第598話『精霊軍VSプロメテウス①』
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プロメテウスは分析した。己の発する熱気だけではあの羽虫共は殺せないと。ならば自らの手で葬るしかない。
炎の神は纏ったオーラを掴むと、一部分だけ剣に変貌した。
『引導を渡してやろう』
剣を振り下ろすと同時に刃から燃え上がるように炎を纏い始めた。
オベイロンは冷静にその剣を氷の剣で受け止めた。
力だけならプロメテウスの方が上だが、戦闘技能はオベイロンの方が圧倒的に上だ。
『なにっ!?』
オベイロンは炎の剣を弾き飛ばし、隙だらけのプロメテウスを斬り刻んだ。
『ぐああああああああああああっ!?』
痛恨のダメージを受けたプロメテウスだが、倒れることもなくオベイロンに睨み返すと、すぐにまた同様に剣を生成し、オベイロンに斬りかかる。
『この羽虫がああああああああああああ!!!!!!!!』
振り下ろされる刃。オベイロンはすぐに剣で受け止めるつもりだったが、その前にブリュンヒルデがプロメテウスを蹴り飛ばした。
『今だ!』
オベイロンは先ほどと同じようにプロメテウスを斬って斬って、熱い炎を氷で封じ込めるように斬り尽くした。
『おのれぇ……』
確実にダメージは与えているものの、プロメテウスの炎は尽きず、倒れる気配もない。
『さすがは神を名乗るだけのことはある……か』
オベイロンは初めてプロメテウスを賞賛した。
他の神もそうだが、プロメテウスは戦闘する機会が少ない故に戦闘経験が浅い。とはいえ神に見合う能力は最初から授かっている。
『次は私が攻める』
そう言ったブリュンヒルデは返事を待たずして、プロメテウスに攻撃をしかけた。
拳を振りかざすブリュンヒルデ。先ほどの猛攻撃で怯んだプロメテウスは回避する動作すらできずに、攻撃を許してしまう。
『ぐっ……!』
『まだまだ行くぞ』
ブリュンヒルデはマシンガンのように次々と拳を繰り出す。
一発一発が重い。肌にめり込む度に強い痛覚が脳を刺激する。
プロメテウスにとっては感じたことのない痛みの連続。意識を失うほどではないにせよ、精神が折れそうになる。
(なんだ、これは……なぜこれほどの力を……こんな娘なんぞに……!)
常に上位存在として君臨するのが神だ。人間如きに勝利を渡してはならない。
本来ならば人間に一方的に殴られる事自体もありえない。これだけで十分すぎる屈辱を味わっている。
(我が敗北するなどあってはならない……!)
『うおおおおおおおおおおおお!!!!!!』
プロメテウスが雄叫びを上げると、ブリュンヒルデの氷の鎧が全て砕け散り、柔肌を晒してしまった。
『くっ……!』
世界を溶かすほどの熱気がブリュンヒルデを襲う。さすがの彼女も耐え難く、一旦後ろに下がった。
『ブリュンヒルデ!』
オベイロンは再び彼女に氷の鎧を装着させた。それも以前より更に強化を重ねたものだ。
『悪いなオベイロン、もう一度行ってくる』
ブリュンヒルデは何の躊躇なく、高速で飛び出した。すると、氷の鎧は少しずつ溶けてしまうが、先ほどのようにすぐに肌を晒すわけではない。とはいえ氷の鎧が完全に剥がれるのも時間の問題だ。それまでに決着をつければ敗北する。
『またしても立ち向かうか……ならば!』
プロメテウスは床を殴ると、そこから溢れ出すようにマグマが出現し、そして神の身体を隠すように上へと伸びていく。
『なんだ!?』
プロメテウスの前に“マグマの壁”が現れた。それはまるで彼を守るように、ブリュンヒルデに立ちはだかる。
『フハハハハハハハハ、どうだ! これでさすがの貴様も手は出せまい!』
マグマに触れれば当然ただでは済まない。それは元宇宙最強の戦士ブリュンヒルデといえど例外ではない。
しかし彼女は足を止めることなく再び拳を振りかぶった。それも時間をかけて。
『なぜ足を止めぬ!? マグマだぞ!?』
(血迷ったのか? それとも無謀か)
プロメテウスはそのまま“マグマの壁”を盾に様子を見る。
――ブリュンヒルデの拳に風が纏った。
『何だ?』
それはどんどん大きくなり、やがて突風へと姿を変える。
『フン!!!!!!!!!!!!!!!』
溜めた拳を突き出すと、マグマの壁は欠片も残さず飛び散り、後ろにいたプロメテウスに盾だったマグマが直撃する。
『うおっ!!!』
思ったよりもマグマが効かなかったプロメテウスは、自分についたマグマを振り払うと、弾丸のようにオベイロンとブリュンヒルデに向けて発射する。
『させるか』
マグマの弾丸はオベイロンとブリュンヒルデに当たることなく、変幻自在のダークロードが壁になったことで免れたのだが。
『熱いいいいいいいいい!!!!!』
『ダークロード!』
心配の声を上げるオベイロン。
『いや気にするな、ただ熱いだけだ』
ダークロードにとってマグマは熱湯に触れた程度のダメージで済むようだ。
『どこまでも邪魔を!!!!!!!』
プロメテウスはダークロードに剣を振り下ろす。
『ダークロード!!!』
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