EPISODE③『精霊と妖精と■■■■■■③』
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オベイロンと橋本ルカ、ルカ・ヴァルキリーの三人はブリュンヒルデとは別行動で、影を探していた。一人ではあの影のような者に勝てないので、必ず三人で離れずに行動している。
『オベイロンさん、あれ!』
顔のパーツがない影のような者が、刃物のような腕の先に血を垂らしながら、道の真ん中に立っている。
『一旦隠れるぞ』
『うん』
オベイロン達は一旦建物と建物の間に隠れた。相手はこちらには気づいていない。
『これからどうするんですか?』
ルカ・ヴァルキリーは不安そうに言った。
『不意を突こう』
『分かった』
二人は頷いた。
影のような者の足元には二人の精鋭部隊の戦闘員が倒れている。ただ他の住民の姿は一切見えない。どうやら優秀な幹部によって迅速に避難を済ませたようだ。
『二人とも、無理だけはしないでくれ』
二人は実力の至らなさに悔恨を覚えながらも、うんと頷く。
『行くぞ』
まずオベイロンが音を立てないように動き、二人も静かにその後に続いた。
しかし、運が悪いのか気配に敏感なのか、影の者がこちらに振り向き、完全に気づかれてしまった。
『しまった!』
襲い来る三人に向けて、ゴムのように手を伸ばした。それはつまり、刃物の刃先がこちらに向かってくるようなものだ。
『くっ……!』
オベイロンは咄嗟に剣を盾代わりに使った。後ろの二人も同様だが、記号のバツになるように剣を重ね、それを盾にしている。
『二人共大丈夫か!』
『大丈夫だよ!』
『大丈夫です』
うまく盾として機能しているものの、影の伸びた腕はなかなか引っ込まない。貫くまで諦めない気だろうか。
『くっ……!』
どうにか相手の腕を弾いて反撃したいところだが、如何せん力が強すぎて防ぐだけで精一杯だ。
『ホウ、キミタチハソノ辺ノ精霊ヨリハ強イヨウダネ』
影の者は殺意を残しつつ気さくにそう言った。
『さっきの人影と口調が違うな。貴様は何者だ?』
『私ハ“ダークロード”ノホンノ一部分ダ』
『ダークロード……?』
聞いたことない単語だ。世界の歴史の英雄や反英雄にはそれなりに詳しいつもりだが、ダークロードとやらに関しては、かすりともしない。
その一部分ということは、まだこの影のような奴が沢山いるということか。
もしも、ただでさえ強い影が大勢でこの国に押し寄せてきたら――
――お前はそれでいいのか?
『!?』
オベイロンの耳にだけ声が囁かれるように聞こえた。
(なんだ? どこから声が)
明らかに女性の声ではないことから、後ろのルカ二人ではないことは確定。なら目の前にいる影の者かと言われれば、声質が異なる。しかし、近くには他に誰もいない。
(気のせいか……?)
おそらく幻聴だろう、とスルーした。
さて、今も尚、状況は変わらない。刃物のような腕を剣で押さえているままだ。
(せっかく祖先様達から許可証を頂いたのだ。遠慮なく使っていこう!)
『炎の精霊よ、我が剣に力を与えたまえ!』
オベイロンの剣に炎が灯った。その剣に触れているということは、炎に触れているのと同義だ。しかし、影の腕は萎縮するどころか、ますますその腕に力が加わった。
『精霊ノ力カ。ダガ、コノ時代ノ精霊ナド私ニトッテハカス同然ダ!』
さっさとトドメを刺してやると言わんばかりに、さらに腕に力を入れる。
オベイロンもルカ二人も力では勝てず、どんどん押し出されている。
――もし、祖先様の試練を受けてなかったら、オベイロン達は敗北しただろう。だが、今は違う。
『炎の精霊よ、我が剣にさらなる力を与えたまえ!』
炎の勢いが増した。
『炎ノ勢イガ上ガッタ……?』
『これでどうだ!』
『確カニ驚イタガ、無駄ダ』
影の者は虫を振り払うように炎をかき消した。これにより、炎の剣はただの剣となった。
『なに!?』
『私ニ炎ナド効カナイ』
パワーが足りないのではなく、炎そのものが効かないようだ。
『炎は効かないか……ならば雷はどうだ!』
炎と同様に雷の精霊の力の重ね掛けを行い、強力な雷攻撃を影に与える。
『ア、アツイ……痛イ……』
雷攻撃はダメージが通るようだが、アツイもイタイという感想すら口にできないほどの強い威力を放ったつもりだ。つまり、思ったほど効いていないということだ。
『アア、痛カッタ……本当ニ痛カッタ……』
『そうか、じゃあもっとくれてやる』
オベイロンは3倍の雷を影にぶち込んだ。
『ウウ……ウウ……マダイケル……』
わりと効いてそうだ。
『じゃあ4倍』
『グオオ………………』
表情は見えないが、先ほどの余裕がなくなったように見える。
『なかなかしぶといな。4倍で気絶すらしないなんて、相当だぞ』
4倍であれば大抵の生物は焼き焦げるレベルだ。ブリュンヒルデは例外だが。
『…………………………ダシ』
影の者は何か言っている。
『何だ?』
『………………マダ余裕ダシ』
『は?』
『……全然耐エラレルシ』
影の者は何やら強がっているようだ。声にまるで覇気がなく消えてしまいそうだ。
『モットコイヨ』
指をクイッと曲げて挑発してきた。
『……本当にいいんだな?』
『ササットヤレ! コノ私ガ全部受ケ止メテ、全裸デコノ街ヲ一周シテヤルヨ』
『もう全裸だろ多分』
というか全裸で一周って普通できなかった場合の罰ゲームであって、やり遂げたあとにやるものじゃないだろ、と思ったオベイロンだった。
この後、お望み通り5倍以上の雷攻撃を喰らわせた。なんとか耐えたものの、6倍で完全に消滅した。緊張感も消滅した。
最後の最後まで己の信念を曲げなかった影の者に、敬意を表したのは内緒のはなし。
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