第599話『精霊軍VSプロメテウス②』
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《ダークロード視点》
いつからかな。誰かが喜ぶ顔を見ると嬉しくなるのは。
なぜかな。誰かが苦しむ顔を見ると辛くなるのは。
我は復讐と破壊を好む災害のような悍ましい者。なのに、なぜだろう?
あれだけの破壊で生まれたはずの快楽が今では重くのしかかる罪悪感に変わってしまった。
気づいた時にはもう遅い。我は災厄の化身だ。この先どんなに善行を繰り返したとしても償いきれるものじゃない。
だから我は――
せめて、こいつらを守りたい。
――――――――――
プロメテウスの炎の刃が我の脳天に振り下ろされた。
『うおああああああああああああ!!!!!』
凄まじい激痛が走る。このまま真っ二つに斬られればその程度では済まなくなる。
『ダークロード!!!』
オベイロンがすぐに我を救おうとする。まるで我を仲間のように扱ってくれる。まあでも実際は違う。我はオベイロンと仲間にはなれない。なってはいけない。オベイロンは英雄、我は災害であり道具でしかない。
こんな感覚は初めてだ。
誰かが自分を助けようとしてくれること。
そして、思い出してしまった。我が殺してしまった精霊もきっと誰かを助けようとしていたことを。
そんな精霊が一体どれほどいただろうか。我はどれだけの思いを踏みにじってしまったのだろうか。
苦しくて苦しくてしょうがない。
我は愚かだ。
我は、我は――――。
『くっ……うおおおおおおおおおおお!!!!!』
オベイロンに――我が友に勝利を。
『な、なんだ!?』
我は痛みを堪えながら形をスライムのように変え、プロメテウスの剣に纏わりつく。
『ダークロード?』
熱い、熱い!!!!!
『は、離せ!』
離れたいのは山々だが、そうもいかない。むしろこのまま我の体積を増やしてやる。
『ダークロード、何をするつもりだ!』
我はプロメテウスを飲み込むほど体積を伸ばした。
『なんだこれは!? 気色悪い!』
振りほどこうと抵抗するが、何の成果もないまま身体全体が黒に呑まていく。
『オベイロン! 今のうちに我ごとこいつを斬れ!』
『何を言ってるんだ! ダークロードも真っ二つになるぞ!』
『だからそれでいい!』
『それでいいって、まさか自分を犠牲にして――』
『やれ! オベイロン!』
『し、しかし――』
なぜそんなに躊躇う? 今は味方とはいえ、我は貴様らの国を滅ぼそうとした悪魔だぞ。ここで厄介なこいつと一緒に斬れば一石二鳥だろう。
『いい加減に我に纏わりつくなああああああああああああああああああああ!!!!!!』
プロメテウスはそう叫びながら暴れ回り、振りほどこうとする。
『無駄だ! 我の身体は伸縮可能だ! 貴様がどれだけ力を使っても我から離れることはできぬ!』
『ならばこれならどうだ!』
プロメテウスはダークロードの体内にマグマの壁を出現させた。
『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』
身体の内側にマグマの壁が密着して溶けそうだ。まあ我はマグマで溶けることはないが、痛覚で意識を失いそうだ。そうなれば我の拘束も解けてしまうだろう。
『ダークロード!!!』
またオベイロンは我のために叫ぶ。なぜそんな目をする?
いや、痛すぎてそれどころではないな。このまま我ごとオベイロンが斬ってくれたら楽なんだがな。
いっそ我が拘束を解くか。するとこいつはまた暴れ出すだろうが、オベイロンとブリュンヒルデなら勝てない相手ではない。きっと我なしでも勝利を掴むことができる。
そう思ったのだがな、どうやらまだ外にも敵が大量にいる。
だから少しでも二人の体力を温存しておく為にも、我が犠牲になって前へ進んでくれれば――
『ダークロード!!!』
オベイロンは怒るように叫んだ。
『どうせ貴様は、自分を犠牲にして少しでも我々の体力を温存などと考えているんだろうがな! そんなの私が許さん!!!』
なぜだ、オベイロン。そんなに我の事を大切に思っているのか。
『なぜなら――』
なぜなら?
『貴様の罪はまだ終わってない!』
『!』
我の……罪が……?
『はっ、まさか貴様を心配するとでも思ったか! そんなわけないだろ、この外道が!!!』
しっかり罵られる我。
『貴様の罪を、たかだか1ヶ月程度で償いきれるとでも思ったか! 笑止!! ただでさえ貴様がこれから生きる時間全てを使っても足りないくらいの重い罪なんだ! その程度で楽に死ねるなどと思うなよ!』
『オベイ……ロン』
そうか、我はまだ生きて……。
というか、オベイロン我をそんな風に――
これっぽっちも友達と思われてなかったーーー!!
心の中とはいえ、オベイロンを我が友とか呼んでしまった! 恥っず! 穴があったら入りたい! というか、そのまま影の世界へダイブしたい! そしたら一生その中でのたうち回ってやる!!!
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
恥ずかしさで悶えていると、つい拘束を解いてしまい、プロメテウスは自由の身を取り戻してしまった。
するとプロメテウスは鬼の形相で我を掴んだ。
『まずは貴様から殺してやる』
凄まじい殺意が強く刺さる。もう我には抵抗する力などない。
だが――
『いいのか?』
我はニヤリと笑う。まあ我は全身黒だから表情などこいつには見えてないだろうが。
『何がだ!』
『我ばかりに構っていていて』
我のその言葉で察したのか、プロメテウスはすぐに後ろを振り向こうとしたが――
そこにいるのは“光の戦士”と“元宇宙最強の女戦士”。
二人の英雄が、炎の神を――
『『喰らえ!!!!!』』
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