第618話『霧の中の真実』
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《一万年前のあの日》
深い霧の中で突然、黄金の前に現れた霧の女神ミスト、彼女は未来からやってきて彼女に重大な使命を授けに来た。
『なんだこれ……』
愕然とする黄金。あり得ざる光景についていけないようだ。
『これはね――霧魔法で君に蜃気楼を見せてるの。まあ要するに幻のようなものだよ』
『これ全部幻なのか?』
これらは全て未来で起こる出来事を時系列順に並べて映し出している。まるで歴史の博物館のように。
『そうだよ、すごいでしょ!』
ミストは自慢げに言う。
『ああ、マジですげえ……まるで夢みたいだ』
というか、これ夢じゃね? と思う黄金は頬をつねるという定番中の定番行為をやった。
『……普通に痛えな』
黄金は冷静に感想を口に出した。
『夢じゃないよ。私がここにいるのも、さっき見せた未来も。全部、全部現実になるんだよ』
ミストは淡々と語る。
『マジかよ……』
黄金は驚愕の表情を浮かべる。
『見ず知らずの私の言うこと信じてくれるの?』
突然霧の中に閉じ込めて未来の話をするような者を信じられる者は少ないだろう。
『ああ、そりゃこんなもん見せられちゃな……それにアンタに悪い気は感じない。何となく分かるんだ』
信じられる一定の根拠はあるものの、黄金の勘がミストを信頼に値すると感じているようだ。
『そっか、信じてくれて嬉しい。ありがと』
にこやかにお礼を言った。
『それで、そんな重要なことを何でアタシに話すんだ?』
黄金はこの時代のオーガスト・ディーンとの関わりがあひとはいえ、ほぼ一般人であり、特別な力はない。そんな彼女が一体何で選ばれたのか見当がつかない。
『君は一万年後に起こる重大な戦争に関わっているからだ』
『重大な戦争だと……?』
ミストは頷いた。
『世界を守る戦士の内の一人、それが君だってこと。そして、その戦士の中で黄金ちゃんが最も適していると判断したから』
『アタシが……世界を守る戦士……全然想像つかねえな』
ただの一学生である黄金が剣を持って戦うなど、もはや妄想の域だ。ミストを信じているとはいえ、かなり現実離れした発言についていけない様子だ。
『やっぱ信じられないよね』
寂しそうにミストはそう言った。
『いや、ミストの言うことは信じてる。ただこんなアタシがまさかそんなゲームの勇者みたいなことしてるなんて、と思ってな。あとさらっと流したけど一万年後というのも意味分からんと思ったわ。アタシ余裕で死んでるだろ』
『そこは君の記憶に転生後も記憶を保持できる魔法をかけるから大丈夫』
『何だその魔法?』
『未来には今とは比べものにならないくらい多種多様の魔法があるんだ』
『そうなのか。ああ確かにアンタが見せてくれた幻の中に奇妙なことやってる奴がいたが、そういうことか』
ミストの蜃気楼の中に、翼を生やして剣を取る戦士と掌から鎖を出す盗賊らしき人が映っていた。まだ6属性しかないこの時代では、その光景はまるでファンタジーアニメのように思うだろう。
『お、よく見てるね。この時代では信じられないかもしれないけど、未来では当たり前の光景だよ』
『マジかよ、やっぱ未来すげーな』
『そんな未来を守るために、ゴールd……黄金ちゃんの力が必要なんだよ』
真剣な眼差しで見つめるミスト。黄金の両手まで握って強く懇願する。
『お、おう。分かったよ、アタシやるよ』
『本当に?』
ミストは心底嬉しそうに黄金の顔を近づけた。
『顔が近え!』
するとミストは頬を染めて、申し訳なさそうに距離を取った。
『あ、ごめん……』
(黄金ちゃんの顔間近で見ちゃった! めっちゃ可愛い! 女の私でも惚れる!!!)
『大丈夫か、顔真っ赤だぞ?』
そう言うとミストは顔面を隠すように手をブンブンと振りながら『ああなんでもないなんでもない大丈夫大丈夫、大丈夫だから!!!』と、必死に大丈夫アピールをする。
ミストは改めてコホンと咳払いをして、話を進める。
『それで黄金ちゃんにしてほしいことなんだけど、君には一万年後のオーガスト・ディーンことダストを、あるタイミングで殺してほしいんだ』
『――は?』
黄金は強い憤りを持ち、明らかな軽蔑の目をミストに向ける。このまま誤解を生んだまま放置すれば、彼女の性格上、殴りかかってくる危険性もあるだろう。
『勘違いしないで! 別にオーガスト・ディーンの敵になれって話じゃないから!』
『じゃあ殺せってどういうことだ? どう考えても敵意丸出しじゃねえか』
『違うから! 殺すというのはあくまで彼を一万年前に送る為の工程だから!』
『は? 言ってる意味がよく分かんねえよ』
『人をタイムワープするのは未来の魔法でも不可能なの! でも魂だけなら違う時空や冥界に入りやすいからタイムワープするにはこれしか方法がないの!』
神の力を以てしてもタイムワープは不可能だ。たとえ非人道的な方法だとしても、それが唯一の手段であるのなら、やるしかない。
『他に方法はねえのか!』
『ないよ! でも! やるしかないんだ!』
ミストの熱意に圧される黄金。しかし方法が方法なので、どうしても納得がいかない。
『だからって、人殺しなんて……しかもよりによってアタシの先生なんて……』
黄金は数秒前とは打って変わって弱々しくなる。それしかないと分かっていても、どうしても抵抗感が拭えない。
『もし、やらなかったらどうなると思う?』
その言葉に黄金はハッと顔を立てた。
『全員死ぬよ。黄金ちゃんや私だけじゃなくて、君の妹も友達も何もかもが消え去る』
本能ではそれを理解していた黄金だが、はっきりと口に出されるとより危機感が増していく。
『脅すようでごめんね、でもそれしか方法がないの』
ミストは頭を下げた。
『お願い! 辛いだろうけど、どうか引き受けてほしい!』
『あ、え……えぇ……』
もはや怒りを通り越してドン引きしてしまう黄金。しかしここで駄々をこねても妹や仲間たちは救えない。
腹を括った。
『分かったよ、頭を上げてくれ。やるよ、アタシやるから』
言う通りに頭を上げたミスト。申し訳なさそうに眉を下げつつ、
『ありがとう!!!』
と、強く礼を言った。
『それで、アタシはまず何をしたらいい?』
『そうだね、まずは――』
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