EPISODE③『精霊と妖精とダークロード⑤』
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《怨嗟の嗤笑》
闇。闇。闇。闇。闇。闇。闇。闇。闇。闇。闇――
人の影のような闇は無差別に精霊を殺す。人の姿をした精霊を殺す。精霊そのものになれる人を殺す。人を蹂躙した精霊を殺す。
精霊は人を殺した。許せない。復讐したい。壊したい。殺したい。何もかもを奪って、殺したい。殺して奪って喰って喰って貪って殺したい。
だから、人よ、人よ、黒き衣を纏いて、精霊を殺せ。
成すべき事を、我々は遂行しなくてはならない。
我が名はダークロード。影の世界の王であり、この精霊世界を滅ぼす者だ。
あぁ、聞こえるぞ。人々の怨念の声が。
まず手始めに精霊王国を滅ぼそう。オベイロン王を殺して、その首を民の精霊共に見せつけて絶望させたあと、一人ずつ殺していこう。
楽しみだな、悲しみに歪んだ顔が、無力を感じる顔が、我は大好物なのだ。
だが、強き者が我の進軍を阻害している。
確か、ブリュンヒルデ・ワルキューレといったか。宇宙からの侵略者であり、宇宙最強の女戦士だと。
この女はあとにしよう。さすがの我も殺すのに骨が折れそうだ。
あと我の邪魔をする者は、オベイロン、橋本ルカとその片割れ、古代の妖精であるサラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノーム、そして魔女であるモーガン。こやつらが我の敵ということだな。我に歯向かうとは余程の命知らずのようだ。まあどの道皆殺しにするつもりだがな。だがせっかく我に挑んできたのだ。全員無惨に殺してやろう。
ん?
新たに三人の人間がこの地に降りてきた? それも突然現れたように。まさか異世界からやってきたとでもいうのか?
しかもその人間共、全員かなりの強者と見受けられる。我が最も苦戦しているブリュンヒルデ・ワルキューレを超えるかもしれないほどの力だ。
もし、こやつらが我に挑むのなら――いや、立ち止まった? こちらの様子を伺っているのか?
一体何のつもりだか知らないが、どうやら現時点で我の邪魔はする気はないようだ。
ならばもういい。我に用があるのは精霊だ。正確には精霊の血が通ってる人共だ。純粋な人間に興味はない。
まあ一応、見張りを送っておこう。
まずは未だこの国に留まっている九人を殺すとするか、放った影はどうしているか――なんだと?
手始めに出撃させた影十体が全滅した。最も討伐数が多かったのはブリュンヒルデ・ワルキューレか。他の者はチームで撃退しているのに対して、この女はたった一人で五体を倒している。さすがは宇宙最強の戦士だ。桁違いの強さだ。
しかも他の戦士達も誰一人として死んでいない。想定ではもう九割は殺している予定だったが……。
なんということだ。どうやら我は奴らの力を見誤っていたようだ。
おぉ、賞賛しよう。誉れ高き戦士達よ。貴様らの強さに我は感服した。
だが、それでも我の勝利は揺るぎない。
先ほどの十体よりも強い二十体を作ればいいだけだ!
我は死滅しない限り、無限に影の兵士を作ることができる。どれほど強かろうと数で押してしまえばどうってことはないのだ。
さぁ、戦士共よ、最後まで誇り高く死ねぇ!!!
フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!
『――貴様、何を嗤っているのだ?』
『ナッ!?』
気づいたら、そこにブリュンヒルデ・ワルキューレがいた。我は見つからないようにこの国で一番高い建造物の上の隅にいたのだが、まさか見つかってしまうとは。
『貴様がダークロードか?』
『アア、如何ニモソウダガ』
『ほう、思ったよりも小さいのだな』
この女の言う通り、我の身長は50センチにも満たない。
『ソレデ貴様ハ我ヲドウスルツモリダ?』
『どうって、殺すに決まっているだろう?』
ブリュンヒルデ・ワルキューレは鋭い目つきで殺気を放つ。
『本当は貴様にもっとあの影の分身を出してもらって、サンドバッグのように殴り続けたかった。それだけ手応えのあるものだった』
恍惚とした表情で我の分身を評価する。
この女は何を言っているんだ? 我は最悪の終末兵器だぞ? その分身をサンドバッグ代わりにだと?
ブリュンヒルデ・ワルキューレ……恐ろしい女だ。きっと我はこの先幾分の時を過ごそうと、貴様を忘れることはないだろう。
『認メヨウ。貴様ハ強イ』
この世界の誰よりも。
『ダカラコソ、解セヌ。何故貴様ハアノ軟弱ナ精霊共ニ従ッテイルノダ?』
ブリュンヒルデ・ワルキューレ程の実力ならば、たとえ精霊全軍で対抗しても、こんな国などあっという間に滅びるはずだ。わざわざ精霊共の部下になる意味が分からない。まさか情けをかけたのか?
『敗北したからだ』
『ナンダト?』
まさかブリュンヒルデ・ワルキューレが敗北だと? ありえない。
『貴様程ノ実力ガアリナガラナゼ敗北シタ?』
『今はいないが、ある男によって私は倒された』
『アル男……?』
『ああ、ただの少年だったが、とてつもない力を秘めていてな、激戦の末、私は負けてしまったよ』
敗北した話を嬉々として語るブリュンヒルデ・ワルキューレ。
『敗因は分かってる。私はただ戦いたいが為に戦った。しかし奴はみんなを守る為に戦った』
『一体何ノ違イガアル? タカガ戦ウ動機ダロウ?』
『そうだな、たかが動機だ。私もそうだと思ってるし、理解できなかった。だが、今の私は違う。精霊軍に降った故の義務とはいえ、守るものができたのだ。ただ戦ってた時と、守る為に戦うのでは感情の入れ方が異なる』
『何ガ言イタイ?』
『つまり、今の私は昔の私よりも強いということだ』
刹那、ブリュンヒルデ・ワルキューレの拳が我の目の前まで迫っていた。
『速イ――』
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