EPISODE③『精霊と妖精とダークロード⑥』
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宇宙最強の拳が影の王に命中する。それは街や国どころか世界すら震撼させるほどの威力だ。どれほどの防御力を誇ろうとも、喰らえばただでは済まない。
『ム、無念……』
彼のダークロードも、彼女の力強い一撃によって霧散した。
『……』
ブリュンヒルデ・ワルキューレの完全なる勝利。だが本人は勝利に歓喜せず、ただその場に立ち尽くしていた。
『……』
《ブリュンヒルデ視点》
私は確かに影の本体らしき奴を倒した。これで私達の勝利のはずなのに、なぜだろう? 終わった気がしない。
それに――
私は拳を解いて、手のひらを眺める。
『あいつも手応えが薄かった……』
他の分身も手応えがまるでなかった。だからさっきの奴なら、と思っていたが、どうやら期待外れだったようだ。
『まさかだとは思うが、本体は別にいるのか?』
私はビルの屋上から街全体を眺めた。
『奴らは……』
遠くの方で古代の妖精共とモーガンが着実に影を仕留めている。
奴らは収監されていたはずだが、状況が状況。今は囚人の手も借りたいということか。情けないように聞こえるかもしれないが、この国の防衛力は悪くない。私達や古代の妖精、そして、あの影のようなイレギュラーが強すぎるだけだ。
『ふむ』
別のところを見渡すと、影の分身と戦っているオベイロンと橋本ルカ、ルカ・ヴァルキリーが目に入った。
『三人も無事だったか。まあそれぞれの実力を考えれば当然だろう』
なあ、オベイロン?
お前の実力はその程度か?
この短期間でとんでもなく強くなりやがって、それなのにあの体たらく……。
私は舌打ちをする。
『全く面倒だな……』
まあ仕方あるまい。私はもう精霊軍に降りた身だ。ならば味方の支援は積極的にやるべきだ。
私はそう思い、オベイロンの元へ向かった。というよりそのまま屋上から飛び降りた。
《オベイロン視点》
『苦戦してるようだな!』
戦闘中に声がすると思ったら、ブリュンヒルデが上から影を頭から足まで原型無くすくらい踏みつけた。影はそれから立ち上がることなく塵となって消えていった。
『ブリュンヒルデ!』
彼女を見たところ、特に怪我をしている様子はない。それどころか活き活きしてるように見える。
『怪我はないようだな』
『当たり前だ。この程度私の敵ではない』
さすが宇宙最強の戦士と呼ばれた女だ。彼女さえいればこの騒動は簡単に収まるだろう。
『ブリュンヒルデさえいればこの騒動は簡単に収まるだろう――なんて思ってないか?』
彼女はまるで私の思考を読んだかのように、そう言った。
確かにそうだ。私はいざとなればブリュンヒルデならどうにかしてくれるなんて思っていた。
『そうだな……正直ブリュンヒルデに頼ってたところはあった。すまない』
『頼ること自体は構わない。私は敗者だ、勝者であるお前に従うのは当然だ。今の私にはこの国を守る義務が発生している。だがさすがに私一人では全てを守るには手が余ってしまう。特にあの得体の知れない影の者に関してはな』
いや、ブリュンヒルデ一人でも大抵何とかなるのは事実なんだよな……。だけど彼女に頼り切りなのもダメだ。というかブリュンヒルデは本来囚人で、檻の中にいなければならないところを特別に囚人部隊として動かしているに過ぎない。
甘えていてはダメだ。これは国の問題。ならば我々全員が一丸となって立ち向かうべきなのだ。
なぜ、そんな当たり前の事を忘れていたのだろうか。やはり定期的に初心を思い出す必要がありそうだ。
『ああ、みんなで、みんなの力で平和を取り戻そう!』
私の言葉に、ブリュンヒルデは満足そうに頷いた。
『ブリュンヒルデさん、ありがとう』
ルカが笑顔で礼を言った。
『なぁに、私は進言しただけだ。それも囚人の分際でな』
そう言うと、ルカは彼女の立場を思い出したのか、少し悲しそうな顔をする。そんな彼女を横目に、ブリュンヒルデはオベイロンに話をする。
『ところでオベイロン、お前全然力を出し切ってないだろ?』
『それはどういう――』
刹那、邪悪な気配を感じた。
『これは!?』
――――――――――
空が黒き衣を纏い、大地は怯えるように震えている。
空気すら重苦しい。まるで毒を吸っているようだ。
あぁ、これは世界の終焉だ。影の王がこの世界を飲み込むつもりだ。
『なんだ、あれは……?』
闇色の空から巨大な腕が出現した。その腕がブリュンヒルデ達に降りかかる。
『!?』
あまりにも急だった。視界を全て覆い尽くすほどの手のひらが上から襲ってきた。それは突然目の前のビルが倒壊してきたような、空そのものが落ちてきたようなそんな絶望感を覚える。
オベイロンの防御手段ならば巨大な手のひらを弾き返すことができるが、とっさの行動ができなかった為、呪文を唱えきる前に潰されるだろう。
しかし、この中でブリュンヒルデだけは既に行動を開始していた。まずは橋本ルカとルカ・ヴァルキリーを巨大な手のひらに潰されないところまで投げ飛ばした。
二人が安全地帯に叩きつけられた頃には、巨大な手のひらが虫を潰すように地面を押し潰していた。
『オベイロンさん!』
『ブリュンヒルデさん!』
返事はない。数秒前に彼女達がいた場所は既に手のひらが潰してしまった。二人は無事だろうか? 防御が間に合わなかった場合の事など考えたくもない。それを確認するためにも、二人の少女は力を合わせて、巨大な腕を斬りつけた。
『そこをどいて!』
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