EPISODE③『精霊と妖精とダークロード終 その後⑰』
お待たせしました。
執筆が完了しました。
前回の後書きでも言った通り、今回の話でこのエピソードは最終話となります。地味に長い間、付き合って下さりありがとうございました。
宜しくお願い致します。
※今回は文字数多めです。
ブリュンヒルデとの決闘から三ヶ月が経過した。
とある人物からの手紙がオベイロン宛に届いた。
『ノルン殿から連絡が来たのか!?』
手紙にはノルンよりと書かれていた。偽者の可能性を考慮しつつ、手紙を開いた。
――――――――――
オベイロンさんへ
貴方がこの手紙を読んでいる頃には、女神ノルンはもう存在しないでしょう。ですが、貴国との繋がりが消えたわけではありません。こちらの世界線は滅びましたが、今後とも友好関係を続けていきたい所存です。
本題に入ります。例の作戦の件です。オベイロンさんに話した通りに、今からちょうど一年後にオベイロンさんの豪邸の前にゲートを設けます。そのゲートは一万年後の我々の世界にワープするように設定されています。
ただあなたがたが帰れる保証は約束できません。理由は、帰り用のゲートは再設定すること自体はできますが、ゼウスによる妨害を受けてゲートが作れなくなる可能性があるからです。
なので、無理に助けてほしいとは言いません。よく相談して決めて下さい。その結果、もし一人も助っ人に来なくとも、あなた方を恨むことはありません。
もし助けに来て下さるのなら、その時は盛大な報酬をお約束します。
相手は最強の神ゼウス。おそらくオベイロンさんが今まで戦った強敵をはるかに凌ぐでしょう。それに加えて厄介な幹部達もいます。彼らも全て神の力を持っています。とてもではありませんが、どんな猛者を引き連れても、戦力差は縮まらないでしょう。しかし、勝機はあります。
もうすぐ彼が、最高神ゼウスさえも倒してしまう勇者が現れます。ですが、そんな彼でさえ全ての神を倒すのは不可能です。なので、皆様にはゼウス以外の神を相手にしてほしいのです。うまくいけば、我々は勝利をつかむことができます。
再度のお願いとなりますが、どうか我々に協力頂けると幸いです。ですが私は皆様の幸福を第一に考えております。ご無理はなさらずに。
P.S.手紙はこのように真面目に書くべきです。くれぐれもふざけた手紙なんて書かないように。どこぞの誰かさんは、拝啓を背景とか、wとか書いてました。そういうのはSNSに書けよカス。って思いましたね。オベイロンさんはそういう方じゃないと信じております。本当にマジで。間違っても変な手紙書かないで下さいね。あのバカ女みたいになってはいけませんよ。約束ですよ。もし破ったら、一生説教しまくります。
ノルンより
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『ノルン殿……』
手紙を読み終えたオベイロンはただ黙り込んだ。『真面目なのかふざけてるのかはっきりしてくれ』と口には出さずに心でツッコミを入れたのだった。
ダークロードは最初に『うわぁ……』と失望の声を上げ、続けて感想を口にする。
『追伸長すぎだろ。なんというか、このノルンとやらはもしやすごくストレスを溜めやすいタイプなんじゃないか?』
『おい滅多なことを言うな。もしノルン殿に聞かれていたら、頭上からタライとやらが落ちてくるらしいぞ!』
『いや、どういうことやねん』
思わず関西風にツッコむダークロード。
『で、オベイロン、どうするのだ?』
ダークロードが真面目にそう聞いた。
『そんなのもう決まってる。我々はノルン殿の世界を助けに行く! 文句あるか?』
オベイロンは、そう言ってダークロードに軽く睨みつけた。
『あるわけない。我は貴様の行く道を共に歩くだけだ』
――――――――――
オベイロンは幹部たちに緊急招集をかけ、手紙の内容を共有した。
助けに行く事自体を反対する者はいなかった。ただ誰が出撃し、誰が残るのかという議論は日が暮れるまで続いた。
帰れないかもしれない。それは犠牲になると言っているのと何も変わらない。戦士であれば命を投げ出す覚悟はできているが、かといって全戦力を投入してしまえば、精霊国の防衛力が地に落ちてしまう。
それに敵が強すぎる。それもダークロードをゆうに超える実力だろうと推測した。
『だからみんな、この戦いに無理して参加する必要はない。覚悟のある者だけついてきてくれ』
すると、
『覚悟ならもうあります!』
『何があっても、オベイロン様についていくと決めましたので!』
全員が戦いに参加すると表明した。その中に誰一人として怯えている様子はない。
『みんな……ありがとう』
オベイロンはそう言って頭を下げた。
しかし現実問題、戦力を全員参加させるわけにもいかない。幹部がいない状態で攻め込まれたら終わりだ。なので、戦力の中で選抜メンバーを決めて、残りのメンバーは防衛に徹してもらうこととなった。
選抜メンバー
・オベイロン
・クラウディア
・アレーシア
・バルカン
・リックス
・橋本ルカ
・ルカ・ヴァルキリー
・ウンディーネ
・モーガン
・ノーム
・シルフ
・サラマンダー
・ブリュンヒルデ
・イカロス
・パトラ
その他大勢
『以上、選抜メンバーとして決定する。意義のある者はいるか?』
『意義ありません!』
『よし、ではここにいない選抜メンバーについてら私から伝えておく。皆、今日はありがとうな。では解散!』
こうして選抜メンバーは“その時”の為に修行を重ね、長いようで短い時を過ごした。
――――――――――
《光の戦士視点》
――ついに、“その時”が来た。
選抜メンバーは十分な装備を整え、ゲートの前に凛々しい表情で立っている。主に囚人部隊が選ばれたので、九割ほど宇宙侵略者共だ。
犯罪者ばかりでも、周りには戦士を見送る者たちでいっぱいだ。
王である私は前に立ち、剣を振りかざした。
『これより我々は戦場へ向かう! 自分達の利益ではなく、友を救う為に武器を取るのだ! だが残る者にも重大な役目がある! 我々が居ない間、この国を守ってくれ!』
大地が震えるほどの歓声が上がる。
『必ず勝利を掴み、帰って来る! それでは諸君! また会おう!』
振りかざした剣を鞘に収め、踵を返す。そして私は真っ先にゲートの中に入った。
歩んだ先は、天井から床まで全てが宇宙空間のデザインを採用した廊下だった。
これ歩けるのか、それ以前に息ができるのか、などと思ったが、全て杞憂だった。
それからすぐに、後ろから続々と選抜メンバーが入ってきた。一面宇宙空間を見た瞬間の反応はそれぞれ異なっていて面白いと思った。
『この先にダスト達がいるんだな』
思えば、ダスト達の世界線に入ったのはこれで三度目だ。一度目はルカの親の敵討ち、二度目は大会とやらに呼ばれた時、そして三度目は――友達を助けに行く為に。
『みんな、行くぞ』
全員ではないが、かなりの人数がしっかりと頷いてくれた。
『早くディーンさんを助けに行きたい』
『パーシヴァルさんやあおいさんもね』
ルカ達も精霊国に来てからずいぶんと成長した。戦闘能力だけではなく身体つきも少し大人の女性に近づいている。こんな姿をダスト達が見たら、どんな反応をするかな。
と言いたいところだが、それどころではないか。まずはゼウスとやらを倒してからだな。
『その神とやら、私よりも強いらしいじゃないか。戦う時が楽しみで楽しみで夜も寝られなかったぞ』
『君は相変わらずだね』
ブリュンヒルデとモーガンが会話している。私語は厳禁というわけではないので、私は放置している。それ以外のメンバーは緊張感をしっかりと持っているのか、全然喋らない。たった二人の会話よりも足音の方が勝っているくらいだ。
『ん? あれは光か』
ゲートの果てには神秘的な光が埋め尽くされている。分かりやすいゴールだ。
一度目の転移は独自のものだったので多少荒かったが、今回はノルン殿が丁寧に設定してくれたおかげで、スムーズに進むことができた。
『ゲゲッ! 我、光超苦手……』
私の肩にいるダークロードが光に拒絶反応を示した。
『あれは別に浄化するやつじゃないぞ』
だが、確かに浄化するのではと思うくらいには神々しかった。
『みんな、この光を超えたらいよいよ戦場だ』
『私はもうウズウズしてしょうがない、早く行こう!』
『落ち着けブリュンヒルデ。すぐに行くから』
私はコホンと咳払いをすると、続けてこう言った。
『これだけは約束してくれ。みんな生きて帰ると』
『へぇ、それは私達のような犯罪者にも言ってくれるのかい?』
モーガンが皮肉めいた発言をする。
『ああ、もちろんだ』
私は真っ直ぐに目を合わせて答えた。
『お、おぅ……わ、分かったよ……』
思ってた反応と違ったのか、モーガンはたじろいだあと、口を塞いだ。
『この中に死んでほしい奴なんて誰一人としていない。たとえ犯罪者であろうとな』
今一度皆の顔を見渡す。様々な表情をしているが、きっと心は一つだ。
『我々は強い。どんな相手だろうと絶対に勝つ!』
私は剣を抜いた。そして――
『――行くぞ!!!!!!』
我々は勢いよく光の中へと足を踏み入れた。史上難関で最悪の戦場へと、――いざ参る。
ここまで見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回ですが、いよいよ最終章となります。ただ、まだ準備ができておりません。申し訳ないのですが、もうしばらくお待ち頂けると幸いです。
すみませんが、宜しくお願いします。




