第59話『魔王が嫌いですか』
遅れてしまい、申し訳ございません。
第59話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2022/08/20改稿しました。
俺とブロンズちゃんはデーt……買い物を終え、ク・ルーマに戻った。
『ただいま帰りました……』
『おかえりー、買い物どうだった?』
『大満足よ♪』
良い雰囲気になったあと、結局ブロンズちゃんの荷物持ちにされて、あちこち店を回ったので、超クタクタである。
デートって大変だなんだなぁ……。
『お兄ちゃん、荷物持ちありがとね♪』
ブロンズちゃんは、満面の笑みでお礼をしてきた。まあ、この可愛い笑顔が見れるのなら、報われたも同然だな。
『ふふっ、またデートしようね♪』
『うん、いいよ』
まあ荷物持ちとして連れてこうとしてるんだろうけど……こんな美少女とデートできるなら安い代償だ。しんどいけど。
『……今度はお兄ちゃんが行きたい所に行ってもいいよ?』
『え? でも……』
『いいから』
ブロンズちゃんが譲歩してくるなんて珍しい……突然、どうしたんだろう?
『うん、まあ分かったよ、今度は俺が提案した所に行こう』
『うん!』
というわけで、俺とブロンズちゃんは次のデートの約束を取り付けた。この世界の観光名所とか調べてこなきゃな。
『……あの、そろそろ話をしてもいいかな?』
『ああ、すいません、どうぞ』
困り顔のアミさんだったが、次の瞬間、真面目な顔つきになり、こう話し出した。
『実は、盗賊団のアジトの入口らしき場所を割り出したんだ』
『盗賊団のアジト……!』
アミさんが言うには、さっきバレスさんが外の様子を見に行った時に、たまたま通りかかった住民がアジトに関する噂をしていたという。その噂の内容は『さっきマンホールから、最近話題の少女らしき姿が、出てきたらしいんだよ』『もしかして、そこが、盗賊団のアジトじゃないか?』『うわ~それ、マジでありそうだわ~』だそうだ。
『その最近話題の少女って、もしかして……』
『ああ、君たちが探している魔王の事で間違いないようだ』
バレスさんは腕を組みながら、ちょっと不機嫌そうに下を向いて、そう言った。
『バレスさん? どうかしましたか?』
『はぁ……まさか、君たちがあの魔王の部下だったとはね……』
バレスさんは、敵を見るような鋭い目付きで俺を見た。
まだ俺達が魔王軍だって言ってなかったからな。こうして敵視される恐れがあったから。案の定現実となってしまったが。
『すみません……』
『動くな』
突然、バレスさんは剣を握り、俺に狙いを定めた。
『え?』
次にバレスさんは剣を抜き、俺の喉元に当てる寸前まで剣を突きつける未来を見たので、そのまま微動だにせず、まっすぐバレスさんを見つめた。
『お兄ちゃん、危ない!』
心配するブロンズちゃんだったが、俺が予知した通り、バレスさんに俺に当てる寸前まで剣を突きつけられただけだった。無論、俺には1つの傷もない。
『……度胸あるんだね、それとも、そういう魔法なのかな?』
なんて鋭い。その通りだ。
『バレスさん……あなたは、魔王が嫌いですか』
俺がそう言うと、バレスさんは突きつけた剣を鞘に戻してこう言った。
『ああ、嫌いさ……魔王の話を聞いてもね』
『……魔王の話?』
『私が話したの、魔王の事をね』
『アミさん……』
『確かに、話を聞く限り君たちが崇拝している魔王は悪事を働いてはいないようだし、むしろ本当に、皆を助けたいと思っているようだね』
『じゃあ、魔王が悪い奴じゃないって認めてくれたんですか?』
『いや、それはない。なんだろうと魔王は悪だ』
『何でですか? 魔王は変な奴だけど悪い奴では……』
『そういう問題じゃない、だって魔王がいる、存在するという事実だけで、人々を恐怖に貶めてる事には変わりない』
『それは……』
確かにバレスさんの言う通りかもしれない。例え魔王が悪い事をしてなくても、魔王がいつか襲ってくるかもしれない……そう不安がる人が大多数だ……でも……それでも……。
『……やめて』
ブロンズちゃんは震えた声でそう言った。そして――
『まーちゃんを悪く言わないで!』
ブロンズちゃんは魔王を悪く言った事に憤りを露にした。ブロンズちゃんのそんな様子を見てもバレスさんは微動だにしなかった。
『まーちゃんは私達を助けてくれた! パパやママを失った私達を優しく出迎えてくれた!』
ブロンズちゃんの反論に対して、バレスさんは冷静に反論した。
『将来、君達を利用する為に優しいフリをしているのかもしれないよ?』
『そんなことない! だって、私……心を読めるのよ? 私は何度も何度も、まーちゃんの心を読んだけど、1回も私達を利用してやろうとは考えもしなかった! むしろ、私達を大切に思ってくれたの! だから……まーちゃんは悪い人なんかじゃないんだ!』
更に激昂するブロンズちゃん。だが、バレスさんは冷静に更に反論をぶつけた。
『だとしても、魔王が悪だという事実には何の変わりもない。現に私が今務めている王国の住民達は、皆、魔王に怯えている』
『じゃあ、その住民達にもまーちゃんの事を話せば……』
『話した所で分かってもらえるわけもない、だって……私の国の住民達は……別の魔王に酷い仕打ちをされたんだ……』
バレスさんはそう言うと、唇を噛みしめ一筋の血を流した。
『別の魔王……?』
『バレス……』
アミさんは悲しそうな目でバレスさんを見ている。魔王の味方である彼女からの反論がないところをみると、どうやらアミさんはバレスさんの今の立場や事情を知っているようだ。
『そういうわけだ。私は君たちにこれ以上協力はできない……だがここまで連れてきてくれた礼もある。君たちは敵だが、今回は君たちの邪魔はしない。私は私で盗賊団を斬る』
バレスさんはそう言うと、車……ク・ルーマから飛び出し、目にも止まらぬ速さで、どこかへ行ってしまった。
『バレス……って感傷に浸ってる場合じゃない、私達も盗賊団のアジトへ行くよ!』
アミさんはそう言うと、バレスさんの後を追うようにク・ルーマから飛び出した。
『はい』
『……そうね』
ブロンズちゃんは今にも泣きそうだったが、涙を拭いて切り替え、俺と一緒にアミさんを追うように走った。
『はい、行きましょぉ!』
アミさんの胸の谷間からひょこっと顔を出してきたみどりちゃんもやる気に満ち溢れている。完全に存在を忘れてた。
『あ、みどりちゃん居たの?』
『最初から居ましたよぉ! 私の事忘れすぎですよぉぉ!』
みどりちゃんは、またしても忘れられた事に涙した。さっきまでのシリアスな空気が嘘のように和んでしまった。
『ていうか、みどりちゃん、さっきから聞いてたと思うけど、俺ら魔王の幹部だよ? 世間的には悪い奴なんだけどついてくるの?』
『ええ! 旅は道連れ、世は情けとも言います! それに皆さんは良い人です! たとえ皆さんが魔王の幹部だとしても、私も付いていきますよぉ!』
みどりちゃんは、そう言ってアミさんの胸の谷間から飛び降りると元のサイズになって、俺達と並んで走り出した。
『いえ、このまま1人になるのが嫌なだけよ』
みどりちゃんはブロンズちゃんに心を読まれて、ギクッと図星を突いた。
『猪の姿で1人ぼっちは辛いもんねぇ? 正直に言いなさいよ、私達友達でしょ?』
『友達……そうですね! 私達友達ですよね! はい、私、こんな姿なのもあるんですけど、本当は1人になりたくないんです! 私、ぼっちなんです!』
みどりちゃんは、目をキラキラさせて自分の事を素直に話した。切り替え早ぇなオイ。
『うん、素直でよろしい』
ブロンズちゃんは、みどりちゃんをペットのようになでなでした。みどりちゃんも、気持ちよさそうな顔をしている。
『よし、それじゃ……魔王を連れ戻しに行こう!』
アミさんは手を挙げて号令をした。
『おおーーーーーーー!』
『この戦いが終わったら……高級店で飲みに行こう!』
アミさんはそう言って、もう1回手を挙げて号令をした。
『おおーー! ってそれ死亡フラグ!』
唐突な死亡フラグに、俺は一気に不安になってしまった……だ、大丈夫……だよな?
第59話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、7日~9日に投稿予定です。
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