EPISODE③『精霊と妖精とダークロード終 その後⑪』
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モーガンの握る力が増していく。このままダークロードを握りつぶすほどの勢いだ。
『おい、モーガン落ち着けよ、お前なんか変だぞ!』
『ノーム、君も甘いね。私は散々君に教えたはずだよね? ダークロードの危険性についてさ』
『確かに、そうだけど……!』
モーガンの言う通り、ダークロードは恐ろしい存在だ。現にダークロードのせいで私達の国が滅びかけた。
『モーガン、貴様の言うことも理解できる。だがダークロードの処遇については国の法律に則って裁定した。こいつには罪を償うために、生涯精霊国に監視され、私達の役に立つように使役させると決めた。だから勝手に殺してはこっちが困るんだ』
『そうだよモーガン。オベイロンもこう言ってるんだから、もうやめよ、ね?』
ウンディーネ様も共に説得してくれた。
『黙れウンディーネ、そんな悠長な事を言ってる場合ではない!』
モーガンらしからぬ口調でウンディーネ様に反論した。
『モーガン? あなた何か変よ? どうしたの?』
『ダークロードは殺さなければならない。だが、確かにそれでは罪を償えないだろう』
『……モーガン?』
『我は今からこの愚か者を焼き殺す』
モーガンのダークロードを掴む手のひらから炎を排出した。ダークロードはあっという間に炎に包まれた。
『ダークロード!』
しかし、ダークロードには攻撃など全く効かないはずだが、今は弱体化している。
『焼却完了』
結果は最悪だった。ダークロードは消し炭と化して、消えていった。
『モーガン……貴様……』
本来ならば立場上モーガンを非難するところだが、彼女の行動も間違っているとは思えなかった。むしろこうするべきだと言う者もいたくらいだ。それだけダークロードの所業は重い。
だけど、何だこの感情は? 悪が完全に去ったというのに素直に喜べない自分がいた。
ダークロードに情が湧いたのか?
それともダークロードの処遇を勝手に決められた事に憤りを感じているだけか?
分からない。ただ私の中で何かが消化しきれていない。何なんだこれは。
――そうか、そういうことか。よく考えれば分かることだった。早速あいつに問い詰めるとしよう。
『モーガン』
『何だ、オベイロン』
腹が立つ。なぜ貴様がこんなことをする必要があるのか。そこまでして断罪する意味はあるのか。
『モーガン、貴様ダークロードだろ?』
まずモーガンの口調に違和感があった。まるで別人のようだと思ったが、本当に別人だと考えた方が自然だ。それに何より決め手となったのは――
『え……どういうこと?』
困惑するウンディーネ様。もちろん他の皆も状況についていけず騒然としている。シルフとミュル以外は。
『なるほど、ダークロードにダメージを与えられるのはダークロードだけ。そういうことですね?』
シルフが代わりに解説してくれた。
『そうだ』
『ん、どういうこと?』
『つまり、モーガンの中にダークロードがいるんだ』
『えぇ!?』
全員がその確信を得た瞬間からモーガンを包み込む闇のオーラが可視化された。それはダークロードが発したオーラと同等のものだ。
『よく分かったなオベイロン。いや、貴様だからこそ分かったのかもな』
モーガンを使って、ダークロードが話した。
私の中にもダークロードがいる。本体であるダークロードと紐付けされたことで一心同体となったわけだが、もしかしたら何となくダークロードがどこにいるのか分かるようになっているのかもしれない。
『なあ、ダークロード』
『何だ?』
『なぜ、モーガンの中にいる? 目的は何だ?』
それだけが解せない。私に心臓を握られている状況でダークロードが悪さを働くとは思えないからだ。
『贖罪だ』
『贖罪?』
『ああ、我はこれまでありとあらゆる破壊を行ってきた。そのせいで大量の精霊が死んでいった。運良く死ななかった奴もそのショックで一生かけても治らない大きな傷を負わせてしまった。我もその時はただ快楽を得るためにやっていた。誰かが不幸になってもそれは蜜を舐めているに過ぎなかった。だが最近になったその蜜がとんでもない毒であることに気づいてしまったのだ』
『ダークロード……そうか……貴様は……』
私は理解した。今のダークロードが何に苦しんでいるのか。
『我は……オベイロンに倒されて貴様ら精霊に興味を持ち、僅かな時間の中で貴様らと関わってしまったことで、罪悪感というものを覚えてしまったんだ……』
モーガンの顔でダークロードは涙を流していた。
『ん? そうか……これが涙か……泣くとはこんなにも辛かったのだな……我は何ということを……!』
ダークロードはあまりにも重い罪悪感に押し潰され、しばらく膝をついた。
『だから……我はこっそり自分の分身をモーガンの耳の中に入れて、我への憎しみを増幅させ、我を傷つけるように仕向けたのだ』
『分身をモーガンの耳の中に? んなことやったら誰かにバレるだろう』
サラマンダーはそう疑問を呈した。確かにそんな目立った行動をすれば誰かの目に留まるだろう。
『バレないように霧状にしたのだ。極めて薄くしたからほとんど空気と変わらん』
ダークロードはそう言って実演するように霧状の分身を出しているらしいが、肉眼ではどこにいるのかさっぱりだ。
『貴様のその“精霊眼”でも視れないか?』
『それでも、言われてみれば少し違和感がある程度で、視れてるとは言えないな』
極めれば視れるようになるかもしれないが。
『まあ何はともあれ動機は分かった。ダークロードの気持ちも理解した。だが、私はいや我が国は貴様の自害を許さない。さっきも言ったが、貴様の処遇は正式に決まっている。勝手にねじ曲げる事はあってはならない。だからダークロード、貴様にはまだ生きて、贖罪をしてもらわないと困るのだ』
決してダークロードに同情したわけでも生きててほしいわけでもじゃない。罪に対して罰を受けてもらわなければ筋が通らない。そこだけは間違えてはいけない。
『逃げるな、戻ってこいダークロード』
私はここで手を差し伸べない。ダークロードが自らの力だけで私の元に来させるのだ。
『……分かった』
すると、モーガンの中からダークロードは風のように立ち去り、また小さな人形に戻ってから私の肩に掴まった。
モーガンは意識を失い、冷たい床に伏せた。
『モーガン!』
ウンディーネ様はモーガンの胸に耳を当てた。
『気を失ってるだけみたい』
とりあえず無事であると分かり、一息ついた。
『良かったー』
『モーガンを運びましょ』
『そうですね。ウンディーネ、お願いできますか?』
『ええ、任せて』
ウンディーネ様はモーガンを部屋のベットまで運んだ。
クイズ大会は中止となってしまったが、こういう大会をまたやるのも悪くないかもしれない。ウンディーネ様に相談して、またどこかで開催してみてもいいかもな。
ここまで見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
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