EPISODE3『精霊と妖精㉝』
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《戦士となった少年の想い》
俺は最強だ。元々戦闘の才能があると大人達から言われてすぐ戦士となった。
俺に勝てる奴なんていなかった。精鋭部隊だったシルフやサラマンダー、これまで最強と言われていたウンディーネにさえ俺は勝った。ウンディーネに関しては、俺も初めて負けるかもしれない、なんて思ったくらいの激戦だった。
戦士は誇りだ。国のために戦うことそのものが、人生における最高の勲章ものだ。周りの大人達はそう言ってた。
でも、そう思わない人もいた。
戦士は人殺しだ。
守るなんて綺麗事、実際はただの人殺し。
なぜ命を躊躇なく奪えるんだ。
化物だ。
隣国の後は俺達が殺される。
ノームは危険だ。
戦争で使った後は――殺してしまおう。
あぁ、うるさいな。安全な所で味方に石を投げることしかできない無能共が。お前らが俺を求めたんじゃないのか?
俺はお前らの道具じゃねえ。
俺は戦士として最後まで戦ったんだ。俺が人殺しなのは確かにそうだけど、俺はみんなの為に戦ったんだ。
なのに、何で誰も賞賛してくれないんだ?
何でみんな、俺をそんな目で見るんだ?
やめてくれよ、俺をそんな化物を見たような目で見ないでくれよ。
それでも、やっぱりみんなの為に戦いたい。どんなに蔑まれても、俺はみんなが笑顔でいてくれる事が何よりの喜びだ。俺はそういう妖精らしい。
それをモーガンに言ったら、『そんな気持ちでいると、大人にまんまと利用されるよ』と返してきた。
確かにその通りだ。まだ子供である俺でも分かる。大人は子供よりも大きく長く生きているだけで、その中身はわがままで幼稚さが残っている。もちろん全員がってわけじゃないけど、世の中にはそういう大人もいるってことだ。
でも、良いんだ。別に俺を利用してくれても。ただみんなが笑顔で俺を英雄だと讃えてくれたら、それで良かったんだ。
だけど、やっぱり寂しいな。評価されないのは。
あんなに頑張ったのに。戦士としてこれ以上ない成果を上げてきたのに。敵がいなくなると、今度は俺が怪物のような目で見られるし、本当に何なんだ? 常に誰かと争わないと気が済まないのか?
みんな笑顔じゃない。敵を倒せば笑顔になってくれるんじゃないの?
もうよく分からない。分からないよ。
ある日、俺は暗殺された。死因は朝食のスープに混入してた毒物を飲んでしまったからだ。
こうして怪物は勇敢な妖精により討伐されたのであった。めでたしめでたし。俺が死んだ後の事は分からないけど、みんな、きっとこんな感じで収めたんじゃないか?
まあどの道、妖精ノームの人生はこれまでだ。次は生まれ変わって違う存在になるんだろうか。
神様どうか今度は普通の妖精で生まれますように。
しかし、その願いは叶うことはなかった。
暗闇で誰かに呼びかけられた。俺に色々教えてくれたあの妖精の声に似ていた。
俺はその呼びかけに応じると、気がついたら俺は全く知らない場所で意識を取り戻した。
『ここはどこだ?』と言うと、見たことあるお姉さんが、『ここは私のアジトだよ』と優しい声で返事をした。
『モーガン?』
大人に利用されていた俺を心配してくれたお姉さんだった。何やら変わった格好をしていたけど、それよりも聞きたい事がいっぱいある。
『俺って確か死んだはずだよな? 何で生きてるんだ?』
そう質問すると、モーガンは全てを話してくれた。
『なるほど……ここに来てから妙な気配がすると思ったら、そういうことか』
『うん、急いであの怪物を倒さないと、世界が崩壊する』
『その怪物を倒すために、死者である俺に蘇生の妖精の力を使ったと』
蘇生の妖精とは、その名の通り、死者を蘇生することができる妖精だ。だけど大昔の妖精なので、俺が生きてた時代でも生きてなくて、その血を受け継いだ者だけが使うことができる。
『蘇生の妖精なんて都市伝説だと思ってたけど、モーガンがそうだったんだね』
『私はそんな大層なものじゃないよ。たまたまその血が流れていただけさ』
『でもモーガンはすごいよ』
そう褒めると、モーガンは何やら暗い顔をしていた。なぜそんな顔をするのか、この時の俺には分からなかった。
『とにかく、私はそんな大した存在じゃないよ。それよりも、私はこれからサラマンダーやシルフも蘇生させようと思う』
『サラマンダーとシルフも?』
『怪物を倒す前にこれから大規模な戦いが始まる。もちろんノームの実力を疑ってるわけじゃないけど、戦力は多い方がいいからさ』
『なるほど、だったらウンディーネも蘇生させようよ。ウンディーネは俺と同じくらい強かったし』
『ウンディーネはダメだ』
『どうして?』
『私も最初はウンディーネを蘇生させようとしたけど、どうやら彼女、治癒の妖精の力で自分を保存させていたみたいなんだ』
『どういうこと?』
『つまり、死んでいるようで死んでない状態で、蘇ろうと思えば蘇るってこと』
『なんだそりゃ』
マジでよく分からない。
『とにかくウンディーネを呼ぶことはできないってこと。彼女がここに来るには、自分の意志で来てもらうしかないの』
『そっか、残念だな』
また戦ってみたかったな。
『来ない戦力を数えてもしょうがない。だから私とノーム、サラマンダーとシルフの4人と、最近出会った精鋭3匹、合計で7人であの怪物を倒すための組織を作るよ!』
『分かった! 俺も全力でモーガンに協力するよ!』
『ありがとうノーム』
『へへっ!』
求められるのが嬉しかった。あの怪物を倒すことは結果的に世界を救うこと、時代は違うけど、みんなの笑顔を守ることに繋がるんだ。
その為なら、僕は――
――――――――――
《現在》
あとに続くはずだったモーガンはまだ来ない。何をしてるのか分からないけど、俺は俺のやれることをやるつもりだ。
鳥のおじさんと、変なおばさん。訳の分からないこの二人を倒して、俺は正義のヒーローになるんだ。
その為なら、俺はどんな犠牲を払っても構わない。
正義を脅かす悪を殺す。俺の正義を邪魔する奴は残念だけど容赦なく殺す。
俺は昔から、そうやって敵を駆逐していった。強い弱いは関係ない。敵である以上は殺す。
俺は刃だ。今はモーガンの鋭い刃だ。邪魔する者は誰だろうと排除してやる。
『かかってきなよ時代遅れの排泄物共。せめて俺が楽に葬してあげるからさ』
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