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第57話『涙のデート』

お待たせしました。

第57話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


※2022/08/20改稿しました。

 先程まで俺とブロンズちゃんは、魔王が盗賊団乗っ取り? をした件について話し合っていた。アミさんにも相談したかったけど、魔王を敵視してるであろう、バレスさんとみどりちゃんも一緒だったため、今回は2人だけで話し合うことにした。


 話の内容はどうやって魔王を見つけるかとか、そもそも盗賊団のアジトってどこだろうとか、そんな感じの会話だ。いかんせん情報が少なすぎて話が進まない……。だからといって魔王に関する情報を住民から聞いてみよう……という訳にもいかない。


 俺も時々忘れてしまってるが、俺達は世間から見たら、魔王軍という世界最悪の()()()()()だ。俺とあおいちゃん以外は、顔は割れていないとはいえ素性がバレるリスクは高い。


 だからといって、情報を入手しないことには何も始まらない。なんせこの火の国は、俺が住んでいた東京並みに広い。隅から隅までアジトを探すなんて現実的ではない。


 なので住民達の()のみを頼りに動くしかない。それこそ現実的じゃないだろと思うかもしれないが、この国の住民達は、()()()()()()。何か変わったものを見たら、すぐさま誰かに吹聴したがる。そこは日本人と何も変わらんのだな。


 まあ、それが人間なんだよな……。


 今、俺とブロンズちゃんは何をしているかと言うと、住民達の噂を盗み見聞きする為に、2人で買い物を楽しんでるフリをしている。


『ねえ、お兄ちゃん、この服どう?』


 楽しんでるフリ……のはずだが、ブロンズちゃんは本当に楽しそうにショッピングモールの洋服店にて服を漁っている。まるで、デートしてるみたいだ。


『似合ってるよ』


『ありがと♪』


 それにしてもブロンズちゃんは何を着ても似合うなぁ。周りに居た住人達もブロンズちゃんの美貌に目を奪われている。


 そんな美少女と一緒にデートしてる俺は当然超妬まれている。今も周りの男達にその代われなど死ね等散々言われている。


『殺気が強すぎなんですけど……』


 周りの男達の鋭い殺気に、俺は汗が止まらない。


『アノオトココロス……』


 とうとう、コロスと口に出す人まで現れた。嫉妬するのは分かるけど、だからってコロスとか簡単に言うなよ……。


 1人が俺の悪口を言うと、他の人達も次々と俺の悪口を言い始めた……。


『あいつ許せねえな……』


『何であの超可愛い女の子が、あんな貧弱そうな奴とデートしてんだよ……』


『消えろカス』


『いらないだろあいつ』


 あぁ……()()()……集団で1人を責めるこの空気……学校行ってた時を思い出す……あの時と同じだ。



 居心地が悪い……吐きそうだ……。



 悪口を言われたからか、脳内でこんな言葉が聞こえる。


 お前なんていらない。お前に価値はない。お前なんていなくなればいいのに。


 これ等は全て、俺がいじめられていた頃にクラス中から刺さった()()()()だ。


 ふざけるな……なぜ、お前らみたいなゴミ野郎に、俺の価値なんて決められなきゃいけない……俺が()()()()()()()()()


 あぁ……やっぱり、俺のような()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。


 ヤバい俺の精神が不安定だ。そのせいで身体から、闇のオーラを放出しかけていた。


『お兄ちゃん、どうしたの?』


 気づいたらブロンズちゃんは心配そうに俺を見ていた。


『え?』


 俺はハッと我に返った。もう少しでどうにかなってしまいそうなところで、ブロンズちゃんが話しかけてくれたおかげだ。


『な、何でもないよ……』


『嘘つかないで! 心を読まなくたって分かるわよ!』


 ブロンズちゃんは、俺を心配してか涙目になりながら怒っている。そんな様子を見た周りの人達は、驚いてるような困惑している表情になっていた。


『だって……お兄ちゃん……泣いてるじゃない……!』


『えっ……あれ?』


 俺はそっと(まぶた)の下に、軽く触れてみると手に涙がついていた。ここで初めて俺は俺が泣いている事に気づいた。


『何で、俺……泣いてるんだ?』


 そんな俺を見兼ねたブロンズちゃんは、周りの人達を次々と睨み付けた。すると、周りの人達は逃げるようにその場を去っていった。


『お兄ちゃん……あっち行こ』


 ブロンズちゃんは、俺の服の袖を引っ張り、誰にも見られない場所へと移動した。


『ここなら、個室だし誰も見てないわ』


 ブロンズちゃんに、連れてきてもらった場所とはなんと()()()()()()()()だった。


 似てるという表現では足りないくらい忠実に再現している。本当に現代の日本に帰ってきたと錯覚してしまう。


 俺はぼっちだし、ひとカラなんて行かないから、カラオケはほぼ行ったことがない。ただ、アニメや漫画で見たことはあるのである程度の知識はある。


 しかし、テレビ画面の中で宣伝をしてるアーティストや曲は全く知らないものばかりだ。世界線が違うから当然か。


『ふーん、お兄ちゃんの世界にも、()()()があるの?』


『歌い場?』


『お兄ちゃんの世界でいう、カラオケ? の事よ』


『あ、あぁ……あるよ……まあ、俺は行ったことなんてないけど……』


『そう……』


 いつもなら、ブロンズちゃんから、ぼっちだの可哀想だの容赦のない罵倒が始まるのだが、今回に限っては何も言ってこない。


 さすがに俺がガチで精神が不安定な時は大人しくなるようだ。それどころかブロンズちゃんまで悲しそうな顔をしている。


『そりゃそうよ……だって、私……悲しいのよ……お兄ちゃんが傷つくのは……』


『ブロンズちゃん、いつも俺を罵倒してくるじゃん』


『何言ってるの?』


 ブロンズちゃんは俺の目の前に立ち、両手で壁ドンをしてきた。なんか前にも魔王城で壁ドンされたような……。


『お兄ちゃんの悪口を言っていいのは私だけだから』


『え……?』


『もし、他の人がお兄ちゃんを悪く言ったら、私はその人を一生許さない』


 ブロンズちゃんは真剣な眼差しでそう言った。心なしかブロンズちゃんがイケメンに見える。


『ブロンズちゃん……』


『もう、イケメンって何よ……たまには、私をお姫様にして、私を助けてよ』


 そんな彼女は儚い顔で笑った。


 ――あぁ、ブロンズちゃん、君はどんな顔でも美しい。


 俺にはもったいないくらい……でもそんな君を俺は――。


『お兄ちゃん?』


『いや、何でもない。ごめんね、落ち込んじゃって。俺はもう大丈夫だから買い物の続きしない?』


『ええ、デート再開しましょ♪』


 俺とブロンズちゃんの、ミッション……という名のデートは、今、再開した。


第57話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、6月1日~3日の間に、投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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