第603話『規格外√ダークネス』
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《???》
『フハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』
男は高らかに笑った。
『ダスト、まさか貴様がこうもあっさりゼウスを倒すとはな……俺の計画ではゼウスはこれまでで一番の強敵でダストは仲間達と共に苦戦しながら戦う、というのが俺の考えたシナリオだった。だが、それを見事に破壊してくれた。これではクライマックスシーンが台無しだ!』
台本通りにいかない展開であっても、一切の焦りもなく、怒る様子もない。むしろ歓喜しているように見える。
『ダークネス様、いかがなさいましたか?』
愉快そうな男の元に女が現れた。
『ああ、ダークか』
『ダークだなんて懐かしい名前ですね』
『なんだ、しばらく名乗っていなかったのか?』
『ええ、最近だとアテナとかハルナ・アキモトと名乗ることが多くなりましたね』
『ハルナ・アキモトだと? それは貴様の本名じゃないか。いいのか?』
『いいのです。だってもう……終わりの時は近いのでしょう?』
『ああ、そうだ。この世界は、いやこの作品は主人公であるダストの死で終わりを迎える』
ラスボスを倒したダストが何らかのアクシデントで死ぬバッドエンドを考案していた。
『ふふふ、楽しみですね。彼が死んで苦痛に歪む仲間達の顔が……!』
ダークはうっとりとした顔でそんな想像をした。
『貴様の趣味も相変わらずだな』
『ダークネス様こそ、とんだバトエン厨じゃないですか』
『ハッピーエンドだけが娯楽ではない。バッドエンドだからこそ摂取できるものがある。それを理解できない者が多すぎる。それもまたエンタメであるはずなのに、それを否定するなどクリエイター失格だ』
ダークネスはどこか寂しそうに語る。
『全くもって仰るとおりです! やはりダークネス様の思想こそ至高です! 私は最後まで貴方についていきます!』
ダークは、まるで子供のような純粋でキラキラした眼でそう言った。しかしその中身は邪悪そのものだ。
『ああ、ついてくるがいいアキモト』
『はい!』
『予定は大いに狂ったが、次のゲームを始めよう』
――――――――――
斯くしてゼウスとプロメテウスは過去から来た戦士たちによって倒された。後続で襲撃していたたくさんの家臣達全員がそれを知ると、途端に戦意を失くし、武器を手放した。
『ゼウス様とプロメテウス様が……』
青ざめた表情をしながら膝を崩したのはウラノス。守護神の一柱である彼も魔王城襲撃に参加していたが、精霊国から加勢に来たノームとサラマンダーによって食い止められていた。
『あーあ、負けちゃったかー』
同じく守護神の一柱であるクロノス。彼はウンディーネが相手をしていたのだが――
『クロノス! 貴様全力を出していないだろう!』
ウラノスにそう指摘されるクロノス。しかし彼は一切反省の色を出さずに笑っていた。
『ははははは!!!』
『何がおかしい!!!』
クロノスの態度に更なる怒りを覚えるウラノス。
『え、だって僕はオーディンの味方だからね』
クロノスは明確に守護神を裏切る発言を口にする。
『貴様がオーディンに異常なまでの憧れを抱いていたのは知っていたが、まさかここまでとは……!』
オーディンの為なら味方軍が壊滅しても構わない。クロノスはあまりにもそれを態度に出しすぎていた。
『くそっ!!!!!!!!!』
ウラノスの怒る声が木霊する。それ以降は失望したような表情を浮かべたまま、声を出すことはなかった。
世界を破壊しようとした神々は全員拘束された。収監場所だが神様が手配してくれたようで、すぐにそこへ連行された。半永久的な収監になるとのことで、俺達があの神々と会うことは二度とないだろう。
――世界は救われた。だが、もう既に世界各地で大規模な損害が発生している。もはや世紀末と呼べるほどに世界は荒れ果ててしまったのだ。しかし、それもまだ修復可能レベルだ。莫大な時間はかかるだろうが、ケガを治すように少しずつ回復していけばいい。それだけの労力が我々にはあるのだから。
――ただし、それはあいつをどうにかしてからだ。
戦いはまだ終わっていない。本当のラスボスを倒さなければこの世界が救われたとは言えない。まだまだ緊張が解けることはないだろう。
――そのはずなんだが、今はボロボロになった食堂で“神倒しちゃった記念でたくさん飲んじゃおうの会”が勝手に行われている。
今はもう夜の帳が降ろされて、月の明かりが半壊の魔王城を照らしている。
そんな中、食堂ではお祭り騒ぎだ。
『ぎゃはははははははははははは!!!』
『うおおおおおおおおおおおおお!!!!!』
『うひゃああああああああああああああああ!!!!!』
何がそんなに楽しいのか、お酒大好き集団はシュワシュワする飲み物を水のように口の中にぶち込んでいる。
『全く、これだから酒大好き野郎共は……』
ゴールドちゃんは料理を作りながら、大バカ共に呆れた視線を向けている。シルバーちゃんとブロンズちゃんも厨房で右往左往している。
『忙しそうだな』
本当はあの三姉妹と話したいことが沢山あったのだが、今はそれどころじゃないか。
それにしても、昼の時点ではかなりの人数が重傷で意識不明になっていたが、丈夫な連中が多いことでほとんどが目を覚ました。しかも今では神々との戦いが嘘のように、酒飲みまくってはしゃいで、食堂が混沌と化している。ダメだこりゃ。
『しょうがねえな』
俺も誰かと話すか。でも人が多すぎて誰から話しかけに行こうか迷うな。
そう思っていたところに、俺の元に来たのは――
『ディーンさん』
『お、ルカちゃんにカヴァちゃん。初めての魔王城はどう? うるせえ奴ばっかだけど楽しんでる?』
『うん、ちょっと圧されるけど楽しめてるよ』
ルカちゃんがオレンジジュース片手にそう言った。一方でカヴァちゃんはリンゴジュースを持ってるし、ある程度は楽しめてるみたいだ。良かった。
俺達はある人物に視線を向けた。
『パーシヴァル……あいつめちゃくちゃ飲んでるなぁ』
俺と一緒に火の国の墓の中に入ってた戦闘狂のパーシヴァル。せっかく神々との戦いなのに一切剣を交えなかったからかな。あんなに荒んだように酒飲んでるの。
フフフとルカちゃんズは笑う。でも何か言いたいことがあるのか、すぐに真面目な顔つきに戻った。
『ねえ、ディーンさん』
『何?』
『ちょっと話したいことがあるの』
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