EPISODE③『精霊と妖精とダークロード終 その後⑭』
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『ゲホゲホッ!』
手痛い攻撃を喰らい、抉れた大地に身体を強打したオベイロン。骨が何本か折れただろうか、とても動ける状態ではない。
『治癒の精霊よ、我の傷を癒やしたまえ』
治癒の精霊は提示された全ての試練をクリアしたことにより得た古の精霊術だ。治癒の名に恥じない回復力を誇る。
オベイロンの傷や折れた骨など諸々回復した。
『ふぅ……』
一息ついたオベイロンはすぐに立ち上がり、ブリュンヒルデに斬りかかる。
『さすがにこれだけで終わる男ではないよな』
ブリュンヒルデはそう言って、ニヤリと笑った。
『ふふふ、いいぞ。私がこれだけ長く戦えるのも珍しい、実に滾ってくるものだ!!!』
襲撃するオベイロンに、ブリュンヒルデも嬉しそうに迎え撃つつもりだ。
『また回避する気配がない。貴様は力比べが好きだな』
ブリュンヒルデは大きく振りかぶった拳を突き出した。
またあの風圧が来る。弾き返すこともできないので、正面からではとてもブリュンヒルデに攻撃が届かない。
(さすがは宇宙最強と呼ばれた女だ。ダストはブリュンヒルデによく勝てたものだ。こんなの世界中の戦士を集めても勝てる気がしない。これまでの私ならばな)
『風の精霊よ、我に風の力を与えたまえ。風の精霊よ、重ねて我に風の力を与えたまえ。風の精霊よ、さらに重ねて我に風の力を与えたまえ!』
すると、オベイロンはありえない速さで、ブリュンヒルデの背後に回り込み、剣を縦に振った。
あまりの速さに反応が遅れたブリュンヒルデは、咄嗟に拳で防御した。
『ぐっ……!』
ブリュンヒルデの拳は異常な硬さを誇る為、もはや盾として機能してしまうほどだが、今のオベイロンの攻撃力はそれ以上だった。
結果として、ブリュンヒルデ自慢の拳に傷がつき、防御としての機能どころか武器としての威力も激減してしまうこととなった。
ブリュンヒルデはこのままでは拳ごと身体を斬られると思い、オベイロンの右脇下に向けて回し蹴りをすることで、彼を軽く吹き飛ばし、これ以上の損害を阻止した。
『……!』
ブリュンヒルデは負傷した右拳を眺めた。そこから流れる赤い液体は彼女自身の危険を報せている。
『もう右手は使えんな』
治癒手段が皆無なブリュンヒルデは、右手を武器にすることを諦めた。しかし、戦闘狂の彼女は焦るどころか笑っていた。
『想像以上だ! 私にここまでの傷を負わせるとはな!』
ブリュンヒルデは跳躍した。
『だが、これで終わりだと思うなよ!』
そう宣言すると、今度は足を突き出して隕石のように降りかかるドロップキックをお見舞いするつもりだ。
『マジか……』
まるで本当に隕石が降ってくるような光景だった。架空の話のようで、わりとありえなくはないこの世界。世界滅亡の際にはこのような気分になるんだなとオベイロンは思った。
いや、ブリュンヒルデの事だ。もしかしたら隕石以上威力かもしれない。なにせあのブリュンヒルデだ。やろう思えば惑星を破壊することすら可能だろう。
『というか、この星を壊す気かあいつは……全く、やっぱり貴様はデタラメすぎる。私一人では到底敵わない』
ここで自らの敗北を認めるオベイロン。どんなに力を得ても、ブリュンヒルデには敵わない。
『オベイロンよ、負けを認めるのか?』
実はずっと霧になっていたダークロードがオベイロンに話しかけた。
『おいおい、誰が諦めたなんて言った?』
オベイロンは少し笑いながら言った。
『でも貴様一人では勝てないのだろう?』
『そうだ』
事実を受け止めつつ、冷静に認めた。
『どうする気だ?』
『それは――』
オベイロンは自分の思い描いた策をダークロードに話した。
『……マジか』
表情がシルエットのダークロードだが、声色から焦りが滲み出ている。
『マジだ』
『……マジ?』
現実を受け入れられないダークロード。焦りが更に強く出ている。
『マジだ』
『……嘘だろ?』
『嘘じゃない』
『……嘘だと……言ってくれ……!』
ダークロードは絶望した。それほどまでに地獄のような提案だからだ。
『貴様に反抗する権利はない。死にはしないから、とにかくやってもらうぞ。じゃないと分かるよな?』
走る直前のポーズを取るオベイロン。
『ぐぬぬ……ここは大人しく従うしかないか……』
どの道逆らえないダークロードに救いはない。これからもずっと――
『よし、では作戦通りに』
作戦が決まったところで、ブリュンヒルデに目を向ける。そこには遥か上空からドロップキックをかます彼女の姿があった。
『改めて見ると、とんでもないなぁ……』
大抵の者は遥か上空からドロップキックなんてしないし、したとしてもあんな隕石のような勢いで落ちてこない。あれはブリュンヒルデだからできることだ。精霊術も魔法も何もない、ただ肉体に備わった力のみで編み出した芸当でしかない。
筋肉は全てを解決するとは、よく言ったものだが、ここまでしたら筋肉もびっくりだろう。もうそんなレベルではない。
――今、この惑星は危機に瀕している。あの戦闘バカ女が興奮したあまり加減知らずにオベイロンごとこの星を壊してしまうだろう。悪気はなかったでは済まされない。何とかして止めなければならない。
『脳筋戦闘狂バカ女め……やりすぎだろ、あとで説教してやる』
プンスカプンスカと怒るオベイロン。
『全くだ、これでこの星が滅びたら生物観察ができなくなるではないか』
『貴様も貴様だがな』
“精霊王”兼“光の戦士”オベイロン、かつての影の王ダークロード。少し前まで敵同士だった光と影が今結託する。
『行くぞ、ダークロード』
『やれやれ、我も覚悟を決めないとな……』
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