第592話『■の国の墓場』
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宜しくお願い致します。
――遡ること数十分前。
世界は雷に打ち砕かれている中、■の国だけは何故か特殊な結界が張ってあるおかげで、ゼウスの裁きを全て防いでいる。
しかし、かつて栄えていた■の国は現在人気もなく、廃墟の建物がただズラリと並んでいる。
そんな国に二人の冒険者が現れた。名前はダイゴとミユウだ。二人はブロンズ達と共にアジトに住んでいたが、任務の為、長らく別行動をしていた。
今回もアクタからの指示でこの国にやってきた。
■の国に到着した彼らは罰当たりにも、ある墓標の下を掘り起こした。それは決して私利私欲のものではなく、それが世界を救う為に必要な任務だからだ。
『間違いない……この人は――』
掘り起こした棺桶の中には、見慣れた男が眠っていた。死人のようだが、極めてキレイなまま保存されていた。とても死体とは思えない、今にも目を覚ますんじゃないかと思うほど――否、突然死体は本当に目を見開いた。
『!?』
瞼を上げる屍に驚愕する二人。それも当然だ。この世は摩訶不思議なファンタジーな世界ではあるが、死体が目を覚ますという前例はない。
目を覚ました彼は眠りから覚めたように腕を伸ばし、辺りを見渡す。
『ここは……そうか、とうとう戻ってきたのか』
景色を見終えると、次にダイゴとミユウに視線を移した。
『ダイゴにミユウか。俺を掘り返してくれてありがとう』
彼は二人に礼を言うが、ダイゴとミユウは信じられないものを見たような反応をするので精一杯でまともな返答ができない。
少し間を置いて、やっとミユウが喋った。
『何で貴方が……ダストさん』
――――――――――――――――――――
一万年前、俺はノルン様によって別次元へ転送された。詳細は省くが、そこにいればゼウスの裁きを受けることなく、やり過ごすことができる。俺と、その空間にいたラピスとラズリ、そして村正と共に一万年の時を過ごしつつ、ゼウスを倒すための修行と研究が行われた。
その空間から別の空間に行くこともできたので、時には知り合いがいる世界線にお邪魔したこともあった。例えばオベイロンのいる精霊国とか。
かつてない熱量を注いでいる内に一万年が経ってしまった。本来ならとっくに寿命が尽きているが、この空間にいれば寿命は減らず、永遠に生きることができるらしい。が、それもこの空間が維持できればの話。
ノルン様は俺を確実に未来に送る為に一万年分の魔力をこの空間に注いだらしい。逆に言えば、一万年経ってしまえば、この空間も終わりの時を迎える。
なので、その前に俺は準備を済ませて、最終的な転送先へ移転した。ラピスとラズリ、村正も後で転移するらしいが、どこに行くのかは教えてくれなかった。
こうして俺が転送されたのは棺桶の中。土に埋まっているのだが、元々死体はなく、代わりに俺が死体のように眠っていた。
――そして、今に至る。
目の前にはダイゴとミユウがいた。誰かに頼まれたのか、どうやら棺桶を掘り起こしてくれたようだ。
上を見上げると、灰色の雲が空を覆い尽くしている。しかも常に部分的に光を放ち、いくつもの雷を大地に落としている。まさに世界の終わりだ。
『隊長……じゃなかった、ダストさん。何でこんな棺桶に入ってたんですか?』
未だ俺を隊長と呼ぶミユウに俺は答えた。
『俺も分からない』
『えぇ……』
何で分からないんだよと言いたげなミユウ。当然の疑問だが、実は俺も『君を含めた四人を棺桶の中に転移する予定だよ』としか説明を受けていない。
『俺が棺桶に入っていた事はそんなに重要じゃない。ただ、俺は世界を救いに遥か昔の時代からやってきた。それだけだ』
棺桶は手段に過ぎず、目的を簡単に説明した。
『え、それって――どういうこと?』
二人共、俺の言う事が全く理解できていないようだが、彼らも決して理解力が低いわけではない。タイムトラベルという前例が無さすぎるだけだ。
『悪いが、説明してる暇はない』
今は魔王城がゼウス達に襲われている頃だ。一刻も早く向かわなければ、全滅は免れない。だが、俺だけが行ってもゼウス、プロメテウス、ヘラを相手にするのは無理がある。
俺は掘り返された土の隣の墓地に向けて手をかざす。具体的には、まだ地中にある棺桶を重力魔法で掘り起こす。
『目覚めろ』
すると、地中から浮上するように異なる棺桶を三つ取り出した。
『棺桶が……』
『また掘り返された……』
『しかも三つも……?』
『罰当たりにも程があるだろう』
呆れたようにダイゴは言った。でもお前らもさっき俺の棺桶掘り起こしたろうが。
まあ確かに罰当たりではあるし、この世界のどこの国でも墓荒らしは重罪だ。現時点で秩序のある平和な世界であれば、俺は重罪人として追われることになるだろう。
だが、今はそれどころではない。世界が滅びる寸前の時にルールもクソもない。
『……』
ラピスとラズリの説明によると、それぞれの棺桶の中には、あおいちゃん、パーシヴァル、シャイが眠っている。ノルン様によって、彼女達も俺とは異なるルートで棺桶の中に入るように調整したようだ。
俺は棺桶を順番に開けた。
まるで眠り姫のように目を瞑り続ける三人。全員顔が良いせいで余計に美しい光景だと思ってしまう。しかし、そんな絵本のような光景は間もなく見納めとなる。
『ん……』
ほぼ同時のタイミングで三人が目を覚ました。
『ここは……どこですか?』
『あおいちゃん、ここは火の国ですよ』
『火の国って、“あの”火の国ですか?』
『はい』
『あれ、こんな暗い雰囲気でしたっけ? 何かやけに暑いですし、違う国じゃないですか?』
あおいちゃんがそう思うのも無理はない。むしろ勘違いして当たり前だ。
俺達のよく知る火の国は、現代日本の都会のような場所だ。行方不明になった魔王を連れ戻す為に行ったのも火の国だった。
だが、その火の国はここの事ではない。
『その通りですあおいちゃん、そこは火の国ではなく、一万年前に俺達が住んでいた街を模した日の国なんです』
第592話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
更新に時間がかかってしまい、申し訳ございません。まだ調整も終わってないので、なかなか難しいですが、前回の後書きでも言った通り、公開できる範囲で更新していきたいと思います。
次回も宜しくお願い致します。




