。まあそれなりに悪くない時間だった。宇宙というあまりにも風変わりした空間だったが、同じ宇宙船で友達もできたし、戦争とか悲しいことはほとんどなかった。
食料についても常に宇宙船に大量に積んであるし、それが尽きる前に他の星に停留して調達できるし、娯楽もあるし、何一つとして不自由はなかった。
でも、そこに妹達やディーン先生達はいなかった。
結局私は何の目的を達成することができないまま、寿命を終え、人生を全うした。
――前世の記憶保持から二度目の転生。
今度は剣と魔法が全ての世界だ。完全実力主義で強いものが正義、弱いものは虐げられて当然のそんなクソみたいな世界だ。
田舎で生まれたアタシは、姉妹こそいなかったものの家族と仲良く過ごしていた。しかし、そこにエリート貴族が現れ、アタシ達から金を巻き上げようとした。それが許せなくて、アタシはそいつを殺してしまった。
それはまぐれだったのか、アタシの元々の実力なのかは知らないが、思いの外簡単に殺せた。前世でも前々前世でも剣を振ったことはない。にも関わらず、その辺にある鍬でソイツの頭を殴ったら、こうなったわけだ。
貴族を殺した罪で裁かれると思ったが、幸いにもこの世界は実力主義だ。もちろん罪は背おうが、アタシに実力があるということで、国の特別遊撃隊に入ることとなった。そこはアタシのような訳ありで実力がある者が集まるところだ。要は問題児集団。アタシはそいつらと苦楽を共にし、国を守っていく。何だかんだ楽しかったよ、だって遊撃隊の連中みんな変わってるけど良い奴だから、アタシもこいつらと一緒ならと思ってたわけだ。
でも、ある時遊撃隊は全滅。強大な敵に打ち破られ、国も滅んで、やがて世界は終焉へと導かれた。
――転生。次はどの世界だっけな? 忘れちまったよ。だって、数え切れないほどの世界を回ったからな。記憶保持の魔法がかけられているとはいえ、記憶力自体はアタシに委ねられてる。つまり覚えてねえもんは覚えてねえ!
だから端折るわ。
最後、今アタシがいるこの世界。ここでようやくシルバーとブロンズと姉妹になり、一万年前にはいなかった両親とも出会えた。だが、幸せな家庭は長く続かなかった。正義教団のせいでな。
そこからはまあ何やかんやあって、アタシ達はまーちゃんに拾われて魔王城でコックをやらせてもらうことになったわけだ。え、アイドルコックだって? やめろよ! アタシはアイドルって質じゃねえんだ! 可愛いとか言うなぁ!
……まあそれはひとまずいいとしてだ、良くないけど。実はこの世界に来た頃には、記憶保持の魔法が切れかかってたんだ。だから使命を忘れかけていたんだが、妹達の顔を見ることで思い出して、何とか記憶の隅に置くことができた。
それからはまあ色々あった。まーちゃんが突然行方不明になったり、日の国の住民が消えたり、仕方ないからアジトに籠もったり、アクタ師匠にケンカ吹っかけたり、ダストっちを探しに行ったら正義教団のクソ野郎共に捕まったり、そしたらダストっちが助けに来てくれて……本気で嬉しかった。
ディーン先生。アンタはどんな状況だろうとアタシを助けに来てくれる。この世界で初めて会った時も、アタシがどれだけ幸せを感じたことか。もう二度と離れたくないし、離したくない。
アタシはディーン先生がいないとしんどい。生きた心地がしない。一度離れてしまった時はそうだった。
そして再会した時はマジで心がどうにかなりそうだった。まるで光が世界を照らしたようにアタシの世界は明るくなった。
ダストっちは、ディーン先生は、アタシの初恋。
でもそんな感情は一度殺さなければならない。アタシにはある任務がある。それはダストっちを過去に送る為に殺害すること。永遠に会えないわけではないとはいえ、愛する人を殺すのは辛かった。
だけど、今のアタシは心を殺すのも本当の表情を出さないようにするのは得意だ。あ、でもいやらしいことだけは慣れないな。転生前の記憶も含めて実質一万年生きているから経験は誰よりも豊富で色んな芸当ができるようになったが、パンツ見られるのだけはどうしても恥ずかしい……あと可愛いって言われるのも。
でも、それ以外ならどんな場面でも落ち着いて行動できる! だから心が読めるブロンズにもアタシの真意を読むことはできなかった! はずだ! 多分!
――今、目の前にはダストっちがいる。これまでの経緯を一万年前から説明してるところだが、それももうじき終わる。
『――というわけだダストっち。いやディーン先生』
説明を終えたアタシは更に長年の想いを込めた言葉を添える。
『好きだ! アタシの恋人になってくれ!』
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