第601話『黒い神』
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《神の独白》
我は生まれた時から神だった。
この世界を管理し、時が来たら破壊と創造を行う。それが我の使命だ。
我にとって戦闘などただの清掃作業でしかない。故に勝利は至極必然であり、敗北は死を意味する。神は絶対的正義だ。
しかし“あの方”は仰った。
『貴様は完璧な存在だ。しかし、万が一ではあるが足元を掬われることもあろう。その時は貴様に“特別な力”を注ぎ込む』
特別な力とは何なのか。この時の我はまだ知らない。が、“あの方”の事だ。神にふさわしい光を象徴するような力に違いない。
きっと、きっと――
――――――――――
《現在》
『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
苦しそうに叫ぶゼウス。
『え、なになに!?』
ゼウスの背から二つの黒い泡が生えると、そこから出血したように黒い液体が流れる。すると内部から皮膚をエグるような音が聞こえる。
『一体何が……?』
ゼウスの身体の中で何が起こっているのか。いや、考えるまでもない。さっき予知夢で見た通り、ゼウスの堕天使化が始まっている。
黒い液体は氷のように固まり、黒い翼へと形成される。
神々しさが無くなり、代わりに禍々しさ雰囲気が漂っている。正直ちょっとカッコイイ。
俺が見た未来予知の堕天使ゼウスと全く同じ姿だ。予知通りに行動しなかったからといって未来は変えられなかった。ということは、ゼウスの堕天使化は必然のようだな。
『なに、あれ?』
次にゼウスが腕を上げた瞬間に仲間達は全滅した。だからその前に止めなければならない。
俺は全力を以て、ゼウスの腕を斬り落とした。弱っているからか比較的容易に攻撃を通せる。
よし、これならゼウスはあの雷撃を――
――無駄だった。
『は?』
気づけば既に仲間達は雷に押し潰され、影も形も無くなった。
『嘘だろ……?』
俺以外全員の死が確定した。結局俺は誰も助けられず、ただ一人堕天使ゼウスに裁かれるのを待つだけ。
反撃どころか抵抗する気すらない俺は、堕天使ゼウスの雷撃によって消された。
――――という予知を見た。今は堕天使ゼウスになる直前まで巻き戻っている。
ゼウスが堕天使になる前に考えよう。どうすればあの虐殺雷撃を止められる?
まず前提として、ゼウス自体をあの刹那の時間に滅ぼすのは無理だ。だから先ほどの予知世界の中で腕を斬り落としたのだが、それも無駄だったということは、別に腕を上げなくとも雷撃を放てるということだ。
一体どういうカラクリなんだ?
たとえ相手が神だろうと、何かしらの突破口はあるはずなんだ。
『ぐ、ぐおおおおおおおおおおおお!!!!!』
くそっ、タイムオーバーか。
結論が纏まらなかったが、今度は首を斬り落としてみた。これも見事に命中したが、結局雷撃が仲間達を襲い、誰も救えなかった。
――――という予知を見た。
やばい、ご都合未来予知連鎖が止まらない。俺がこの状況をクリアするまでこの予知夢から抜け出せない。そういう仕様なのは分かってたけど、何か特別扱いされてるみたいで腹が立つ。まあ正直助かってるけど、結局これも“奴”の手のひらの上って訳だ。
『ふざけやがって』
ついポロッと心の声が漏れた。
『ディーンさん?』
『巨大化魔法』
その名の通り、身体を巨大にする魔法だ。サイズは自由に決められるが、その大きさに比例して魔力消費量も上がるので使い方には注意が必要だ。
そして、俺は巨人になった。
こちらからは見えないが、きっと他のギャラリーもとんでもないリアクションを取っていることだろう。
巨体だったゼウスも、子供のように見える。
おお、よく見たらゼウスは死にそうな顔でこちらを見ている。『巨大化魔法か……』なんて呟いてそうだ。
次の瞬間、そのゼウスがまたしても苦しみだした。
『きた』
速攻雷撃が来る前に俺は物を掴むようにゼウスを掲げると、それを雲の上を突き抜ける勢いで投げ飛ばした。
『ん?』
周りはキョトンとした顔を見せた。『え、お前何やってんの?』と言いたそうに。
『あの、ディーンさん?』
説明したいのは山々だけど、そんな時間はない。今は刹那の時間さえ惜しいところなのだから。
俺は他のみんなに一切の説明もせずに投げ飛ばしたゼウスを空中浮遊魔法で追いかけ、雷雲の中を駆け回った。
巨大化したとはいえ、脆弱な俺がこんな上空までぶん投げる力を持てるとは……まほうのちからってすげー!
巨大化魔法の仕様に感動していると、雷雲の中の雷が俺に狙いを定めたが、ギリギリ当たらなかった。
『あぶねっ』
もし当たってたら終わってたな俺。
ただの雷ではなら防壁魔法や結界魔法使えば防げるが、この雷雲自体がゼウスの力だ。奴の雷は全ての魔法を無効にしてしまう。つまり防御しても全くの無意味だ。なので呪術を使おう。呪術を発動するには道具が必要だ。というわけで――
俺は自分の爪を道具に“避雷針の呪術”を使った。無論ただの爪では呪術は発動できない。この爪はラピスとラズリに呪術用に施してもらったものだ。先ほどのゼウスの雷撃を防いだ時もこの爪を使わせてもらった。魔力も必要としないし、対ゼウス戦では非常に便利ではあるが、呪術は一種類発動につき一つの道具が必要だ。といっても代償ではないので、別に爪を剥がされるというわけではない。呪術に使う道具とは電池のようなものだと思ってもらえればいい。
『ゼウスはどこだ?』
確か投げ飛ばした先はこの雷雲の中だったと思うが。
『ん?』
よく目を凝らしてみると、ゼウスらしき者のシルエットが見えた。
『そこか!』
俺は全速浮遊でゼウスの元へ向かう。
『フハハハハハハハハ!!!!!』
悪党のように愉快に嗤うゼウス。一体何がおかしいのだろうか?
『最高の気分だ! 何もかもを破壊したくなる!』
さらに増してゼウスの禍々しさが上がっている。言動を含めて正義面していた神の面影などほとんどない。もはや別人じゃないか?
『アンタ、本当にゼウスか?』
あまりの変貌ぶりに、俺は思わずそう聞いた。
『ああ、そうだ。俺は生まれ変わったのだ!!!』
堕天使ゼウスの黒いオーラが溢れる。凄まじいエネルギー量だ。これまで戦ったどの相手よりも強い。
なるほど、これがラスボスか。確かにそれに相応しい力を持っている。だけど――
『悪いけど、俺はアンタを倒してあいつに会いに行く』
『かかってこいゴミが、貴様から殺してやる!!!』
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