第597話『燃えたぎる“記録”』
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※2025/08/23誤字修正しました。
《炎の神の■■》
我の名はプロメテウス。神の居城の守護神の一柱だ。
生まれながらにして神に選ばれし者は我の他にもいるが、ゼウスを除ければ我がトップクラスだ。それは今でも昔でも変わらぬ。否、変わってはならぬ。
何故なら、上を目指して争うその様はまるで人間のように醜いからだ。
だから順位を変えてはいけない。ゼウスがトップで我はナンバー2。それでいい。それでいいのだ。
我は人間ではない。人間のようになってはいけない。なってたまるか。
我は昔から地上を観測していた。あの人間共の醜さを、欲する物の為に平気で悪行に手を染める愚かさを――嫌と言うほど目に映したのだ。
中には人間でも善良の者がいると言い張る神もいたが、だから何だと言うのだ。
善良だろうと、どうせ心の奥底では漆黒の悪が眠っていることだろう。動機さえあれば人は人を殺せてしまうのだから。それはたとえ子供であろうと。
あんな人間共に何の価値があるというのだ。世界を侵食するだけの害虫でしかない。
人間などさっさと滅ぼして、我々だけの世界を創るべきだ。それをゼウスに提案したことがあるが、奴は『人間は実験体だ。我々はそれを観測しているだけに過ぎない』と言った。
は? ならば何故いちいち世界を破壊する?
『そういえば貴様には話してなかったな。実は――』
ゼウスから世界の真実を聞いた。だが、これもこれで我には到底理解できない全貌だった。
そうか、まだ上がいるということか。
なるほど、これまでのゼウスの謎の行動にも辻褄が合う。奴は人間をどう思っているのか不明な部分があった。良くも悪くも中立のような気がしてな。だが、これで謎は解けた。
この世界は――
――――――――――
《現在》
力を解放したプロメテウスは天を貫く勢いのオーラを纏い、精霊王オベイロンに立ちはだかる。
この場この瞬間ではプロメテウスが最も強い。この世界全てを焼き壊すことも可能だろう。
そんな神を相手にオベイロンは特に慌てる様子もなく、荒ぶる神の粗相を冷静に見つめていた。
他のギャラリーは世界の終わりを見ているような絶望感に包まれながら、驚愕と恐怖が入り交ざったような表情を浮かべている。
『なんだなんだ!?』
『なんて力だ……』
『まだ力を隠していたのか……』
そんな中、同僚のゼウスは、
『プロメテウスめ、勝手なことを』
憤るわけでもなく呆れていた。どうやらプロメテウスが全力を出す事自体は計画の内にはないらしい。
ヘラは何を思っているのか、オベイロンと同じように一切の表情を崩すことなく見つめている――と思いきや、僅かに口角を上げた。
ダストはオベイロンに加勢しようか一瞬迷っていたが、ゼウスから目を離せない。同じく戦っているルカとシルフも同様だ。
『今はあちらの方が楽しめそうだ』
そう言ってプロメテウスの元へ飛び立ったのはブリュンヒルデだ。
『オベイロン、私も手伝うぞ』
楽しそうに言った。とても神との戦闘中に出す表情ではない。
『何で貴様はこういう時まで楽しそうにしてるんだ』
『それが私の性だからだ』
オベイロンはため息をついた。
『聞いた私がバカだった』
改めてプロメテウスの方を向く。
『オベイロン、こいつは相当強いぞ。だが、貴様がいて、ブリュンヒルデもいて、そして我もいる。ならば勝てない相手ではない』
ダークロードはプロメテウスを分析し、勝利を確信している。
『当たり前だ、我々に敗北などありえない。特にこいつは我が国を脅迫した。この私に聞こえるようにそう言った。ならば、こいつに敗北した時は精霊国が滅ぶことを意味する!』
同盟者の世界を守る依頼は、もはや自国を守る事にも繋がった。実際にプロメテウスが精霊国を滅ぼしに行くかどうかは不明だが、宣戦布告を聞いてしまった以上は始末しなければならない。それが国を守る者の責務である。
『行くぞ!』
オベイロンは光の戦士状態で、プロメテウスに斬りかかったが、近づくにつれて刺すような熱さがオベイロンを襲う。
『うっ!』
オベイロンは一旦距離を取った。
『どうしたオベイロン!』
オベイロンは全身から大量の汗を流していた。それもつい数秒前と比にならないレベルだ。
『なんだこの汗の量は?』
ブリュンヒルデも不自然に思い、驚愕の表情を浮かべたが、すぐに察した。
『なるほどな、奴の周りには異常な熱気が発生しているのか』
まるで太陽がそばにあるかのようだ。迂闊に近づくこともできない。
『人間共よ、焼き尽くしてやる』
ついにプロメテウスが動き始めた。
自分に近づけないことを察してのことか、ただ歩み、熱気という武器で苦しめるつもりだ。ただ殺すだけではつまらない。そんな加虐的な性格が行動に表れている。
『氷の精霊よ、我らを冷やしたまえ
氷の精霊よ、我に氷の力を与えたまえ
氷の精霊よ、我らに氷の加護を与えたまえ
氷の精霊よ、我に氷の剣を与えたまえ
氷の精霊よ、ブリュンヒルデに氷の鎧と氷の小手と氷の靴を与えたまえ』
すると、命令通りに味方全員がプロメテウスの熱気に負けないほどの冷気を授かり、オベイロンは氷の剣を持ちつつ、氷の力を使えるようになった。
さらにブリュンヒルデには全身氷を纏わせた。これでプロメテウスに近づくことができる。
『小癪な』
苛立つプロメテウス。彼の力はもう既に上限に達していて、これで溶かせないなら彼らを戦闘不能にしない限り、焼き殺すことは不可能な状況だ。
『ブリュンヒルデ、ダークロード。俺達であの侵略者を始末するぞ!』
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