EPISODE③『精霊と妖精とダークロード終 その後⑦』
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次の問題は“ダークロードの好きな季節は?”だった。
それぞれの解答はこうだ。
ノーム :冬
サラマンダー:夏
シルフ :冬
モーガン :プリンプリンプリン
オベイロン :冬
ミュル :冬
サラマンダーだけは、“夏が一番熱く燃えるから”という選出理由だった。意味が分からない。
サラマンダー以外は全員冬だ。冬を選んだ皆のそれぞれの理由は何となくで特に推測したわけじゃない。だがこうも解答が偏るのは、闇と冬が何となく近いからかもしれない。完全なる偏見だが、感覚的にそう思ってしまう。
『いや、それダークロードじゃなくてサラマンダーの好きな季節だろ』
ノームからのツッコミにサラマンダーは『ち、違げえよ! ちゃんとオレなりに考えたんだよ!』と少し動揺しながら返してきた。図星だな。
『ふーん、まあそういうことにしてやるか』
ノームは面倒に思ったのか、これ以上の追求は中止した。サラマンダーと建設的な会話なんて期待するだけ無駄だしな。
『それではダークロード、解答の方をどうぞ!』
『あーはいはい、我の好きな季節は――春だ』
意外な解答に一同どよめきを隠せなかった。これも偏見だが春といえば桜や新たな門出といった明るいイメージが強かった。闇を好むダークロードが一番選ばなそうな季節だ。
『へえー! そうなんですね! その理由は?』
『ククク……花粉症で苦しむ奴らを見るのが楽しいからだ……』
果てしなくしょうもない理由だった。
『だが今は違う。苦しむ姿よりも、この国の連中が花粉症をどう乗り越えるのか、そこにフォーカスを当てて楽しむつもりだ』
おい楽しむな。全力疾走すぞ。
――しかし、この時ダークロードはまだ知らなかった。まさか概念的な生物だから花粉症にならないだろうと高を括っていた自分が花粉症に苦しむ事になるとは。
『はい、どの道悪趣味ですね。では次の問題行きましょー!』
現時点で私は2ポイント、ミュルは1ポイント、それ以外は0ポイントで、差はそれほどないが私が優勢だった。
それから私達クイズプレイヤーは様々な問題に立ち向かった。相変わらずダークロードの情報が少なすぎるせいで、どの問題も難易度が高かった。まだ浅い付き合いとはいえ、ダークロードのそばにいるはずの私ですら、なかなか点数が取れなくて苦戦を強いられていた。しかし、後半戦になるにつれて、シルフとミュルが勢いづいて、私を追い抜かした。ノームも着々とポイントを取っているが優勝は厳しそうだ。サラマンダーは全問不正解、優勝は絶望的。プリンモーガンは論外だ。
――そして、とうとう次が最終問題だ。
『いよいよ最終問題です! でもその前に皆さんの現在のポイント数を発表します!』
ノーム :2ポイント
サラマンダー:0ポイント
シルフ :6ポイント
モーガン :0プリン
オベイロン :4ポイント
ミュル :5ポイント
『現状1位はシルフ選手! 果たしてこのまま先頭を維持できるのか! 気になる結末は――CMの後!』
『CMなんてねえだろ、何言ってんだよ』
ノームは相変わらずツッコミ役を担ってくれているおかげで自分の常識が狂わずに済んで助かっている。だが、ノームに助けられてばかりではダメだ。私もツッコミを入れなければ……。
『ノームの言う通りだ。ウンディーネ様、ここはいつから番組スタジオになったんですか?』
さすがにウンディーネ様に対して敬語は欠かせないが、ツッコミができないわけじゃない。
『え〜、二人ともノリ悪すぎ〜、そんなんじゃ芸能人になれないよ?』
『芸能人を目指した覚えはないですが?』
よし、我ながらいいツッコミだ。
『どうせ“我ながらいいツッコミだ”とか思ってんでしょ?』
何故分かった!?
『まあいいわ、それよりクイズを再開しましょ』
ウンディーネ様は完全に呆れたような態度で、クイズ大会を再開した。本当に何で私の思考が読まれたのだろうか? それだけ知りたいのだが、答えてくれそうにないな。
『――ではいよいよ、最終問題〜〜〜〜〜!』
とうとう最後の戦いに突入した。何だかんだ楽しんでいたから、少し寂しさを覚えるな。
『最終問題ですが、正解すれば何と100ポイント獲得できます!』
寂しさが一瞬にして消し飛んだ。いやいやポイント数インフレしすぎだろ。今までの苦労は何だったのか。
『今までのクイズなんだったんだよ!』
他の参加者も同じように思ったのか、ツッコミの嵐が巻き起こる
『なんて、冗談よ♪』
ウンディーネ様はそう言って可愛らしく舌を出した。それはそうと冗談で良かった。
『最終問題も変わらず1ポイントですが、今回のクイズは正解が1つとは限りません! 今まで紙とペンを使ってきましたが、最後は早押し形式でクイズをしていきます! 思いついた人からどんどん押していって下さいね!』
なるほど、ここで沢山正解すれば0ポイントのサラマンダー(妖怪プリン女は対象外とする)でも逆転できる可能性があるということか。それでいてポイントの差が表れているのも、これまでの努力がちゃんと反映されているし、いい塩梅だと思う。
――これで勝負が決まる。私は必ずプリンをゲットしてみせる!
『では、最終問題! デデデデデデン!』
デ多くないか?
『ダークロードの長所を答えられるだけ答えろ』
――は?
『なん……だと……?』
あまりにも想定外なクイズが出題し、参加者全員が驚愕を隠しきれなかった。
『おい、こんなのどうやって答えたらいいんだ!』
ノームは怒り交じりで聞いた。だが無理もない。我々はダークロードの事など知らないのはおろか、昨日まで敵だった者の長所なんて、とても発想に出ない。
『ダークロードの良い所は必ずある。だから頑張って探して♡』
『いや、こんな身体も腹も真っ黒な奴に長所なんてあるわけねえだろ!』
その通りだ。私も分からない。
『そこまで言わなくても……まあでもそうか……そうだよな……我はそれだけのことをしたんだもんな……』
ダークロードは責められる事に納得しつつ、自責の念に駆られた。
『……』
案の定、他の参加者も思い悩んでいる。今回は早押しだから何度でも答えていいとはいえ、事情が事情だ。答えることすら憚れてしまうだろう。
ウンディーネ様は一体何をお考えなのか……。
『プリンプリンプリンプリンプリン……』
モーガンも一体何故そんなにプリンに取り憑かれているのか。いい加減鬱陶しい。
『はぁ……』
――さて、今のところ誰も解答ボタンを押していない。今のうちに私もダークロードの長所を見つけてみるか。
『プリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリン――』
頼むから集中させてくれ……。
ここまで見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




