第600話『正しい未来へ』
お待たせしました。
第600話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
オベイロンの斬撃、そしてブリュンヒルデの攻撃によって、プロメテウスは倒された。
『この高貴なる我が……こんな下等種族どもに…………!』
炎の色をした巨体は吸い込まれるように床に背を預けた。喚くこともなく、抵抗することなく、ただの無力な人間のように倒れていた。
『これで決着だな』
神の一柱が落ちた。それはこれまで何百回何千回世界が創り直されて一度も起こりえなかった事態だ。
――そして、これは人類が神の支配から解放される歴史的な第一歩でもある。
『あの人たち、すごい……本当にあのプロメテウスを倒しちゃうなんて……ははは……』
あまりの非現実的な光景に腰が抜けてしまうアミ。彼女だけではなく、この世界に生きる人々の大抵は神が倒されるなど想像すらしなかっただろう。
『よし、プロメテウスは倒したみたいだな。あとは――』
ダストはゼウスに視線を向ける。現在ルカとシルフの二人がかりでゼウスを食い止めてはいるが、さすがに限界か、ゼウスが押し始めた。
『俺もそろそろ参戦した方がいいか』
劣勢の戦闘にメスを入れる為、ダストは立ち上がった。そもそも彼はゼウスと戦っていたはずなのに、いつの間にかフェードアウトしていたのもおかしな話ではあるが。
『ゼウス、お前もここで終わ――』
――――――――――
それから10分後。
ダストとゼウス以外の全員が消滅した。
まだルカとシルフと共に戦っている最中、彼が神にとどめを刺そうとした瞬間、ゼウスは突然苦しそうに悶え、背中から黒の翼が生える。まるで堕天使を思わせるような禍々しさがある。
『嘘だろ……』
ゼウスが堕天使のように変貌した瞬間、全てが変わった。神が手を挙げると、ダスト以外の生物の消滅した。それは敵味方関係なく、ほぼ全てを滅ぼした。
ダストも何が起きたのか分からない。ゼウスがただ手を挙げただけで全員がワープしたようにしか見えないが、実際は異常に早い雷撃によって、味方全員、影も形もなくなってしまったようだ。
『ゼウス、お前何をした?』
『貴様に話す義務も理由もない』
『俺はお前を許さない』
『ならば、何をする?』
『お前を倒す』
『無駄だ、今の貴様では俺を殺せない』
『関係ない、お前が神だろうが堕天使だろうが、俺の仲間に手を上げたそれだけで重罪だ。覚悟しろ』
ダストはやけになったのか、あらゆる方法で神に攻撃しまくるが、堕天使ゼウスはその巨体に見合わない速度で宙を描くように避け続ける。
『ダスト』
『何だ?』
神の姿をした“何か”がこう言った。
『貴様、今未来を見ているんだろう?』
『!?』
確かにここにいる俺は未来の俺である。つまり俺は今未来予知を見ているということだ。
未来予知自体かなり久々のように感じる。最後に発動したのはいつだっただろうか?
まあ、そんなことはどうでもいい。それよりも俺がこれが未来予知であると自覚している方が驚きだ。未来予知中は夢の中に入るようなものだが、明晰夢のように自覚するなど前例がない。
『ダスト、一つ課題を出してやる』
『課題?』
『このままでは貴様はこの未来のように、誰も救えずに俺と貴様だけが生き残ってしまう。この未来を拒否するのなら、これから始まるゼウスの虐殺ショーを止めてみせろ』
つまり未来予知を通した俺への挑戦状というわけか。
『いいだろう。止めてやるよ』
『フッ、フハハハハハ。貧弱だった貴様にもようやく主人公としての自覚が芽生えたようだな』
『……やっぱりお前は――』
明らかにゼウスの話し方ではないことから、今そこにいるゼウスが乗っ取られていることが分かる。そして、ゼウスを乗っ取るほどの力を持つ者は限られている。
『ダスト、待っているぞ』
俺はお前を知っている――――
――――――――――
『――っと』
久方ぶりの予知は終わり、現在の光景を目にした。今のところゼウスに黒い翼は生えておらず、ルカとシルフと交戦している。
『確か俺が二人に加勢して、ゼウスにとどめを刺そうとしたら、ああなったんだっけな』
だが加勢しないと二人もさすがに辛そうだし、でも他に加勢できそうな奴はいなさそうだしな。
少なくとも俺がゼウスに加勢することは確定で、問題はその後だ。
『俺もするぞ!』
俺は転移魔法でゼウスに頭上に転移し、呪術による力でゼウスに重力を与えた。
『何だこれは……身体が重い……重力魔法ならかき消せるが、これは魔法でないな?』
ゼウスは立ち上がれないまま、ダストを睨みつけた。
『お前に俺の魔法はあまり効かないからな。さっきと同じ概念で攻撃させてもらった』
『また“それ”か、おのれオーディン。貴様さえ、貴様さえいなければ……!』
刹那、ゼウスは雄叫びを上げると同時に電撃をあちこちに放った。危うく仲間達に当たりそうだったが、誰一人として攻撃を受けた者はいなかった。
『この我がコントロールを誤っただと? そんなバカな……我は誕生してから魔法のコントロールをミスしたことはない……まさかこれが――』
『そのまさかだ』
重力の呪術には相手の魔法の行き先を歪ませる効果がある。
『我が雷撃は正義の為に――』
そう言って、同じように雷撃を放つも虚しい結果となった。
『なぜだ、この我が、このような醜態を晒すとは……』
ゼウスの心は折れた。もはやこちらの勝利は確定したようなものだ――と言いたいところだが、ダストはこの後の出来事を予知している。
ダストがゼウスにとどめを刺すのはこのタイミングで間違いないだろう。しかしそのせいでゼウスが堕天使のようになってしまう。それがトリガーだとしたら?
(ならば、とどめを刺す行為自体をしなかったらどうなる?)
そう考えたダストは剣を収め、戦闘意思の放棄を表した。
『ディーンさん? とどめ刺さないの?』
『ああ、奴はもう戦意を失ってる』
表向きの理由を話す。
『いいのですか? ここで逃がせば復讐されるでしょう。それともそれが狙いなのですか?』
シルフは当然の疑問をダストに投げかける。
『いいや、そういうわけじゃない。こいつを捕縛して色々聞きたいことがあってな』
これも表向きの理由ではあるが、聞きたいことがあるのは本当だ。
『さて、問題はどうやって捕縛するかだが――』
その時ゼウスの様子が――
『ぐ、ぐおおおおおおおおおおおお!!!!!』
突然、苦しそうに喚き出した。
『な、なに!?』
『まずい――』
第600話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




