EPISODE③『精霊と妖精と■■■■■■②』
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《ブリュンヒルデ視点》
私は今、オベイロンの屋敷内でこの謎の人型の影と激戦を繰り広げている。緊急事態の最中で不謹慎なことを言うが、正直強者と拳を交えるなんて心が躍ってしまう。
私を倒したあの男、ダストも強かったが、この影はこれまで戦った中で一番かもしれない。
顔のパーツもなく不気味感であふれている。それでいて存在感が薄い。もしかして必要最低限の質量だけで動いているのか?
さすがは未知の生物だ。器用なんてレベルではない。
『強イ、強イ』
この影は戦いながらずっと私を賞賛し続けている。賞賛を浴びる事自体は嬉しい限りだが、必要以上に連呼されると、少し萎えてしまう。
『もう褒めなくていい。戦いに集中しろ』
『強イ、強イ』
聞く耳持たず、か。文字通り耳があるように見えないので本当に聞こえていないのかもしれない。
まあいい。鬱陶しいのなら、その口を塞げばいいだけの話だ! ……口もどこにあるか分からないが。
『強イ、ダカラ殺シガイガアル』
影は、刃物のような腕を振り上げて私に向けて突き出してきた。
私は難なく回避し、拳を奴の脇腹に刺して、軽く吹っ飛ばした。
『グヌヌヌヌ』
相手がひるんでいる間にも私は連続で拳を突き出した。
確かに攻撃は当たっているし、もうすぐで倒せる勢いだ。しかし、何だこの手応えのなさは? 薄い板だってもう少し感覚はあるのに、まるで煙を殴っているような気分だ。
非常に気になる案件だが、考えても結論は出ない。なら、今はこいつを倒すことを優先するべきだ。
『とどめだ』
私は大きく振りかぶった拳を影に向けて放った。
『グオオオオオオオオ!!!!!』
悲痛な叫びを披露したあとは、立ち上がることなく、灰のように風化していった。
『勝った……のか?』
しかし相手は未知の生物だ。灰になっても復活する可能性は捨てきれない。勝利を確信するには、確実に仕留めたという証拠が必要だ。
『ブリュンヒルデ! 本当に、倒したのか?』
オベイロンは勝利の瞬間をその目に収めたというのに、まだ勝利を確信しきれていないようだ。その直感は正しい。私自身もあの手応えのなさには違和感があった。
ああいう実体だからなのか、それとも――
『分からんな。倒したように見せかけただけかもしれない。まだ警戒を解くには早いだろうな』
『そうか、ご苦労だった。何かあったらまた連絡する。それまで待機しててくれ』
『ああ、そうさせてもらおう』
しかし――
『ん、なんか外が騒がしくないか?』
叫び声のようなものが遠くから聞こえてくる。
まさかと思い、窓の外をよく見渡してみると――
『あれは……』
街の中で一つの人型の影が歩いていた。私が先ほど倒した奴と瓜二つだ。その奴が通った道には、何人もの精霊が血を流して倒れている。
『さっきの黒い人影か!? 何故だ? ついさっきブリュンヒルデが倒したはずでは……?』
オベイロンの言う通りだ。やはり灰となっただけで死んだわけではなかったのか。
『それよりも今すぐあいつを止めるぞ』
私は一足先に窓から飛び降り、影と対峙する。
『ほう、やはり復活したか』
『貴様ハ誰ダ』
『もう忘れたのか? さっき私と戦っただろう?』
影は一旦沈黙した後、肩を竦めた。
『私ハ貴様ノヨウナ奴ハ知ラナイ』
知らないだと? では先ほど私と戦ったあの影とはまた別の存在か?
こいつが嘘をついている可能性もあるが、よくよく観察すれば態度や姿勢、そして喋り方もどこか異なっているように見える。そう考えると、こいつが別人なのは本当なのかもしれない。
ということは、他にもこいつと似たような存在がまだいる可能性が高い。
精鋭部隊の一員だったあのアレーシアや橋本ルカやルカ・ヴァルキリーでさえ、あの影を倒せなかった。そんな奴が複数いる。
現状で影を倒せるのは、私とオベイロンだけか。
私はニヤッと笑った。
『何ヲ笑ッテイルンダ?』
『いや、滾ってきただけだ』
『ヨク分カラナイ奴ダ』
影は腕を剣のように尖らせる。さっきの影と同じ手法で戦うみたいだ。
『ブリュンヒルデ!』
オベイロンとルカ二人組が駆けつけてきた。
『オベイロン! この影はさっきの奴とは別人だ! 他にも影がいるかもしれない!』
『なんだと?』
『これだけ言えば分かるな?』
『ああ、もちろんだ。私達は他の影を探してくる。ブリュンヒルデ、そいつは頼んだぞ』
オベイロンはそう言い残して、ルカ達と共にこの場を後にした。
『さて、待たせたな』
『コレカラドウスルツモリダ? マサカ私ト戦ウツモリカ?』
『そのまさかだ』
『ソウカ、ナラバ覚悟シロ』
影は瞬時に私の背後に回り込んで背中を刺そうとしているつもりだ。どうせ自分の速度についていけないと思っての行動だろう。
残念ながら私の目で追えるレベルだ。だから私は逆にその影の目の前に立ち――
『ナッ……!?』
瞬時に拳を影の鳩尾にめり込ませた。
『グッ……!!?』
影は三メートルほど吹っ飛び、地面に叩きつけられた。
確かな一撃。しかし、やはり手応えは薄い。
『貴様……何者ダ……?』
『私は元宇宙最強の戦士ブリュンヒルデだ』
だが私はいつか宇宙最強の座を奪い返しに行く。待っていろダスト。私が貴様と再び相まみえるその時を楽しみにしているぞ。
それまでは私も死ぬわけにはいかない。こんな中途半端な存在に負けるわけにはいかない。
誰が来ようとも、私が全て蹴散らしてみせよう。
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皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
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