第612話『影の世界から』
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――それから私たちは、ユリウス王からの任務のために動きつつ、大都市シャドーで新たな日常を送った。
私の部屋だが、なんと宮殿の貴重な一室を提供してくれた。てっきりボロアパートの一室だと思ってたから、まさかヴァルハラの上位互換の宮殿で暮らせるとは思いもしなかった。
あと、この大都市シャドーになぜ水があるのか問題だが、どうやら雨や雪は普通に降るらしい。なぜなら地上の雨が影に吸い込まれて、そのまま時間をかけてこの国に流れるようになっているようだ。それも世界中から集まるので、何なら地上の国よりもよく水が集まるんだとか。
でも日がないのなら、農作物は作れないのでは、という質問をしてみたが、どうやらそれも解決済みのようで、農作物を作る専用の施設があって、そこで人工的な日を作って育てているだとか。
この国の技術は思ったよりも進んでいる。こんな暗闇の世界で快適に生きていけるほどだ。よほど優秀な人材が集まっているようだ。
おかげで、私が力を貸さなくても何不自由なく暮らしている。私いらなくない?
強いて言うなら、ユリウス王含め色んな人からの頼みを聞いたり、全国民の寿命を一万年分伸ばしたことくらいか。本来は寿命を伸ばすのは禁忌とされているが、今はもう女神の責務は消えたし、そんなことしーらねって話なので、好き勝手にやってやった。がはは。
……まあ、本当はみんなにもう一度地上の日を見せたかったから。なーんて。
この国に暮らしてから、かなり経った後も相変わらずの日々を過ごした。地上の人間を救う計画を構築したり、シズカさんや友達とショッピングを楽しんだり、カレンさんと大喧嘩したり、ユリウス王の部屋を片付たり――
まあ、大変だったけど楽しい日々だ。ヴァルハラに居た頃も悪くはなかったけど、シャドーで得た思い出はまるで宝石のように輝かしいものだった。
――あぁ、大都市シャドー。私の第二の故郷。
さらにそれから色々あって、ついに一万年後。
私は今――
――――――――――
《現在》《魔王城》
宴を開いてから2時間が経過したが、未だ喧騒は鳴り止まない。そんな中でカレンとノルンの過去の話に花を咲かせていた者達がいた――
『――それでさ、その後も大変だったのよ。でも楽しかったなぁ……』
彼女はヘラヘラした様子で思い出話を語る。
『えっと……』
困惑するダスト。カレンの過去話を聞いていたはずだが、とある人物に割り込まれ、視点を変えた話に切り替わった。
『ん、どしたの?』
『いや、あの……久々に顔を見せたね、アースちゃん』
地の女神アース。元々は魔王城の幻の図書室に住んでいた引きこもりだったが、色々あって外に出て暗躍するようになった性悪女神である。ダストとは彼がアクタに捕まって一悶着あった後に別れて以来である。
『ダスト君、久々! 君があの効率厨に捕まって喧嘩別れして以来だよね!』
(喧嘩別れ……?)
『……アースちゃんも相変わらずで安心したよ』
『へへ、あれ以来ちょっと色々あって顔を出せなかったけど、今日ようやく顔を出せたー!』
長い間顔を見せずになぜ今更魔王城に来たのかは謎だが、それよりも重大な疑問がある。
『ところで、さっきの話でさ、アースちゃんはノルン様の視点で思い出を語っていたようだけど、どういうこと? まるでアースちゃんがノルン様本人のようだったよ』
なぜアースが鮮明にノルンの思い出を語っていたのか。ダストはどこかアースにノルンの面影を感じている。
『それって、私がノルン様だって言いたいの?』
ダストは頷いた。まるで何となく予想していたように落ち着いた表情だった。
すると、アースはニヤリと笑った。
『なかなか良い推測だけど、違うよー! 私がノルンなんじゃなくて、ノルンは私のママなの!』
『……はい?』
これは流石に想定外だったのか、ダストは驚きを隠せなかった。彼のその表情がよほど嬉しかったのか、アースはさらにクスリクスリと笑った。
『さすがのダスト君も分からなかったかー!』
『うん、めっっっっっちゃ驚いた。マジかよ』
ノルンはアースの母親。容姿はあまり似てないけど、性格は確かに似てるところがあったり。
『そうだ、ノルン様は今どうしてる?』
そう言うと、アースは途端に暗い表情になった。まるでノルンに何か不幸があったようなリアクションだ。
『ママは……』
アースは自分の腕を強く掴んだ。今にも泣きそうな雰囲気だ。
『あー、言いづらい? それなら無理に言わなくてもいいからな』
ダストもばつが悪そうにそう言った。
『ううん、言わせて。むしろ言わなきゃダメだから……』
『アースちゃん……』
(こんなアンニュイなアースちゃん初めて見た……まるでヒロインみたいだ)
『えっとね、私のママ……女神ノルンは――引きこもりになっちゃったの』
『……は?』
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