EPISODE③『精霊と妖精とダークロード⑪』
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《堕ちた精霊王視点》
なぜ私の家族を奪った?
なぜ私の家族が殺されなければならない?
なぜだ?
なぜだ?
なぜだ?
なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ縺ェ縺――
殺せ。
否、既に私の家族を殺した者は死んだ。
我の手によって。
殺すだけじゃダメだ。このクズという名の楽器で美しい音色を奏でようじゃないか。
刃物で肉を突き破る瞬間が気持ちいい。
激痛に苦しみ、泣き叫ぶ声が心地良い。
許しを請う姿が滑稽で気持ち悪くて、気持ちいい。
快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽快楽――。
奴の血で部屋を塗りたくった。殺した証を残したかったから。
あの時の快楽が欲しい。しかし復讐する相手は居ない。否居るではないか。我の国を脅かす我が同胞が。
奴らを破壊しよう。無惨に殺そう。楽しい解体ショーを披露しよう。
奴らの血は何色だろう? 身体中が黒いからシンプルに黒だろうか? それとも元々は人間らしいから赤だろうか?
ワクワクが止まらない。早く試したい、早く遊びたい。早くバラしたい。
さあ、楽しい楽しい復讐の始まりだ。
『ちょっと待った!』
誰だ?
聞いたことがある声だ。可憐でそれでいて勇敢さを含むような勇ましい女の声だ。
『あちゃー、やっぱこうなるよねー。私が見張ってて良かったー』
すると、声の主は姿を現した。
黒いショートヘヤ、宝石のような紫色の瞳、整った顔立ち、華奢でありながら豊満な身体を持つ、多くの女性が憧れるような美少女だ。
我は知っている。私も知っている。
自分の人生の中で最も長い時間を共に過ごした人物。閉鎖された時の中で試練を受けた時の試験官。
彼女は――
『闇の精霊の祖先様……?』
彼女が現れたせいか、私は少し正気を取り戻した。しかし闇の瘴気は私の首から下を全て侵食している。
『やっほー、オベイロン』
『どうしてここに?』
祖先様はあの空間にしか存在できないはず。だが、現に彼女はここにいる。水の精霊の祖先様とは異なり、確かな実体を持っている。
『オベイロンが心配だったからね。だから君の心の中に住まわせてもらったよ』
人の心の中に住む……? 闇の精霊の祖先様は何でもできるとは聞いていたが、こんな奇想天外なことまで……とんでもない御方だ。
『それで今私がここにいるのは、君の心の中から投影してるからなんだ。そうすれば一時的だけど、現世にいられる』
『投影ってどういうことですか?』
投影の意味自体は分かるが、それだけで彼女がここに現界してる原理が不明だ。
『投影は投影だよ? 普通に色んな力で私をここに現界させてるだけだよ』
聞いてもよく分からなかった。こういう無茶苦茶すぎる力のことを人はチートというらしい。
『よく分かりませんが、分かりました』
理解しようとすればするほど頭が痛くなりそうだったので、投影の話はここで終わらせてもらった。
次に彼女がここに来て何をするのかを聞いた。
『オベイロン君の暴走を止めるためだよ』
『暴走……先ほどそうなりかけました……』
今は彼女が来てくれたおかげで何とか意識を保ってはいるものの、侵食は相変わらず進んでいるので、またいつ暴走するか分からない。
『案の定そうなっちゃったね』
どこか悲しそうに笑う彼女。
『……はい』
闇の試練の時、私の中にある何かに彼女は気づいていた。その時点ではダークロードの存在は知らなかったので、“狂気的な何か”としか分からなかったが、近い内に暴走する可能性があることは危惧されていた。
『すごく辛いよね。でも呑まれちゃダメだよ。君は醜い怪物なんかじゃない』
『祖先様……』
国を守る為とはいえ、私までダークロードになってしまえば脅威がまた一つ増えるだけで何の意味もない。国王とあろうものが、誤った判断を下してしまうところだった。情けない。
『もっといい方法があるよ』
『いい方法?』
『今君が纏ってる闇を全部自分の力に変えればいい』
『それはどういう……?』
『試練の時を思い出して』
指示通り思い浮かべてみたのだが、記憶の海が広すぎて、どの時なのか分からない。
『すみません。その時の思い出がありすぎて、どれを思い出せばいいか分からないです……』
正直思い出したくないことばかりだ。闇の試練は、その名の通り自分の闇と向き合うものだ。自分の黒歴史やコンプレックスを容赦なく掘り起こされる。まさに悪夢と呼べるほどの凄惨な試練だった。
『全部だよ』
『全部?』
し、しぬ……やめてくれ……。
『言い方が悪くてごめんね。全部っていうのは、君が自分と向き合った努力そのものだよ』
『……』
思わず言葉を失った。あの時間は私にとって最も精神を刺激するようなものばかりだ。
死にたくなった。いなくなりたかった。自分がより嫌いになった。
でも、それでも、私は向き合った。己の弱さを克服するために。だが、その為の時間はあまりにも長かった。私には自分と向き合うほどの強さはなかった。だから一回試練に失敗した。諦めずにリベンジしたが、時間ギリギリのところで辛うじて及第点を貰っただけという中途半端な結果となった。
思い出すだけで、身体の震えが止まらない。ここまでやってこの程度なのかと、私は自分を大いに責めた。
『……あれ?』
気づいたら涙が流れていた。
『なぜ私は泣いている……?』
理由は分からないが、泣くのは後回しだ。今はダークロード討伐が優先だ。
私は涙を拭いた。
『いえ、何でもありません。それより今は国を守らないと』
本当は今すぐにでも泣き叫びたい思いだが、今はグッと堪えて、ダークロード討伐の準備を進めよう。
『教えて下さい。具体的に私はどうすればいいですか?』
『うん、まずは――』
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