第613話『影の大都市シャドーへようこそ』
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※文字数いつもより多めです。
ノルン様が引きこもりになってしまった。ゼウスとの戦いは終わったので、その報告がてら話を聞きに行くことになった。
しかし影の国へは俺一人で行くことはできないので、影の中に入れるシュタインもといカレンちゃんとアースちゃんに連れて行ってもらうことになった。あと影の世界に興味があるダークロードとオベイロン、ルカちゃんとカヴァちゃんもついていくようだ。
『ここが影の大都市シャドー……そのまんまじゃねえか。ネーミングセンス大丈夫か?』
『それはあまり言わないであげて下さい』
シュタイン寄りの話し方をするカレンちゃんが苦笑いしてそう言った。
『ほう、話には聞いていたが、思ったよりも文明が栄えているんだな』
ダークロードは感心するように都市を見回した。偉そうな話し方だが、マスコットのようにオベイロンの肩に乗っているのであまり威厳が感じられない。
『ああ、私も驚いている』
オベイロンも同じく都市の繁栄ぶりに感銘を受けている。国を持つ者として感じるものがあるんだろう。
『私も久々に来たが、ここを旅立った時よりも栄えているな。さすがアイツだな』
『カレンちゃんが旅立った時?』
『ああ、私がシュタインとして生まれ変わる直前だな。まあ生まれ変わると言っても、ただタイミング良く転移しただけだがな』
つまり影の国からこっそり地上に送って、あたかも最初から地上で生まれたただの少女のように過ごしていたということか。
『それでフランとケンの弟として生きてきたんだな』
『ああ、血は繋がってないがな』
そもそも全員孤児だったもんな。
『ん、ということはフランとケンはシュタインの正体に気付いていた……?』
『いや、あいつらは私より少し前に地上に戻ったんだが、運悪くゼウスの世界創生の時間だったんで、そのまま巻き込まれて、記憶を失っている。それをノルン様に聞かされた時、私はもうあの二人とは会うことはないと覚悟していたんだが、偶然にも二人は同じ孤児院で出会っていて、私もそこに居合わせた』
カレンちゃんは口角を上がる。
『これは運命だと思ったよ。それに嬉しかった。またこいつらと暮らせるんだって思ったから』
最後はにこやかに笑うカレンちゃん。よほど二人の事を思っていたんだな。
『カレンちゃん……』
おや、ルカちゃんとカヴァちゃんの様子が変だぞ。何やら寂しそうというか、重いな。
『着いた』
そうこう話している内に、宮殿の前に到着した。この世界に来る時から目立っていたが、近くに来ると迫力が段違いだ。まるで巨大な怪獣の目の前にいるような威圧感だ。
『うわ、すげえな……』
視界全てを覆い尽くすほど巨大な宮殿。人の出入りも多く、まるでショッピングモールのような賑わいだ。
ノルン様が最初見た時、かなり落ち込んだと聞いていたが、これは確かにそうなるわな。
『何て大きさだ……!』
『この中はどうなっているんだ?』
『中はショッピングモールみたいに複合施設になっている』
唐突にカレンちゃん寄りの話し方をするシュタイン。いきなりどうした?
『カレンちゃん?』
『ああ、すまない。ここに来るとついこの話し方になる』
少し照れくさそうに頬をかくカレンちゃん。
へぇ、可愛いところもあるんだな。しかし容姿もいいから忘れがちだが、こいつはルカちゃん狂いの変態である。お人形さんのような可憐さに騙されてはならない。
『なるほど、それだけカレンにとってこの場所には膨大な思い出があるんだな』
少し寂しそうにオベイロンは言った。カレンは本来精霊国の出身だが、ここで過ごした時間の方が圧倒的に多い。彼女にとって故郷がこの国になっている可能性は高い。
『すまないな、精霊国に帰ってやれなくて』
オベイロンの心情を察したカレンちゃんは申し訳なさそうに謝罪した。
『いやいや、状況が状況だ。仕方がない』
オベイロンは困り眉になりながらそう言った。
『そっか、私の知らないカレンちゃんか……』
『一万年も居たんだよね。きっとその分ここで新しい友達いっぱい作って……』
さっきから重そうな空気を醸し出しているルカちゃんとカヴァちゃん。女友達の嫉妬はどこまでも恐ろしい。
『実はここにフランとケンとアンドリュー達も住んでいたんだ。それなりに楽しそうに暮らしていたが、今は全員地上に戻ってしまった』
そんな彼女達の嫉妬心など知らずに、カレンちゃんはどこか寂しそうに思い出を語る。
『そうか……ん、アンドリューって誰だ?』
どこかで聞いたことはあるんだよな。
『ダストは覚えてないかもしれないが、私が家出した先で出会ったギャングの男だ。色々あったが、フランとケンの保護者になった』
『ああ、そういえばそんなこと言ってたな』
俺は会ったことないが、最初は対立していたが気の良い人みたいだ。その妻の人が思いの外強くて、カレンちゃんの綿がボロボロになった原因らしい。まあそれがきっかけでカレンちゃんは人間になったようだが。
『アンドリューとその妻のダイアナも世界崩壊やら影の世界やらで状況についていけなかったが、ここの住民になってからしばらく経った後は、案外快適に暮らしていた。でもやっぱり地上が恋しくなったのか、ずいぶん前に地上に帰っていったんだ。ノルンからの寿命延命も拒否したからもう生きてはいないだろうがな』
カレンちゃんは寂しそうに黒い空を見る。天から二人が見守っているなんて思っているんだろう。
『おっと、しんみりしてしまったな。中を案内しよう。ついてきてくれ』
俺たちは何も言わずにカレンちゃんの後に続いた。
『すっっっっっっご』
『なんて広さだ……』
本当にショッピングモールのような内装だった。奥行きが凄まじく、いくつ店があるのか見当もつかない。
『ノルン様はどこに住んでいるんだ?』
『ノルンは最上階だ。王と暮らしているからな』
王と暮らしてる?
『最上階はどうやって行くんだ? まさか階段じゃないよな』
見た感じだが30階はありそうだ。とても階段で登るなんて現実的じゃない。俺みたいに魔法使えるなら話は別だが。
『安心してくれ、関係者専用のエレベーターがあるはずだ』
カレンちゃん先導の元、そのエレベーターの前まで来た。
『これだこれだ。さすがに廃止されてなかったようだな』
カレンちゃんはホッと胸を撫で下ろした。
『内装も一緒だな。よし行くぞ』
そうして俺たちは最上階まで運ばれた。
『おお、何か豪華だな』
さすがにこのフロアには店などはなく、ホテルのように部屋の扉が規則的に配置されているだけだった。それに一階の賑わいが嘘のように静寂だ。
『ここが王族の住むフロアか』
『ああ、ここはユリウス王とその家族、そして最高幹部や一部の従者も住んでいる。私もかつてここに住んでいた』
『え、すごいじゃん』
『まあ豪華すぎて落ち着かなかったから、別の階の部屋にしてもらったがな』
なんか気持ちは分かる。豪華なのはいいけど毎日住みたいかと言われると、カレンちゃんと同じ感想になるかもしれない。
『この部屋だ』
奥の方にある一室。黒い扉の豪華な金の装飾ぶりに王族らしさを感じられる。ただ他の扉も全部そうなので、この国の王は特に一番を強調したい性格ではないようだ。
『ここにノルン様がいるのか』
久々の再会だな。当然不老だろうから外見も変わってないんだろうな。
『ママ、大丈夫かな』
アースちゃんが心配そうに言った。
『そういえばアースちゃん』
『なに?』
『何でアースちゃんは地上に来たの?』
『それ今言うことなの?』
確かに人の部屋の前で長くなりそうな話をするべきではないな。反省。
『私がママの娘だと言った時、きみ意外とあまり質問責めしなかったから最初は気を遣ってるだけだと思ってたけど、まさか素で疑問に思わなかったってこと?』
『うーん、というよりノルン様なら何をやってもおかしくないと思ってるからなぁ……まあ娘がアースちゃんなのは驚いたけど』
逆に言えば驚いたのはそれくらいで、それ以外は特に驚愕を覚えることはないだろう。
『たとえ口から卵出して子供産んでも驚かないよ』
『ダスト君はうちのママのこと何だと思ってるの?』
『性悪女神――いてえ!!』
質問に正直に答えたら、何か硬いものが頭上から降ってきた。これは――
『タライだ……ということは!』
すると、目の前の部屋のドアノブが下がり始めた。
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