第595話『親友との再会』
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『ディーンさーん!!!!!』
ブリュンヒルデに次ぐ援軍がやってきた。この声はルカちゃんだ。少し後ろにカヴァちゃんもいる。さらにその後方にも誰かいるが、何やら誰かと戦っているみたいだ。相手は十中八九ゼウスの援軍だろうな。
『まだ増援がいたのか、小癪な』
ゼウスはルカちゃんに向かって雷撃を放とうとする。
『ルカちゃん逃げろ!!!』
俺はすぐにそう叫んだが、ルカちゃんは微笑みながらゼウスの雷撃をかわし、懐に飛び込み、精霊の力が込められた剣で斬り伏せた。
『ぐっ……何だこれは……魔法ではないのか?』
精霊の力、それはこの世界線にはない概念だ。威力そのものは魔法とほぼ同等ではあるが、ゼウスに知られないというアドバンテージがある。もしルカちゃんが魔法の力でゼウスに挑もうものなら、最高神の能力により魔法の効果はすぐにかき消されていた。だが、今回は“精霊の力”というゼウスの知らない概念を使用したことで、無効化にはならなかった。
『魔法じゃないよ、精r――』
ルカちゃんが“精霊の力”と言う前に、突風の如く現れたダンディな中年男性が口の前で親指を立てた。
『おっと、それは口にしてはいけませんよルカさん』
落ち着いた低音ボイスが安心感と同時に胡散臭い雰囲気を纏う。まあ今回は味方だろうから前者が圧倒的に強いが。
『凄まじく素早い突風……貴様は何者だ?』
『これはこれは、初めまして。私の名はシルフ。ただの“風使い”ですよ』
シルフは“精霊の力”ではなく風使いという言い方で誤魔化した。
『貴様も別世界とやらの人間か――否、貴様は人間ではない、別の生物だな』
ゼウスは己の鑑識眼を発揮した。
『おっと、さすがに気づかれましたか』
シルフはそう言って肩を竦めた。
『我の目は誤魔化せぬ。貴様、亡霊だろう?』
『正解です。私は遥か昔に生まれ、とある理由で現在になって召喚された者です』
『過去の英雄というわけか』
『英雄なんて、そんな大層なものではありません』
『貴様が大層かどうかは力で示せばいいだろう』
ゼウスは改めて構える。
『かかってくるがいい、そこの人間共と組むなり好きにしろ』
『それでは、お言葉に甘えて』
なんか俺そっちのけで神とおっさんが盛り上がってしまった。ルカちゃんもそこに加わる感じだ。それに比べて陰キャの俺なんか空気だから仕方ないよね。べ、別に泣いてなんかいないんだからね!
それよりもカヴァちゃんはどこ行った? ルカちゃんのすぐ後ろにいたと思うけど……。
戦闘中に余所見など絶対タブーだが、シルフとルカちゃんがゼウスと戦っている内に辺りを見渡してみるか。
すると、さっきから隠れていたシュタインと会話をしていた。二人は異なる世界線同士の人間なので当然接点などないはずだが、何やら感動の再会とばかりに泣きながら抱き合っている。
――俺はもう知っている。カヴァちゃんとシュタインの共通点を。ルカちゃんとの関係を。
ゆっくり彼女達を見守っていたいところだが、今はゼウスとの戦いに集中しよう。空気とはいえ俺だって一応ゼウスと戦っていたわけだし。
ゼウスは毎度お得意の雷撃をシルフに放った。シルフは突風で雷をお返ししようとするも、風の隙間に細い雷が入り込み、シルフを貫こうとするが、それをルカちゃんが剣で弾いて阻止した。
『シルフさん、大丈夫?』
『ええ、さすがに危ないところでしたが助かりました。ありがとうございます』
『お互い様だよ』
二人のチームワークが遺憾無く発揮されている。毎日欠かさず戦闘訓練をやってきた者の動きだ。さすがだな。
『これならどうだ』
ゼウスは一度に放射する雷撃の数を増やしてから解き放った。まるでタコの足のような雷撃がルカちゃんを襲う。
『ヤバい、捌ききれない!』
彼女の攻撃速度ではせいぜい一度に二つの雷撃を撃ち落とすのが限界だ。かといって隣にいるシルフも先ほどの事で風の力だけでは防げないことが判明している。
『ルカちゃん!』
それを俺がまた呪術で全て吸い込む。するとゼウスがまた怒りを顕にする。正当に戦ってるだけなのに、こいつ俺のこと嫌いすぎだろ。
『貴様……一度では飽き足らず、二度も……おのれ神への冒涜にも程がある!!!』
ゼウスがそう怒鳴り散らすと、器用なことに“雷の虎”を作り出し、本物の獣のように雄叫びを上げてから俺を襲う。
わーお、俺にだけ殺意高ーい。
『みんな魔法を動物にするの好きだよな!』
発想自体はメジャーだが、ゼウスの魔法は次元が違う。どんなに強い雷魔法を放ってもゼウスの魔法が食ってしまうだろう。
だからこその呪術だ。これはラピスとラズリ、そしてノルン様に教わった技術だ。
広い意味では魔法も呪術とされるらしいが、それはあくまで言葉の意味でしかなく、この世界では別物とされている。
魔法は魔力を消費して発動するもの、呪術は特殊な道具を使って発動するもの。手軽に出せるのは前者だが、後者ならばゼウスに知られていないので、確実に攻撃することができる。呪術に必要な道具はラピスとラズリから貰った“コレ”がある。これなら絶対にバレない。
じゃあ全員に呪術教えればいいじゃんと俺も最初は思ったのだが、呪術を覚える人が増えれば増えるほどゼウスの耳に入る可能性が高まるからだ。もしも彼のスキャンした全人類の中に呪術を覚えている者がいれば、呪術という概念を知られて武器が一つ減らされることになる。
まあ最悪呪術なんて覚えてなくても、スキャンさえ避ければいいのだが、一つでも多くの武器を持っておくに越したことはない。現に俺はそのおかげで、ルカちゃんを守りながら、あの最高神のゼウスを追い詰めている。
全てうまくいっている。これもノルン様やみんなのおかげだ。
――俺達は神を倒せる。
『ゼウス、この程度で俺を倒せるなんて思うなよ』
襲い来る“雷の虎”を呪術で消し去った。
『なんだそれは……なんだそれは……ありえぬ、ありえぬ……』
最高神とは思えない狼狽え方をしている。この状況がゼウスにとって如何にイレギュラー塗れなのかよく分かる。これまで世界の破壊に抵抗した者はいても、傷だらけになるなんて考えもしなかっただろうな。
とはいえ、さすが神というべきか、いくつか攻撃を食らわせてもまだ倒れる気配はない。
『……フン』
先ほどから大人しいブリュンヒルデが口を開いた。そういえばさっきから戦ってないな。
『神と聞いたからどんなに強いのかとワクワクしていたが、この程度か。正直ガッカリだ』
多人数で戦っているとはいえ、ブリュンヒルデは傷一つついていない。しかもルカちゃんとシルフが参戦してから拳の一つも出していない。この戦いに退屈を覚えたのかもな。
これは思ったよりも俺達が強くなりすぎたのか、それとも神の居城の神の実体は、大規模な破壊できるだけで戦闘経験が浅かったとか。
まあ、まだまだ色んな考察ができるが、何にせよゼウスもこれで終わりだな。
あとはプロメテウスか。
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