EPISODE③『精霊と妖精とダークロード終 その後⑫』
お待たせしました。
執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
クイズ大会騒動の後はそれぞれ解散となった。あの仮面を被った謎の人物ミュルはいつの間にか姿を消していた。結局何者だったのだろうか?
『ウンディーネ様、モーガンの事はお任せします』
『ええ、任せといて』
『お願いします。大変恐縮ですが、私は執務も残ってるので、お先に失礼致します』
『あ、ちょっと待って』
『はい、何か?』
『こんなことになっちゃってごめんね』
ウンディーネ様はクイズ大会の開催者として謝罪された。
『いえ気にしないで下さい。私はわりと楽しかったですよ。またどこかで開催しましょうか』
『オベイロン……ありがとね。また遊ぼうね』
『はい』
モーガンの事はウンディーネ様達に任せて、私は自分の書斎まで足を運んだ。
本当は元妖精軍のアジトでウンディーネ様の料理を頂くところだったのだが、クイズ大会の騒動でそれどころではなくなってしまったな。
まあ一応料理をタッパーに詰めてもらったから、ここで食べるとするか。
『美味いな』
食しているのが私一人だけなのが惜しいくらい、美味だった。できれば大人数で食事を楽しみたかったな。
『ごちそうさまでした』
さて、仕事するか。
『残業するのか?』
暇そうなダークロードが話しかけてきた。
『ああ、多忙だからな』
『そうか、あまり無理をするなよ。貴様は我の心臓だからな』
あくまで自分の心配をするような言い方をするダークロード。
『分かっている。程々にするつもりだ』
『分かってるならいい』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……』
『……暇だな』
『ならもう寝ろ』
時刻は午後の11時を超えた。夢の中にいてもおかしくない時間帯だ。
『貴様こそそろそろ執務をやめたらどうだ? 程々にすると言ったはずだ』
『思ったよりも執務が進まなくてな……』
『調子が出ないというやつか』
『……なあ、ダークロード』
『何だ?』
『貴様は大丈夫なのか?』
『大丈夫って何がだ?』
『今日のクイズ大会で色々あっただろ』
その色々の中には、ダークロードがモーガンを操って遠回しに自害しようとしたこと、自分の罪悪感を告白して、涙を流したことが含まれる。それらはほんの数時間前に起きたことなのに、本人はまるで最初から何もなかったように振る舞っている。
『確かに色々あったな。今でも罪悪感が重くのしかかっている……正直今からでも自害したいくらい辛いぞ』
『……』
『だが、我はこれを一生背負っていくことが、真の贖罪であることに気づいた。自害とはそれから逃げていることと変わらない。だから、もう自害なんてしないから安心してくれ。それとも我を信じられないか?』
信じられない。なんて言うのは簡単だ。だが、今のダークロードの言葉には説得力を感じた。甘いと思われるかもしれないが、少しは信じてもいいかもしれない。
『いや、ひとまず信じよう』
いや、何がひとまずだ。結局私はダークロードの言葉を信頼しきれてないじゃないか。
『感謝する』
あのダークロードが礼を言うとは……とても国を滅ぼそうとした厄災の態度とは思えない。やはりこいつは何も知らなかった悲しき生物なんだな。
『今日の執務はここまでにするか』
私は腕を伸ばして、執務の終了を宣言する。
私は執務室の鍵を閉めて、食事や入浴のあと、ベッドに吸い込まれるように導かれると、すぐさま夢の世界へ招待された。
我ながらとてつもない疲労が溜まっていたのだろうな。明日の事は明日の私に任せよう。
仕事はまだまだ山積みなのだから。
――――――――――
《???視点》
ここは精霊国から数十キロ離れた荒野だ。現在の時刻は深夜0時。夜勤組と『まだ夜はこれからだぜー』と調子こいてオールする奴以外は大人しく瞼を閉じている時間帯だろう。
夜空が美しい。星々がまるで自分の意志で自分達を表現しているようだった。
やっぱこの世界線の夜もいいなぁ。
『さて、帰るか』
『もういいの?』
俺の同行者がそう聞いてきた。
『ああ、もう十分だ』
『分かった。じゃあ帰ろ。■■■もおいで』
『分かったよ■■■』
『名残惜しいけど』
『帰ろう』
『私達の』
『家で』
二人はそれぞれ交互に喋った。
『それ効率悪いって前に言ったよな?』
『そうだっ』
『け?』
『何でよりによって“そうだっ”と“け”で区切るんだよ! 言いづらいだろ!』
『ツッコミ』
『ありがと♪』
『可愛いけどダルいわ。可愛いけど』
可愛いけど。大事なことなんで2回言って1回思った。
『最後の確認、本当に帰るけど大丈夫?』
『大丈夫だ、わざわざ俺が出しゃばる理由もない。この世界の事はオベイロン達が何とかするさ』
とはいえ、オベイロンと話したかったのも事実。ウンディーネに頼んでミュルという偽名を使って、クイズ大会とやらに参加してみたが、まさかダークロードが罪悪感で自害するまでに苦しんでいたとは思わなかったな。
何せダークロードの心は黒一色だったからな。てっきり悪意しかないのかと思っていたが、単純に黒以外を知らなかっただけとはな。
『――――ん?』
『どうか』
『した?』
『だからその話し方やめろって。いや、何かがこっちに来ると思ってな』
それもかなりの速度だ。まるで何かを追っているような……いや、もしかしてあいつか?
そして、その人物は突如として空から降りてくるように目の前に現れた。相変わらず異常な身体能力だ。
『おう、久々だな。何で俺がここにいるって分かったんだ?』
すると、そいつは『気配で分かった』と答えた。それは魔法でも何でもなく、本能と身体能力だけで精霊国から数十キロ離れたこの荒野まで飛んできたようだ。怖い。
『今帰るところだったが、積もる話もあるだろう。ちょっとくらいなら時間取れるぞ』
軽く雑談をしたあと、その人物は要求を話した。
『えぇ……マジで?』
そいつはコクリと頷いた。
『こっちも疲れてんだけどな……しかもよりによってお前だし……まあいいか……どこからでもかかってこい』
闇の荒野の戦いは夜が明けるまで続いた。これは歴史に残る激戦ではあったものの、誰にも気づかれることもなく、静かに幕を閉じた。
ここまで見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




