第604話『告白』
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ルカちゃんとカヴァが俺と何か話したいことがあるらしい。
『話したいこと? 何かな?』
『ええとね』
ルカちゃんが後ろにいる彼女を見た。
『シュタイン』
フランとケンの妹であるシュタイン。今ではブロンズ様とアイドルをやっているが、とても活動できる状況じゃない。これは完全に営業妨害だ。神の居城宛に損害賠償を請求しよう。
この世界に来たばかりのルカちゃんズがシュタインと接点なんて一つもないはずだ。
だけど俺は知っている。3人には深い繋がりがあることを、シュタインの正体を――
そんな彼女も何やら覚悟を決めたような顔つきで、前に出た。何か告白したいことがある雰囲気で。
『あの、ダストさん……わたし、わたし――フッ、よくここまで私の愛しのルカちゃん達を連れてきてくれた。感謝するぞ、オーガスト・ディーン』
これまでのシュタインとは異なる口調でそう言った。まあむしろその口調こそが彼女の素と言えるだろう。
『どういたしまして、カレンちゃん』
一万年前の世界が滅びたあの日、精霊国へ逃げ切れなかった彼女はそのままあの世界の住人として生き、守護神によって何度も何度も転生を繰り返し、今はシュタインとして生きている。
だがその場合、一万年前の記憶は無くなるはずだ。でも今目の前にいるシュタインがそれを覚えているということは――
『もしかしてカレンちゃんが記憶を持っているのは、ノルン様が関係してるのか?』
『ああ、そうだ』
やっぱりか。
『詳しい話を聞きたい』
俺もここに来るまである程度の情報は収集したが、まだ知らないこともある。俺は知りたい、ノルン様がカレンちゃんに“あの時”何をしたのか。
『いいだろう。ルカちゃん達にはさっき話したが、女のパンツ大好き男にも話してやろう』
カレンちゃんは心外にも未だに俺を女のパンツ大好き男だと思っているようだ。
『はぁ、またそれか……何度も言うけど俺は別にパンツ好きなわけじゃ――』
『私のパンツ見たくせに』
『え、見てな――あ』
そういえば前にブロンズ様達を助けに正義教団の国に行った時にルキウスに案内された隠しアジトの中で偶然、着替え途中のシュタインとブロンズ様を目にしたことがあったな。いや〜あの時は眼福――じゃなくて不慮の事故だった。決してわざとではない。
『『え?』』
ルカちゃんズからの視線が痛い。完全に軽蔑の眼を向けている。
『いや、あれはまあ俺が悪いんだけど、着替えてるなんて知らなくて、完全に不可抗力だったんだ……』
『どうせ眼福とか思ってんだろこのパンツ大好き変態クズ野郎』
呼び方悪化しとる……。
『そ、そんなことお、思ってるわけないじゃん!』
必死に弁明するが、ルカちゃんズの視線が更に鋭く突き刺さる。
そこに偶然通りかかったブロンズ様も聞き耳を立てていたのか顔を赤らめながら、睨みつけてきた。
もうややこしくなるからブロンズ様は仕事戻って! あとで構ってあげるから!
『ふん!』
俺の心を読んだブロンズ様はそっぽ向いて厨房へ戻った。また一つ予定ができてしまったな。
そのブロンズ様とすれ違いざまに筋肉質のある男がやってきた。
『よおダスト』
『久しぶりだなヘラク……ケイデス』
ケイデス・アルカイオス。俺がアクタの元から去った後に赤髪ちゃんたち幽霊組と旅に出た時に出会った槍使いの男だ。一万年前はヘラクレスという名前だった。当然だが容姿も声も性格も全て同じだから前の名前と間違って呼びそうだ。
『あ、ヘラクレスさんだ』
早速ルカちゃんが間違えてそう呼んだ。
『ヘラクレス? いや俺の名はケイデス・アルカイオスだ。あー、でもヘラクレスって何か懐かしい響きだな』
ん? かすかに一万年前の記憶があるのか?
『し、ししし失礼しました!』
人違いと分かって恥ずかしくなったのかルカちゃんは頬を赤らめて謝罪した。可愛い。
『いや気にするな。他人の空似なんて誰だってあるだろう』
ケイデスは優しい顔でそう言った。他人の空似ではないが。
『うぅ、お気遣い感謝します』
申し訳なさそうに顔を上げた。そしてますます顔の赤みが増してる。可愛い。
『えっと君、名前は?』
『私は橋本ルカと申します』
『よろしくなルカ。隣の子は双子?』
『えっと、その……』
カヴァちゃんのことは説明しずらいよな。そう思った俺は助け舟を出そうとしたが、本人が前に出た。
『私の名前はルカ・ヴァルキリー。そこの橋本ルカとは双子ではなく分身にあたる存在です』
カヴァちゃんは凛々しく、堂々と説明した。
『分身? ああ、そういう魔法か』
『いえ魔法ではなく、とある現象を受けてこうなりました』
『魔法じゃないのか?』
この世界線では魔法以外で人が分身するなどありえない。ならば、それはもはや超常現象だと思うだろう。
『話すと長くなります。なので明日の説明会で皆さんに話そうと思います』
実は明日、ここにいるみんなと会議することになった。殺されたはずの俺が生き返ったことといい、精霊国のみんなのことといい、説明しなければならないことが沢山あるからな。
『そっか、じゃあその時はよろしく頼むよ』
『はい!』
ケイデスは次に俺に視線を向けた。
『ダストもな。お前については謎が多い。死んだと思ってたのにまさか生きてたとはな』
俺は以前ゴールドちゃんに過去に送ってもらう為に殺された。今すぐみんなに説明したいけど、今はみんな疲れてるだろうから落ち着いてからにするつもりだ。それに死んだと思われた奴がまたここに現れて精霊軍を引き連れてゼウスを倒したとか、情報量が多すぎて混乱してしまうだろう。
『ダストが生きててくれたのは嬉しいけど、正直困惑もしてる。それは俺だけじゃなくてみんなそうだ。今はあの魔王中心にバカ騒ぎしてるが、きっとダストへの不信を募らせないようにみんなを酒で酔わせているんだろうな。いい上司じゃないか』
いや魔王に関してはぜっっっっっっっったい騒ぎたいだけだ。あ、はしゃぎすぎて赤髪ちゃんに怒られてる。
『そうでもないか』
『ああ、魔王は空気が読めないシリアスブレイカーだ。今後は厳しい目で見てくれ』
『ははは、そうか。おっと話し途中に割り込んで悪かったな。それじゃ』
ケイデスは気を遣ってその場を後にした。そういえば元々俺とルカちゃんズとカレンちゃんの4人で話し合ってたんだったな。
『さて、じゃあシュタイン――いやカレンちゃん。話してくれ。一万年前のあの日何があったのかを』
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