EPISODE③『精霊と妖精とダークロード終 その後③』
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※特定の人物への話し方に矛盾があった為、修正しました。
ブリュンヒルデの望む報酬を聞いた私はそれを承認した。ただ今すぐ叶えられるものではないので、時間を要するが必ず叶えると伝え、収監所をあとにした。
次の視察は妖精軍のアジトだ。ボスであるモーガンが言うには、元々ダークロードを倒すために作っただけだから、お詫びも兼ねて資源とか色々持っていっていいと言っていた。まあ、どの道襲撃者の持ち物として押収するつもりだったが。
妖精軍の5人と3匹は立場上、犯罪者ではあるが、ダークロードとの襲撃から守ってくれた。そもそもこの時代に生きる者ではなく、目的を果たした彼らはすぐに消えるつもりだったようだ。
だが、そこで私は提案した。同盟の国が戦力を欲しがっている、その手伝いをしてほしいと。モーガン達はすぐに承諾してくれた。それで贖罪になるならと。
なので、その間はこの妖精軍のアジトで暮らしてもらうこととなった。だが古代の妖精とはいえ犯罪は犯罪、ある程度行動に制限をかけることになるし、刑務も行ってもらう。収監しないのはいつでもこの世から退去することができる故に檻の中に閉じ込める意味がないからだ。
動物達はアジトの環境では暮らせないので、引き続き国で管理することになった。彼らの処遇は正直混迷を極めているが、動物を大切にするという我が国の信念から特に犯罪者扱いせずに、特別な部隊に配属することとなった。3匹共、言葉が通じたのか、与えられた使命を理解し、的確に行動している。3匹共ずいぶんと賢いんだな。だが、その中でも――
『サラマンダー』
『何だ?』
妖精軍のアジトに着いた私は、刑務中のサラマンダーに話しかけた。
『貴様の部下である3匹の内のドラゴンいるだろ?』
『ああ、いるな。それがどうかしたか?』
『いや、特に問題があるわけじゃないんだがな、ただ何か私に変な視線を送ってくる気がするんだ』
『変な視線?』
『何か知らないか?』
『さあ、知らんな』
『そうか……』
あのドラゴンは私を見つめてくると思ったら、すぐに目を逸らしたり、私が背中を見せている時に何か突然興奮して、舌を舐め回してきたらしい。それを知った私もさすがに悪寒を覚えた。
『なあ、ドラゴンって興奮したら舌を舐め回す習性でもあるのか?』
『んなもんあるか』
『だよな、でもあのドラゴンは私の背後からそんな感じで見てきたらしいんだ』
他の者が目撃している。
『はぁ? 訳分かんねえ、あいつ何考えてんだ?』
サラマンダーでさえ、仲間であるドラゴンの心情を理解できないようだ。やはり言葉が通じないと真に心を通わせるのは困難ということか。
『あら、オベイロンじゃない。どうしたの?』
『ウンディーネ様』
実はウンディーネ様には、サラマンダー達の見張りをお願いした。かつての仲間達だし、積もる話もあるだろうからこのアジトに住み込みで監視することになったのだ。
『何か用かしら?』
『いや、ただの視察だ』
『そうなのね、この後も予定あるかしら?』
『ここで最後だな』
気づいたら、空も夕色から夜の色に移り変わろうとしている。まだまだ執務は終わっていないが、無理に残業して疲労が長引けば元も子もない。また明日にするとしよう。
『なら、ここで夕ご飯食べてかない?』
『いいのか?』
『もちろん!』
ウンディーネ様は満面の笑みで言った。
『そうか、じゃあお言葉に甘えて』
こうして私は妖精軍の食卓を囲うことになった。料理はウンディーネ様が作ってくれるらしい。
夕飯の時間になると、それぞれ刑務を終えたシルフとノームにモーガンがやってきた。
『おや、オベイロンさんではありませんか』
『あ、オベイロンがいる!』
『オベイロン……』
それぞれの反応を披露してくれたところで、私は私がここにいる経緯を説明した。
『そうでしたか、ウンディーネが誘ったんですね。私も構いませんよ。ですが――』
『俺もまあいいんだけどよ……あいつが――』
『うん、私も構わないよ……ただ……君に纏ってるそれは――』
私と食事を共にすること自体は歓迎されているが、ずっと私についているダークロードに対して微妙な反応をしている。
すると、霧状になっていたダークロードは黒い小動物の姿になって現れた。
『安心しろ、もう我は貴様らを襲うことはない。もっと楽しそうなことを見つけたからな』
『本当に?』
モーガンはダークロードに訝しい視線を向ける。ノーム達も同様に警戒している。
まあ、それもそうだよな。ダークロードを滅ぼすために古代の妖精達を召喚して、我々の国を襲ってまで力をつけようとしていたからな。そんな仇敵がここにいれば、警戒しない方が無理な話だ。
『信じてくれ、とは言わない。だが今の我はオベイロンに生殺与奪の権を握られている。もし我が悪さをしようものなら即処刑することも可能な状態だ。こんな状況で悪行などできると思うか?』
自らの潔白を証明する為に、自分の置かれている状況を話すダークロード。
『それは分かってるよ。でも君の事だ。どんな手を使ってくるか……』
確かにダークロードは分身を使って翻弄したり、空と同化したり、巨大な手を生やして厄介なブリュンヒルデと俺を地下に閉じ込めたりと意外にトリッキーな手を使う。まあ少し詰めが甘いが、そこそこ知恵のある奴だ。たとえ俺に心臓を握られているような状況でも、どこかで裏をついてくるに違いないとモーガンは言った。
『うむ、やはり我はどうしたって信頼されていないようだ。ならばオベイロンがここにいる間でいい。“あの部屋”に我を閉じ込めるがいい』
“あの部屋”とは、ダークロードが封印されていた、入口に数字パネルがある部屋だ。
『今、君を例の部屋に閉じ込めても意味がない』
『なぜだ?』
『今の君の力なら封印なんて簡単に破れるからよ』
『いや無理だ。今の我にはかつての力はない』
『仮に君の言う事が本当だとしても、私達だけで簡単に始末できる。つまりわざわざ封印する意味がない』
ん? モーガンの様子が変だな。言っていることも支離滅裂だ。
『だが信頼できないのだろう? ならば一応封印してみてはどうだ?』
そう言うと、モーガンは眉を顰める。
『……』
なんとモーガンは反論することなく黙してしまった。
『モーガン?』
何やらモーガンはバツが悪そうに下を向いている。
『……くさいから』
小声で何か言っている。
『なんて?』
『だから、めんどくさいんだよ! 封印するの結構手間かかるんだから!』
モーガンは感情に身を任せるような怒り方をした。どうやら封印するには、よほど面倒くさい作業があるようだ。
『そ、そうなのか?』
『そうだよ!』
『それならしょうがないか……』
となると封印はダメだな。しかし、他の方法が思いつかないな……仕方ない。
『ウンディーネ様、せっかくのお誘いですが、申し訳ないが私は遠慮しておきます』
『いいえ、その必要はないわ!』
『と言うと?』
『ふふん』
ウンディーネ様には何やら策があるようだ。
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皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
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