EPISODE③『精霊と妖精とダークロード終 その後⑤』
お待たせしました。
執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※特定の人物への話し方に矛盾があった為、修正しました。
『第一問! デデン!』
デデン! はセルフなのか。
『ダークロードの好きな食べ物は何? 制限時間は1分! シンキングタイムスタート!』
このクイズはシンキングタイムの内に、人数分用意されたミニホワイトボードに答えを書き込んで、あとで公開するシステムだ。考える時間があるのは助かるが、ダークロードの情報がなさすぎて何も思いつかない。
側付きのような存在なったとはいえ、こいつとの付き合いなんてたったの1日だぞ? その中で私からダークロードの事を知ろうと質問攻めしたわけでもない。興味以前にまず抹殺したかったからな。
『おい、なんか貴様から殺気を感じるぞ』
私の肩に乗るダークロードがそう言った。
『気のせいだ』
待てよ、そもそもこいつは生物ではなく概念だ。食事なんて必要ないはずなのに、食べ物なんて口にしているとは思えない。
ならば答えはこうだ。
『シンキングタイム終了! さあ皆さん、一斉に答えをオープンして下さい!』
ノーム :ハンバーグ
サラマンダー:肉
シルフ :肉
モーガン :墨汁
オベイロン :特にない
ミュル :空気
それぞれの解答が公開されたが、何やらおかしな答えがあるな……ふざけてるのか?
『おっと、意外にもサラマンダー選手とシルフ選手の答えが被った! 順番に理由を聞いていこうと思います、まずはノーム選手!』
『やっぱ好きな食べ物といえばハンバーグだろ! あれを好きじゃない奴なんていないだろ!』
確かに私もハンバーグは好物だし、多くの者が好きであろう人気の料理だ。少し偏見気味だとは思うが、戦法としては悪くないのではないか?
『なるほど、確かにハンバーグは私も好き! ということで次はサラマンダー選手!』
『肉が最強だ!』
それだけ?
『えっと、まあサラマンダー選手らしいですね!』
それで済ませてしまうのか。まあサラマンダーをよく知るからこそ、これ以上は聞いても無駄だと確信していてのコメントなんだろうな。
『次はサラマンダー選手と同じ解答のシルフ選手、その理由は?』
私も気になるところだ。シルフはサラマンダーと違って単細胞ではない。にも関わらず同じ解答、選んだ理由があるはずだ。
『これは私なりの推理なのですが、ダークロードは妖精への恨みが結晶化された存在であり、妖精を殺すことが快楽とされています』
ダークロードは『そんな時期もあったなぁ』と言いたげに頷いている。
『では、殺した後の妖精はどうなっていますか? そう、死体です。更に悪い言い方をするのなら肉の塊。ここまで言えば分かりますね?』
『いや、さっぱり分からんが?』
サラマンダーは首を傾げた。だが私は理解できてしまった。
『快楽の為に殺した者が最終的に肉になるんですよ? 快楽の果てに肉があるのなら、好物が肉になるということです』
『??????????????』
サラマンダーは何一つ理解できず、固まってしまった。
私はたまたま理解できたが、ダークロードは所謂サイコパスと呼ばれるような特殊な感覚を持っている。サラマンダーでなくても理解するのは難しいかもしれない。
『ま、まあ要は連想的に肉になるから必然的に好物になりえるのでは、ということですね! ありがとうございました!』
苦笑いしながら無理やりまとめたウンディーネ様。
『じゃあ次行きましょう! モーガン選手!』
モーガンは墨汁と答えていた。もはや食べ物ではないが、その理由とは?
『いや単純に墨汁みたいな色してるから、もうそれが好物でいいんじゃねって思って』
まさかの思考放棄。だからこんな適当すぎる解答なのか。
『ほら墨汁持ってきたから飲めよダーククソ野郎』
口の悪いモーガンは席を立ち、私のところまで来ると、鞄から墨汁入った瓶をダークロードに押し付けた。
『貴様、パワハラにも程があるぞ! というか何で墨汁なんて持ってるんだよ!』
本当に何で持ってるんだろうな? ってよく見たら、鞄の中身が混沌として、あらゆるジャンルを網羅している。つまり整理ができていない状態ということだ。
『お前に飲ませるためだよ』
絶対鞄の中身見て思いついただけだろ。
『はい、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ、飲ーめ』
モーガンは死んだ目をしながら飲ーめコールを連発した。これは冗談でも何でもなく、本気で墨汁を飲ませようとしているようだ。おいおい、完全に犯罪じゃないか。
『モーガン、いくら何でもやりすぎじゃないか?』
私はモーガンを止めようとしたが、その前にダークロードは飲み物を飲むように墨汁を口に入れた。
『ダークロード!?』
墨色の液体がダークロードの喉を通過する。それはおぞましい実験を見ているような猟奇的な何かを感じさせる。
いくらダークロードが規格外の化物でも、さすがに異変が現れるんじゃ……?
『これ美味いな!』
『美味いんかい!』
演技でも強がりでもなく、本当に美味い物を飲んだ奴のリアクションだった。何なんだこいつは……。これはダークロードだからできたことであり、良い子も悪い子も普通の子も決して真似してはいけない。
『ちっ』
墨汁を渡した本人は不満そうに舌打ちした。何かしらの嫌がらせをするつもりだったんだろうな。
『モーガン選手、いくらダークロードでも犯罪たりしちゃダメダメですよ』
ウンディーネは可愛らしく指で✖を表現しながらそう言った。というか、もっと早く言えよ。
『はーい』
モーガンはふてくされたような態度を取りながら、席に戻った。
『さて、気を取り直して行きましょう! 次はオベイロン選手!』
私は特にないと解答した。理由を聞かれた私は、生物ではない者が食事をするなんて思えないと解説した。
『なるほどなるほど、実につまらな――素晴らしい解答ですね!』
今つまらないって言おうとしませんでしたか?
『何か気に入りませんでした?』
『いえいえ、そんなことはないですよー、じゃあ最後ミュル選手〜』
ウンディーネ様は苦笑いしながら話をはぐらかした。司会者の立場を考えてほしいものだがな……。
『ミュル選手の解答は空気ですね!』
空気とはどういうことだろうか? 意図がさっぱり分からない。
『さあ、その理由は?』
ミュルはウンディーネ様に長々と耳打ちをする。解答の時ですら自分の声を聞かせたくないのか?
ウンディーネ様がミュルの解説を全て代弁してくれた。
『なるほどなるほど〜、ダークロードは生物ではないから食事はしないというところまではオベイロンと同じ考えだけど、大量に分身したり空を飛んだりするには相当のエネルギーが必要なはず。それが何故空気かと言われると確信は持てないけど、ダークロードはずっとあの部屋に封印されていた。ならばエネルギー源など提供されているはずがない。にも関わらず、あれほどの力を放出していた。それは何故か? あの部屋にあった唯一の物――空気をエネルギーに変換することができたからではないか?』
『……!!!』
一同ざわつきを隠せなかった。
――そうか、あの部屋に閉じ込められたダークロードにあったものは空気のみ。もし空気をエネルギーに変換できるとしたら、あの異常な力にも説明がつく。
なんということだ、そこまで考えつかなかった。このミュルという人物……なかなか頭が回る奴のようだ。
『さあ全員の解答しました! 果たして正解者がいるのでしょうか? 答えはダークロードが教えてくれます!』
『我は何も聞いてないが……まあいいだろう。我の好きな食べ物、それは――』
ここまで見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回の投稿なんですが、今回の話で早く答えが知りたいと思う方もいらっしゃると思うので、かなり短めの文章ですが解答編を明日の朝に投稿したいと思います。
宜しくお願い致します。




