第617話『取り戻した日常』
大変長らくお待たせしました。
時間がかかってすみません。
第617話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2025/11/01誤字があったので修正しました。
――ゼウス撃破から10日ほど経過した。
魔王城はもう既に完全修繕したどころか、ついでだからとありとあらゆる魔法を使って、リフォームまで行った。色んな人の協力もあって5日程で終わらせたようだ。
まずは部屋の増築、次に風呂や娯楽施設、修練場の増設などなど、しかも何やら新しい店もあるみたいで、まるで影の都市シャドーの宮殿に張り合ってるようだ。確かシャドーから帰還したあと魔王に詳しく話してしまったから無駄に対抗心が燃え上がったんだろうな。
ノルン様といい魔王といい、自分の城に関しては負けず嫌いが多いな。
『俺の部屋は相変わらず何も変わらんな』
魔王城がゼウスによって半壊したと聞いたので、もう原形も残ってないんじゃないかと思ったが、奇跡的に無事だったようだ。
『だが、今だから分かる。俺のベッドに妙な魔法かけやがって……』
俺がこの部屋に戻った時にまず目にしたのがそれだ。この魔法は夢改変魔法と言って、その名の通り人が見る夢に細工できるというものだ。俺が魔王城に来てから何度も何度も変な夢を見たのはこのせいだ。
いや、よく考えたら別にこのベッドで寝なくても変な夢めっちゃ見るわ。みんな俺の夢の中で好き勝手しまくるから。まったくふざけやがって、俺の夢はフリー素材じゃないんだぞ。
『はぁ……まだ“アイツ”は動いてなくて暇だし、犯人探しでもするかね』
さて、犯人は魔王城の初期メンバーの中の誰かだ。その上で俺にあんな夢を見せて得するのは……魔王くらいしかいないだろう。
というわけで、俺は魔王を問い詰めに魔王の部屋にノックをした。
『返事がない、ここにはいないのか』
そういえば、この部屋は俺が召喚された思い出の場所だったな。あれ以降一度も入ってないけど、少しは内装も変わっているのだろうか。
『まあ、どうでもいいか』
俺は魔王の部屋をあとにして、次は魔王が居そうな一階へと足を運んだ。
『ここもずいぶん人が増えたな』
あれだけ寂しかった魔王城も廊下を見れば必ず誰かが視界に入るくらいには人の出入りが多くなった。
これでもゼウス襲来の直前に俺達が正義教団から転移してきた時には、今よりも人数が多かった。だがゼウスを倒したことで世界を穿つ雷の嵐も止んだので、魔王城に留まる意味は無くなった者が多数。
ヘラクレス、じゃなかったケイデスは自分の村に一旦戻っていった。村人はもういないが、最後まで生まれ育った村を守り通したいのだろう。落ち着いたらケイデスの村へ遊びに行くつもりだ。あいつも『いつでも来てくれ、俺しかいないけど歓迎するよ』って言ってたしな。
正義教団の連中は自分の国へ帰還し、アースちゃん以外の女神達もそれぞれどこかへ旅立っていった。アースちゃんは家族の元にいるかと思いきや、俺達と共に地上へ戻った。どうもママの代わりにやることがあるらしい。ユリウスも『心配ではあるが旅をさせることも子供にとっては良い経験だ。私の子供達をよろしく頼むぞ』と言っていた。
あとマーリンはいつの間にかいなくなっていた。確かにマーリンにとってはここにいる意味はないのかもしれないけど、何だかんだ一番世話になったから最後に挨拶くらいしたかった……。
魔王城に残ってるのは、初期メンバーの他にはみどりちゃん、アースちゃん、プラチナ、ブラック、フラン、ケン、シュタイン、桐華、ルカちゃん、カヴァちゃん、バレスさん、アクタ(高確率で不在)、オベイロン、ブリュンヒルデ、ウンディーネさん、シルフ、サラマンダー、ノーム、モーガンの合計25人と他精霊軍兵士数十名ほど。
ちなみに名前は挙がらなかったが、アミさんは近所のベンリ街の武器屋が住処なので、実質魔王城にいるようなものだ。まあ今は街の復興を手伝ってるらしいから、しばらくは会えないかもだが。
『ダストっち、おはよー!!!』
ゴールドちゃんは手を振りながら相変わらずのテンションで挨拶をした。可愛い。そして懐かしい。懐かしすぎて泣きそう……。
『おはよう、ゴールドちゃん……』
俺は堪らず本当に泣いてしまった。
『ええ!? いったい何があった!? 妖精がお玉でテニスをする夢でも見たのか!?』
どんな夢やねん。ちょっと涙引いたじゃねえか。
『いや、違う違う。なんかこの感じ懐かしくて……日常に戻ってきたんだなって……』
これが決められたシナリオだとしても、俺の望んだ日常であることには変わりない。
『ああ、本当に長かったよな』
ゴールドちゃんも、しんみりとした感じでそう言った。まるで一万年前の記憶があるかのような反応だ。というか――
『ねえ、もしかしてゴールドちゃんも一万年前の記憶あるんでしょ?』
俺とて何もかも知っているわけではないが、ゴールドちゃんは俺を過去に送る為に俺を殺害した。その行動自体が彼女が一万年前を知っている証明ではないだろうか。
『……その通りだ。やっぱダストっち……いやディーン先生なら分かると思ってたよ』
俺をディーン先生と呼ぶのは、当時俺が勤めていた学校の生徒だけだ。
やはりそうだった。ゴールドちゃんこと白鳥黄金は一万年前の記憶を所持していた。
『でも、何でゴールドちゃんが一万年前の記憶を?』
ゼウスの世界の破壊に巻き込まれれば、それは死と同然だ。そうなれば別人として転生し、当然前世の記憶もないはずだ。なのに覚えているとしたら、ノルン様によるものか、俺のように“別次元”か平行世界に送られて死を免れたパターンのどちらかだが、ゴールドちゃんの場合はどうだろう?
『アタシの記憶回路? ってとこに転生しても自動的にアタシの元に戻って来る特殊な魔法をかけてもらったんだ。“アイツ”に』
『アイツ?』
『霧の女神ミストだ』
ミストだと? どういうことだ?
『ミストはこの時代から一万年前の過去に飛んで、アタシに会いに来たんだ』
『えぇ!? ミストが!?』
一体何のために……? それに過去に飛んだってことはマーリンかノルン様が関わってるのか?
『ああ、それでミストはアタシにこう言ったんだ』
俺はその後、ゴールドちゃんから衝撃的な事実を聞かされることとなる。
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