第594話『神への復讐』
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俺はここに来るまで、途方もない時間の中で果てしない研鑽を積んだ。全ては世界を救うために、友達を守るために、愛する人を守るために、そして、“あいつ”と話をするために――
『オーディン、貴様も我の邪魔をするか』
『違うな、お前が俺の邪魔をしてるんだ!』
俺は禍々しいオーラを纏う剣を生成して即ゼウスに向けて斬撃を放った。
『ぐおおおおおおお!!!』
ゼウスは攻撃をまともに受けると、よろけて膝をついた。それから少し時間が経っても立つ気配はない。
――神はこれまで膝をつくどころか傷一つすら与えられなかった。どんなに強い戦士でも成し得なかった偉業だ。
『お兄ちゃん……?』
ブロンズ様は命を救われた喜びよりも、信じられないものを見たような目で俺を見る。無理もない。だって俺はこの時代で言うと数時間前に殺されたばかりなのだ。その本人が今ここで生きて、しかもあのゼウスに攻撃を与えている。
聡明で心が読める彼女でさえ、夢でも見てるのではないか、と混乱していることだろう。
『ああ、俺だよブロンズ様』
恐らく、俺の心を読んで俺が本物だと確信を得たブロンズ様は流れ星のような涙を流し、堪らず俺を抱きしめた。この涙にはどのような感情が込められているのか。その答えはもう分かっている。
『よお、ダストッち。待ってたぞ』
ゴールドちゃんは逆に驚きもせず、待ってたかのように、ヘヘッと笑っていた。
『ゴールドちゃんも久々だな、俺からしたらだけど』
俺は数時間前まではここにいたからな。
『ううん、久々だよ。ディーン先生』
その名で呼んだということは、彼女は本当に一万年前の記憶があるのか。君は果てしなく長い時間、“その役割”を続けていたんだね。
『ゴールドちゃん、いや黄金』
あえて昔の名で呼んだ。
『ん?』
俺はゴールドちゃんの頭を撫でた。
『よく頑張ったな』
するとゴールドちゃんは下を向いて、少し無言になった後、涙目で言った。
『ああ!』
最後に彼女は笑った。それはゴールドちゃんとして、でもどこか黄金らしさもあった。
『ゼウス……?』
横目で見ていたプロメテウスは、かつてない負傷をしたゼウスの姿を見てひどく驚愕な表情を浮かべた。
『今だ!』
プロメテウスと対峙していたアミさんは隙をついたと、プロメテウスに攻撃する。
『ぬぅ!』
たとえ神でも無防備になれば攻撃も通じる。とはいえ、それだけで倒せるほど甘くはない。プロメテウスは傷こそ付いたが、ダメージはそれほど大きくはなく、むしろ大嫌いな人間などに傷つけられた屈辱で殺意が増す。
『この女!』
プロメテウスはこれまでにないほどの熱い炎を手のひらに装備すると、その手でアミの頭を掴もうとする。そうなれば脳みそごと身体全体が灰となるだろう。
回避しようと思えばできる。そう思ったが――
『ずいぶんと熱苦しいな』
『!?』
突然現れた何者かが、プロメテウスの腕を剣で斬り落とした。
『何……!?』
プロメテウスが落とされた神の腕に視線を落としていると、その間にいくつもの斬撃がプロメテウスを襲う。
『……ぐ、ぐおおおおおお!!!!! わ、我にこのようなダメージを与えるとは! 貴様! 何者だ!』
プロメテウスは、もはや怒るよりも焦りと恐怖の表情が表れている。よほどこれまで苦戦したことがないのだろう。どうだ、痛かっただろう?
俺は横目であいつがプロメテウスを圧倒している光景に悦を感じながら見ている。もちろんゼウスとの戦いを第一優先に集中している。
おっと、そのゼウスもかなり焦っているようだ。自分だけではなく、プロメテウスが負傷している姿を目撃したからだろうか。もしかしたらゼウスとプロメテウスには戦闘能力においては絶大な信頼関係があるのかもしれない。
『私の名か。この世界で名乗ってもあまり意味はない気がするが……まあ答えてやろう。よく聞くがいい、私の名はオベイロン! 貴様らから見て異世界の精霊国の王だ!』
オベイロン、約束通り俺達を助けに来てくれたんだな。
『そしてそのオベイロンの相棒である我の名前はダークロード! 元影の王だ!』
黒くて小さい影の人形のような奴がオベイロンの肩から得意げに自己紹介した。まるで相棒的なポジションだな。
『精霊国の王に影の王だと……? し、知らぬ……そんな王など聞いたことがない……』
プロメテウスは頼るようにゼウスに視線を向けた。どうやらゼウスは情報屋の役割を担っているようだが、生憎今は俺の相手で手一杯だ。しかも、この後来る援軍に更なる苦戦を強いられるだろうしな。
『おいオベイロン!!! 貴様だけ先に戦ってるなんてズルいじゃないか!!! 私も今参戦するぞ!!!』
少し遠くから聞き覚えのある勇ましい女の声が聞こえた。この声を聞いただけでより一層の安心感を得た。
――来たか、元宇宙最強の女。
『ブリュンヒルデ……待ってたぞ!』
ブリュンヒルデは上空を駆け、ゼウスめがけて蹴りをしかける。
まるで隕石のようだ。それはゼウスの脳天に直撃した。
『ぐっ……!』
ゼウスは膝をついたまま片手で頭を押さえた。こんな醜態の連続記録を重ねることになるとは本人も思わないだろう。
『な、何者だ……?』
痛みを堪えながら、蹴った彼女に視線を向ける。
『私か? 私の名はブリュンヒルデ! 元宇宙最強最強の戦士だ!』
ゼウスの前にブリュンヒルデが立った。その横にちょうど俺がいる。
『む、ダストか。あの時以来だな!』
ブリュンヒルデは笑いながら俺を見る。きっと“あの戦い”を思い出しているのだろう。
『ああ、久しぶりだな』
優勢とはいえ、この状況で余裕を保てるほどの器はないので真剣な表情でそう返答した。
『ダスト様!』
置いてきぼりだったはずのあおいちゃん、パーシヴァル、シャイはいつの間に半壊の魔王城に入って、既に倒れて意識を失ったたくさんの負傷者の手当てをしていた。
一刻も早く治療しなければ命に関わると考えて、加勢する前に仲間の命を優先したのだろう。その判断をしたのはあおいちゃんかな? さすがだな。
『負傷者の手当ては任せます! 俺は神を名乗る馬鹿共を止めます!』
あおいちゃん達、救護班は頷いた。
俺の先ほどの発言がよほど気に障ったのか、ゼウスは強い怒りを顕にする。
『貴様、今何と発言した?』
ダダ漏れた殺意を感じる。まさに神の逆鱗に触れたみたいだ。
俺はあえて笑いながら挑発をした。
『聞こえなかったか? ゼウス。俺はお前みたいな偉そうで自分だけは絶対正しいとか思いながら平気で人の安らぎを壊すような奴を――俺は馬鹿だと言ったんだよバーーーーーーーカ!!!』
『黙れええええええ!!!!!』
噴火を起こしたように、ゼウスは上空のいくつもの雷を引き寄せ、それを束にして俺に向けて投擲した。
ただでさえ落雷は人間の目で追えるような速度ではない。それが束になっていると考えると刹那の時に100回以上は撃たれるだろう。ゼウスの雷を掴んだ攻撃も例外はない。何ならそれ以上速いかもしれない。
だが、俺はそれを吸収した。
『な……何が起きた?』
『今日はよく驚愕の表情を見せてくれるな、ゼウス』
さっきからそうだが、ゼウスの神らしからぬ表情見て、俺は思った。こいつも人間らしい部分があるのだと。それともそういうシステムで動いているだけか。
『貴様、それは魔法ではないな。一体何をした?』
『さあ? 企業秘密だ』
まあ言っても支障ないとは思うが、ゼウスの事だ。概念を知られたら効かなくなる可能性もある。念の為、伏せておこう。
ゼウスの雷を吸収したこの技の正体は呪術だ。この為だけに作られた秘密の術だ。
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