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壊れた歯車は異世界に行っても壊れたままだった  作者: カオス
5.5章〜未来への架け橋〜
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EPISODE③『精霊と妖精とダークロード終 その後①』

お待たせしました。

執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 《オベイロン視点》


 かくしてダークロードとの戦いは幕を閉じた。平和を勝ち取ったのはいいが、我が国は甚大な被害をもたらした。完全修繕まで数年単位はかかるだろう。


 それも含めて、私は執務に追われている。本来ならば戦いの後に休息を取りたいところだが、いつまでも国民に不便な思いをさせたくない。早急に住む場所を確保しなければならない。


 そして、それとは別にもう一つ重大な任務がある。それは――


『オベイロンよ、早く人について知りたい。図書館とやらに行け』


 小動物のように我の肩にちょこんと乗っかりながら、喋りかける謎の黒くて小さい生物。その名は――


『うるさいぞ()()()()()()! 私は今執務中なのだ! 油を売ってる暇などない!』


 ダークロード。こいつは確かに私がトドメを刺したのだが、私の中のダークロードと統合し、別の生物となった。しかし、そんな奇跡を起こした代償として大きな枷がつけられることとなる。


 今のダークロードは私の中のダークロードを通すことで息をしている。核である私から距離を取れば取るほど力を失ってしまうのだ。つまり、こいつは私から離れられない。


 なのでもし、ダークロードが悪さをしても、私が全力でこいつから離れれば、赤子のように何もできなくなる。


 かつての力は振るえない上に、私に実質的な生殺与奪の権を握られている。抑止力としてはこれ以上ない状態だ。


 しかし、その割には横柄な態度を取る。


『なら早く執務を終わらせるがいい。そして早く我を図書館に連れていけ』


 キレそう。


 私は執務をやめ、準備運動を行った。


『お、分かってくれたか』


 ダークロードは私を説得したと勘違いしている。これから貴様には罰を食らわせてやる。


 私は窓を開けてから、クラウチングスタートのポーズを取る。


『今から貴様を置いて全力疾走する』


『それだけはやめてくれ!!!!!! 生まれたての老人みたいになってしまう!!!!!』


 生まれたての老人とは如何に? 


『なんだ、そのパラドックスの極みのような単語は』


『と! に! か! く! 我から離れるのだけはやめてくれ!』


 必死に命乞いするかつての強敵。あの不気味さはどこに行ったのか、今は私なしでは生きられない寄生虫と成り果てた。


 私はため息をついた。


『分かった分かった、貴様から離れないから大人しくしててくれ』


 聞き分けのない子供を持った気分だ……。


『ふぅ、良かった。分かればいい、分かれば』


 こいつやっぱ今すぐ死刑にしてやろうか?


『で、いつ執務は終わるのだ?』


『そうだなぁ、建物の被害が大きいから、ここしばらくは終わらないだろうな』


『なんだと!? そんなに損害が酷いのか! そのせいでオベイロンは執務が終わらず、私はずっとこの部屋で暇を持て余す……誰だ! 建物を壊しまくったバカは!』


 ジーーーー。


『貴様だ』


『あ……』


 今さら気づいたという顔をしている。私はこいつをジト目で睨み続ける。


『いや、その……だな……ははは』


 ジーーーーー。


『あれは、我の衝動が爆発したというかだな……』


 ジーーーーーー。


『えっと、その……』


 ジーーーーーーー。


『……すみませんでした』


『謝って済む問題じゃない。早々に避難の誘導ができたから死者は出なかったものの、貴様は我が国へ多大な脅威を与え、資源を破壊し尽くしたのだ』


 全ての建物の完全修繕もまだまだ時間がかかる。そのせいで国民を市民館にすし詰めして住まわせている。そんな避難生活が国民に多大な不安を与えている。


 本来ならダークロードには、死刑すら生ぬるいほどの重い罰を与えなければならない。それだけのことをしたのだから。


 だから私が、ダークロードになるべく自由を与えないように監視し続ける。娯楽を与えない。自決もさせない。緊急時には我々の盾となってもらう。これらをダークロードへの罰とした。


 一見あまり重くない罰のようにみえるが、ほとんど自由を奪われている上に武器として利用される。奴隷のように人権などほとんどないも同然だ。かなり重い罰と言えるだろう。


 これほどの罰でも、全員が納得しているわけではないが、皆が納得できる結論など存在しない。とはいえ、ダークロードが罪を償う事には変わりない。私はこの悪魔から絶対に目を離さない。私が封印の札となるのだ。


『さて、と』


 執務を一段落終えた私は解放感を味わうがまま、腕を伸ばす。


『お、執務は終わったのか?』


『ああ』


『では図書館に――』


『行かないぞ』


『何でだ!』


『これから視察に行くんだ』


『先に図書館だろ!』


『しつこいな、いいから私に従え。それとも全力で貴様から離れてもいいんだぞ?』


『ぐっ……それだけはご勘弁を』


 小さい身体ながら土下座を決め込んだ。


『分かったならさっさと行くぞ』


 私はダークロードを肩に乗せずに、出発しようとする。


『ちょ、ちょっと待って! 我を置いてくな!』


 ダークロードは霧に変状し、私に纏わりついた。


 避難が迅速に行われていたおかげで、こいつの姿を見た国民は1割にも満たないが、それでも目撃者がいる以上は、ダークロードの事は伏せておくことにした。なので、外に出る時はこうして透明の霧になるように命じた。



 ――今日は雲が空を覆い尽くしている。まるで、いまいち傷が癒えないこの国の心情を表しているかのようだ。


 だが、もう雨は降らない。厄災はこの通り生き恥を晒しているからだ。もはや誰の敵にもならない。


『ん、何か聞こえるな?』


 修練場の方から金属と金属が激しく衝突するような音が聞こえる。訓練であれば特に珍しいことではないが、兵士たちも国民の食料配膳と建物の修繕を優先させているはず。


『サボりか?』


 だが、サボりならわざわざ訓練をする意味があるとは思えない。


 一体誰が何の為に?


 気になった私はそっと修練場を覗いた。

ここまで見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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